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京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第60話 おっさん陰陽師、もう攻撃を仕掛ける

「……むっ、またスーの方へ撃ってくるぞ」


『了解だよ!』


 形代をベヒーモスの周囲へ飛ばし、視界を確保しつつ式神に指示を出す。ベヒーモスが黒き波動を撃つ際は予備動作があることはすぐに把握した。


 さすがに周囲を飛び回る形代が遠方よりその動きを見ているとはこの魔物も思わないであろう。我自身が霊符で戦うことも可能であるが、こうして式神を援護するのも陰陽師の戦い方である。


「よし、ヤコウ殿、残りの魔物はすべて片付けたぞ!」


「うむ、承知した」


 セイとスーが時間を稼ぎつつ攻撃を与えているうちに周囲の魔物を一掃できたようだ。これで全員があのベヒーモスに集中できる。


 他のベヒーモスと戦う者もすでに用意はできているようで、我らも前へ出てセイとスーと戦っているベヒーモスを全員で取り囲む。これで準備は整った。


「またせたな、セイ! ゆくぞ、万緑葬送(ばんりょくそうそう)!」


『待ちくたびれたぜ! くらえや!』


「グルウウ!?」


 セイが術を発するとベヒーモスの足元より、巨大な樹木がいくつも生え、その巨体に絡みつく。


「しょ、植物を操る術だと!?」


 サーロン殿が驚いているが、これは単なる樹ではない。木の要素は成長や生命を司る。この樹は捕らえた者の生命力を奪い取る術だ。


 ベヒーモスはその巨体を動かして抜け出そうするが、全身に絡みつく樹がそれを妨げる。だが、口元から放つ黒き波動で少しずつ万緑葬送による拘束を外していく。


「い、今だ、総攻撃!」


「このチャンスを逃すな! 総員、叩き込め!」


 サーロン殿と騎士団の者が号令を飛ばす。


 セイの術に驚いた者たちが意識を戻し、魔法の詠唱を始める。


「天空の息吹よ、嵐の調べを奏でよ。大気の枷を解き放ち、極大なる怒りを解き放て! エアリアル・テンペスト!」


「スー、煉獄紅蓮炎(れんごくぐれんえん)!」


『いっくよお!』


 エルネの風魔法によりベヒーモスの上空に竜巻が吹き荒れる。そしてその竜巻にスーの煉獄紅蓮炎が巻き付くように絡み合う。


 他の魔法使いの放った火と風の魔法もそれに加わり、セイの万緑葬送による樹が一気に燃え上がった。


 陰陽術において、木の要素である樹木や風はスーの火の要素を増幅する相生(そうせい)の関係にあるため、それを利用しているがうまくいったようだ。万緑葬送や魔法の力によって、極炎演舞よりも高温を誇るスーの煉獄紅蓮炎の威力がさらにあがった。


「グルオオオオ!」


「ゲン、蒼水方陣(そうすいほうじん)!」


『任せて!』


 巨大な炎の竜巻がベヒーモスを襲い、全身を燃やし尽くす。しかし、ベヒーモスもただでは終わらず、最後の抵抗に黒き波動を手当たり次第に撃ち始めた。そのうちのひとつがこちらに飛んできたが、ゲンの水壁によりそれを防いだ。


 念のため霊符による結界も張り、他の魔法使いによる防壁も張られたが、ベヒーモスの最後の攻撃はゲンの水壁によってすべて阻まれた。


「グルウ……」


 未だに燃え続け、焦げたベヒーモスの身体が崩れ落ちる。どうやらこれまでのようだな。


「……スー、炎を解いてくれ」


『うん!』


 ベヒーモスが倒れてから少し待ち、完全に息絶えたことを確認してからスーの術を解く。


 完全に黒く焦げたベヒーモスの身体はその頭から生えた強固な角以外は元の原型を留めておらず、倒れたままピクリとも動かない。


「やったぞ! 我らの勝利だ!」


「「「おおおおおお!」」」


 サーロン殿が勝鬨を上げ、それに皆の者が続いた。


 どうやら無事に終わったようだ。


「ぬおおお! すごいぞ、ヤコウ! あれだけの魔物と、このベヒーモスを相手にして死者がひとりもいないとはまさに奇跡じゃ!」


「おじちゃん、やったね! 本当にすごいよ!」


「うむ、エルネとレイラもすばらしかったぞ」


 エルネとレイラが我へと抱き着いてきたので、2人の頭を撫でてやる。エルネの方は年上であるのだが、容姿が童なのでつい童扱いしてしまったな。少ししてエルネも気付いたのか、慌てて我から離れた。


 エルネのあの魔法も実に見事であったし、レイラも初陣であるにもかかわらず何体もの魔物を倒していた。


「ヤコウの旦那、あの召喚獣は本当にすごかったぜ!」


「ええ! ぜひ詳しいお話を聞かせてください!」


「う、うむ……」


 周囲の冒険者の者からも囲まれてしまった。なんとも気恥ずかしい。


「ヤコウ殿、エルネ殿、実にお見事でした! ひとりの死者も出さずに魔物の群れと第二級相当のベヒーモスを倒せたのはおふたりのおかげです。本当にありがとうございました!」


「うむ。だが、この戦いに勝てたのは我らだけの力ではない。みなの力があったからこそ、ひとりの死者も出さずに勝利できたのである。みなも存分に誇ってよいと思うぞ」


「「「おおおおおお!」」」


 我の言葉に皆がさらに声を上げた。


 自分たちの手で強敵を打ち破り、自らの手で街を守れたことが嬉しいのだろう。騎士団の方でも大きな歓声が上がっている。なにはともあれ、誰も死なずにすんで本当によかった。


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