好機
第30話
戦争開始152分51秒後〜153分23秒後
ウラニス6のトップ、ゼッタ・ユノモス
ヒュラがウラニス6のトップに剣を交えて遠方から飛んできて切り掛かるが、ゼッタは軽くフィールドで封じ込めるようにして、大爆発を交えてヒュラを弾き飛ばした。
直ちにフィールドを固めるようにして防御したヒュラは、ネラ達に驚かれながら、5秒後には立て直して再攻撃を仕掛けに行った。
ユノモスはS級隊員と左側半分だけで交戦し、A級隊員3人からの攻撃を受けて防御に回る。
ネラ達も加勢して、ハドラリアー軍にとどめを刺そうという流れになった。
その時、ヒュラ達とウラニス6の戦力の中心であるユノモスの間には攻撃を通すのに最適な地形的配置が生まれ、ネラ達全員がヒルの予知も頼りながらの総攻撃とトラップを仕掛けた。
当然遥か格上のユノモスにそれ自体が通る事はないが、S級とA級で挟み込んで意識を削がれているユノモス達ハドラリアーには無視できない有効打ではあった。
そして、足止めを果たしていたメレピーを中心とする兵が、今度は逆に全面的に足止めを喰らう。
ウラニス7のバリリオンズが大反撃を決めて形成逆転する、最大の好機であった。
戦争開始から152分25秒後まで
ヒルが、ヒュラの攻撃がユノモスに致命傷を与える未来を見たが、通常の超予測の感覚とはどことなく違っていた。
ユノモスはS級の剣を左腕で受けてS級の体を縦に真っ二つに切り裂いた。
ヒルは、予知を超越する純粋なる生存本能に基づく直感により、得体の知れない恐怖と諦めと無力感に似た、しかしそのどれとも違う感情を伴う、内なる感覚を覚えた。
ヒルは、バリリオンズの完全なる敗退を確信してしまった。
そして、ユノモスに直接攻撃を仕掛けたヒュラは、S級とA級2名が喰らった、空間を捻るような斬撃の巻き添いを受ける。
S級とA級が防御し、なおも攻撃するのを、ピネトラが蹴り飛ばして殴りかかる。
ヒュラがピネトラに重力場で空間の捩れを打ち消すように殴りかかる。
ピネトラはA級隊員にとどめを刺し終え、辺りを見渡して、ピネトラの右肩を連打し猛攻していたヒュラを、飛んで来た小砂利をはたくように左手で払いのけた。
ヒュラは身体中を捻り潰されたように大量のニューオンを流出して、1kmほど離れた地面に深くめり込んだ。
ピネトラは、
ネラとA級隊員達の総攻撃を左手で受けて防御しながら、同時に攻撃を送り込み、
後方から援護攻撃を仕掛けるはずだったクラルの、プラズマ遠距離斬撃を放つ剣と、ケラの最大出力の蹴りを、右手で受けて、捻り潰すようにして2人を戦闘不能にさせた。
その後、ピネトラはヒルを見つけてヒルの重要性を勘で察し、遠距離空間斬撃を放った。
ヒルは離脱した。
その隙に、ヒュラとネラが最後の攻撃をピネトラに送るが、ピネトラは軽々と防御し、ネラを仕留めようと狙う。
ユノモスが、ネラの方へ来て、そこにいた多くの隊員もろとも巨大爆発攻撃により、散り散りにした。近くにいたC級、B級隊員の残党はほぼ全滅した。
ヒュラは、地面にめり込んで動けずに身体中からニューオンを流出して、どうしようもないままに、ただひたすらネラが目の前で散り散りに消滅するのを目の当たりにした。
ピネトラ ぼそっと
「へぇ、あの子、重系じゃなかったんだ。
いや重系じゃ戦闘できないか」
ネラの特大電撃は散り散りに消滅した。
ピネトラがネラを倒しに行こうとすると、ユノモスが指から弾を放ち高速でネラを貫き大爆発した。
ネラは、ヒュラの目の前で散り散りになって消滅した。近くにいたC級隊員も、ほとんどが消滅した。
ピネトラが、ヒュラのすぐそばまでやってきて質問した。
ピネトラ
「ねぇ、君の適合系統は?」
ヒュラはピネトラを倒そうとあらゆる技を使おうとした。
だが、一切のフィールドが展開できず、ステートが発動できなかった。
そして、悲しみなど、その他一切の感情が湧き起こる間すら与えずに、ピネトラがヒュラの目の前にやってきて、ヒュラの地面をクレーターに一変させて、ヒュラの首を掴んだ。
ピネトラ
「ねぇ、君の適合系統は?」
ステレオツールでドメインを起動しようとするが、無駄だった。
ヒュラ
(ニューオン切れか?)
ピネトラ
「君、特異体質?全能力者みたいだね。
普段重系なのかな?珍しい」
そう言いながら、ヒュラの首を掴む右手を引き寄せた。
不思議そうに、まるでプレゼントボックスを開けようとしているかのように、左手で、ヒュラの頭に触れようとした。
ヒュラは、生まれて初めて感じるほどの強烈な恐怖を覚えた。完全に思考停止し、体が硬直した。
ピネトラは、おもちゃを見るような目でヒュラを見つめる。
純粋な暴力への渇望をその目の奥に宿している事が、捕えられた獲物としての本能にひしひしと伝わる。
そして、その悪意と殺意は、対象を持たずして、完全に彼女の中で飼い慣らされているようにすら見えた。
さらに、獰猛さを超越する無垢な好奇心と遊戯心が、彼女の特異さを際立たせているようにヒュラには感じられてならなかった。




