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京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第55話 おっさん陰陽師、魔物の群れを見る

「みんな全然いなかったね……」


『それと他の街よりもみんなピリピリしているみたいだよ』


「緊急事態であればそうなってしまうのだろう」


 冒険者ギルドから宿へと移動し、晩ご飯をご馳走となり部屋へと戻ってきた。街から避難した者が多かったこともあり、他の街よりも人は少なく、残っている者もどこか普段とは違った様子である。


 ただ、この宿の食事は随分と豪勢な様子であった。高級な宿ということもあるが、万一のことがあるこういった状況だからこそ豪華な食事をとるのかもしれぬ。むろん我は死ぬ気など毛頭ないので、他の式神の分の食事もしっかりともらっておいたぞ。


「……ギルドマスターの手前はああいったが、撤退のための一線はどこかで引いておくのじゃぞ。はっきり言うが、冒険者は命あっての仕事であるからな」


「うむ、もちろん分かっている。地を走る魔物が相手であるならば、少なくともビャクの足に敵う魔物はいないだろう。ビャクを顕現させて逃げるための余力は常に残しておく」


 エルネの言うことも理解できる。このバルザルの街は初めて来たばかりの街であるし、我らが命を懸けてまで守る義理などない。


 魔物や悪党のはびこる世であることだし、自分の命が一番大事であることは間違いない。


「だが、我は人々を守る陰陽師という職に誇りを持っている。できる限りはこの街の者へ協力しよう」


「うん! レイラも頑張る!」


「……相変わらず変わっておるのう。まあ、妾もできるかぎり善良な街の者を守りたいのは同じじゃ」


『おいらも頑張るよ~!』


 皆も改めて気合を入れている。今回はスーにも頑張ってもらわねばな。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 翌日は一度冒険者ギルドへ行き、サーロン殿と改めて打ち合わせをした。偵察に向かった者の情報によると、やはり次の日にはこの街へやってくる可能性が高いらしい。


 エルネは魔法でこの街の壁の前に罠を作る手伝いをし、我とレイラは戦いに備えて霊符を準備してできる限りの五行力を込めておく。冒険者や騎士団の者は壁の上に武器や食料を集めたり、万一の状況にはこの街を捨てて避難するための準備などをしていた。


 各々ができる限りの備えをし、いよいよ魔物の群れが到着すると思われる翌日になった。




「……見えてきたな」


 街の壁は二丈(6メートル)ほどの高さとなっており、上に登って矢など撃てる仕組みとなっている。すでに弓や魔法を扱える者はその上で待機しており、剣や槍などを持つ冒険者や騎士団は壁の前に待機している。


 その冒険者の前には即席の防壁を組み、さらにその前には魔法で作った落とし穴が用意されている。こちらの準備は万端だ。


 我らは壁の上に上がり、待機していると街の奥の方から偵察部隊の狼煙が上がり、それからしばらくして魔物群れが見え始めた。


「ふむ、まるでひとつの意思を持ったかのようにこちらへ向かってくるな」


「あそこまで大きな群れとなった魔物たちはひたすら街や人などへ向かってくるのじゃ。さらに厄介なのは多少群れの魔物を倒したところであの勢いは収まらず、ひたすらこちらに向かって突っ込んでくるのじゃ」


「怖いね……」


 獣らしく火を恐れてくれれば楽なのだがな。恐れを知らずに突進してくる獣は恐ろしい。


「エルネ殿、ヤコウ殿、頼みますぞ」


「うむ」


「最善を尽くそう」


 壁の下の最前列にいるサーロン殿に答える。そして冒険者たちのいる右側には同じ鎧を身に着けた騎士団の者がいた。


 今回は冒険者と騎士団に分かれて別々に指揮をとるようだ。組織が別のため、そちらのほうがむしろうまく連携できるのかもしれぬ。


「ヤコウおじちゃん、大丈夫かなあ……」


「心配は無用だ。ここまで魔物が来ることはないであろう。それよりも誤って味方に攻撃を当てないように気を付けるのだぞ」


「うん!」


 今回はレイラも戦いに参加する。宿で待っているよりも我やエルネと一緒にいるほうが安全だからな。


 レイラ自身にも聞いたが、我らと共に戦いたいようだ。これまで盗賊団やバームンの屋敷に踏み入った時はスーと共に待っていてもらったこともあって、むしろ我らと共に戦えることが嬉しいらしい。


「魔法部隊、攻撃準備!」


「おっと、そろそろおしゃべりの時間は終わりのようじゃぞ。まずは妾たちの出番じゃな!」


 サーロン殿と騎士団の号令により、壁の上にいるエルネを含めた魔法部隊が魔法を放つ準備を始める。奥からは大きな土埃を上げて魔物の群れが迫ってくる。


 ようやく魔物の群れの一端が見えてきた。シルバーウルフ、ワイルドボア、ブラッディベア、オルトロス……なるほど、確かに四足歩行の獣型の魔物ばかりでゴブリンやオーク、鳥型の魔物はいないらしい。


 どの魔物も他には目もくれずにこちらの方へ向かって来ている。妖どももそうであるが、魔物もなぜ人を襲ってくるのだろうな?


「雷よ、鎮魂の歌を歌え。肉を裂き、魂を焼き、我が敵を屠れ……」


 エルネが詠唱を始める。それに続いて魔法部隊も詠唱を始めていく。


 魔法は詠唱を省くこともできるが、詠唱をすると威力が上がるらしい。基本的には魔法使いが後方から魔法を使い、戦士たちが詠唱を妨げないように前に出るというのが、この世の戦い方のようだ。


「罪深き魂に終焉の慈悲を――ライトニングレクイエム!」


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