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京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第58話 おっさん陰陽師、群れの長を確認する

「……むっ、狼煙が上がっているぞ! 偵察部隊の方でなにかあったか!」


 順調に魔物の群れの数が減っていき、ようやく終わりが見えてきたというところでサーロン殿の声があがる。


 見上げてみると、魔物の群れのさらに奥の方から2筋の煙が立ち昇っていた。


「緑色……ということは、やはりなにか特別な魔物がおるようじゃな」


「それがこの群れの長というわけであるな」


 偵察部隊の上げる狼煙には色によってそれぞれの意味が込められているらしい。京の都では色の付いた狼煙などを上げることはできなかったので、随分と便利である。


 緑色の意味は特別な魔物を目視したという合図だ。どうやらこの魔物の群れとやらは規模が大きくなるにつれて、その群れの中心となる一番強い魔物がその群れの舵を取るようになるらしい。今回のような大きな群れにはそういった長となる魔物が存在する可能性は高いと聞いていたが、事前の偵察では確認できなかったようだ。


「エルネ、レイラ。しばし、ここを頼むぞ」


「うむ、任せるのじゃ」


「うん、頑張る!」


 形代を複数飛ばして、しばらく意識をそちらに集中する。その間この場はエルネとレイラに任せておく。


 魔物の群れの上空を通りすぎ、セイとスーの攻撃に当たらぬように回り込んで魔物の群れの最奥まで形代を操作する。


「……ふむ、一体だけかなり大きな魔物がいる。我も初めて見る姿だ。身体はセイよりも大きく、顔は獅子のようでもあり、イヌのようでもあって頭の両側から黒き角が生えている。筋肉質な体躯をしており、紫色の体毛で覆われているぞ」


「黒い角に紫色……まさかベヒーモスか! 第二級相当の魔物じゃぞ!」


 ベヒーモスとやらはわからぬが、第二級相当となるとあのワイバーン以上の魔物ということになる。


 この世ではあまり関係ないのかもしれぬが、高貴な紫色に包まれた魔物とは珍しい。少なくとも我は初めて見るな。


「そのベヒーモスとやらはどのような魔物なのだ?」


「強靭な肉体を持った四足歩行の獣じゃ。それほど速さはないが、その強固な毛皮は矢などを通さぬ。魔物であるが魔法を操り、尻尾には猛毒を持った棘がある。なるほど、ベヒーモスがこの群れの主であるのならば、これほど多くの魔物が集まったことも納得できるのじゃ」


「ほう、強靭な肉体と尾に毒、そして魔法か。さすがに第二級相当となると手強そうな相手だ。一度セイとスーを呼び戻すか」


 魔法を使えるとなれば空を飛ぶセイとスーへの攻撃手段を持っているかもしれぬ。特にセイがベヒーモスを見つければ、迷わず突撃してしまいそうだ。


 周囲の魔物の群れはあらかた倒したことだし、一度戻してエルネとサーロン殿から詳しい話を聞くとしよう。




『ちっ、全然手応えがねえな。まあ、久しぶりに暴れられて楽しかったぜ』


『ご主人、おいらも頑張ったよ~!』


「セイもスーもよくやってくれたな」


 顕現させた式神とはある程度離れていても意思疎通が可能である。一度セイとスーをこちらへ呼び戻し、我らも壁の下へと降りて、サーロン殿と合流し、ベヒーモスのことを報告した。


「それにしてもベヒーモスか……。そんな面倒な魔物がこんな場所にまで現れるとは……」


「ベヒーモスの体毛は魔法を通しにくいのじゃ。少し面倒な相手じゃな……」


 サーロン殿が言うにはベヒーモスとやらはかなり珍しく、森の奥や谷の奥に生息していることが多いらしい。そして魔法の得意なエルネにとっては相手をしにくい魔物というわけか。


 当のベヒーモスはエルネの言う通り足はそれほど速くないようで、ゆっくりとこちらへ向かっている最中だ。他の魔物の群れも順調に他の冒険者や騎士団が対処してくれている。群れの数がだいぶ減ったこともあり、しばらくの間は任せても大丈夫そうだ。


『面白そうだな、俺様が行ってくるぜ!』


「落ち着け、セイ。相手は尾に毒を持ち、魔法を使う魔物のようだ。みなで確実に仕留めるぞ」


『ちっ、俺様だけでも余裕だぜ』


 やはりセイはひとりでも突っ込みそうであったな。


「防壁の前までおびき寄せ全員で総攻撃を与えよう。魔法を通しにくい相手とはいえ、これだけの数で押せばいけるはずだ。それでも無理なら危険かもしれないが、近接戦闘が得意な者も含めて突っ込むしかないな」


「……さすがにあの巨体を相手に近付けばかなりの死者が出るのではないか?」


「そうだな、だがこればかりは仕方がない。もちろん他の者は撤退させ、覚悟のある者だけで突っ込むぞ」


 幸い現在のところ負傷した者は出ているが死者は出ていない。というのもこの世には回復魔法という魔法があり、ある程度大きな傷もすぐに治してしまう。しかもこの回復魔法とやらは治癒の霊符よりも遥かに効果が高い。


 そのため、魔物の群れと直接戦闘をする冒険者や騎士たちは決して致命傷を与えられないように立ち回り、負傷した者が出れば即座に周りの者が支援をして回復魔法によって治療する。我の世よりも戦士の生還率は高いようだ。


 だが、あの大きな魔物と直接戦えば多数の死者がでることは間違いないだろう。


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