第51話 おっさん陰陽師、エルネとセイを引き合わせる
「ウインドカッター!」
「「「ギィィィ!」」」
目の前にいたゴブリンたちが風の刃によって斬り刻まれていく。
「ほう、見事なものだな」
「エルネお姉ちゃん、すっご~い!」
エルネが放った風魔法によって5体ほどいたゴブリンたちがすべて倒れていく。
「この程度の魔物であれば余裕じゃな。ウインドカッターは中級くらいの魔法じゃ」
『これが魔法ですか。おもしろいですね』
『風で魔物が斬れるなんてすごいや!』
村を出発して、今日もバーギニア山を目指して進んでいる。
昼に休憩をしている際にゴブリンが襲ってきたのだが、エルネが魔法によって倒してくれた。これまでも魔法とやらを実際に見せてもらったが、魔物を相手に使うのは初めてだ。ゴブリンはそれほど強い魔物ではないのだが、それでもここまで圧倒するとは見事なものである。
エルネがたったひとりでも旅をできるわけだ。そしてこの魔法より強い魔法もまだまだあるらしい。あの風魔法とやらはマーチル殿も使用していたし、セイの術とも似ているようだ。
「ビャクやスーには負けてられぬからのう。みなも何かあれば妾を頼るのじゃぞ」
「うむ、その際は頼らせてもらおう」
「……ふ~む、今日も駄目じゃったか」
「昨日も言ったが、焦る必要はないぞ」
これでエルネへ陰陽術を教えてから3日目となり、まだ陰陽術を使える気配はないが、普通の者でもあと数日はかかるので焦る必要はない。今日の修行はここまでにしておこう。
「それではセイを顕現させるぞ」
「うむ! ドラゴンに似ている龍とやらは楽しみなのじゃ!」
エルネの前でセイを顕現させるのは初めてだ。昨日村で食べた料理は式神の分ももらっている。ビャクの分は昼に食べてもらったので、残りはセイとゲンの分だ。
セイには同行者が増えることを伝えてあるが、実際に会うのは初めてである。
「いでよ、青龍! 急急如来律令」
『おう何の用だ、ヤコウ? 敵の姿は見えねえようだし、またうまい飯か?』
「うむ、以前のワイバーンの肉と村でこの土地の名産物をいただいたのでな。それと前に話していた同行者のエルネを紹介するぞ」
セイも相変わらずである。
「おおおお! 確かにドラゴンとは違うが、とてもよく似ておるのじゃ!」
『……こいつか。またチビ助と同じくらいのガキじゃねえか。なんだよヤコウ、ガキばかり拾っているのかよ?』
「こう見えてエルネは我よりもずっと年上なのだぞ。エルフという種族を説明したではないか」
『そういやそうだったか。ふ~んこんなガキがなあ』
同行者が増えると伝えた時にエルネのことについても説明しておいたのに忘れているようだ。エルネは実際にドラゴンという魔物を見たことがあるらしく、その姿はセイとは異なっているらしい。
「すまぬな、エルネ。セイは少し口が悪いのだ……」
「構わぬ。それよりも翼もなく、魔法も使っていないのにどうやって浮いておるのじゃ! それにセイは木の要素を持っておるのじゃろ、いったいどのような術を使えるのじゃ?」
『……なんだか変わったやつだな』
エルネはセイの口の利き方を気にする様子はなく、目を輝かせながら矢継ぎ早に質問を浴びせる。
我が陰陽術を見せた時と同じ反応をしておるな。長年生きていることもあって、自身が初めて見ることに興味が尽きないのであろう。
『ほう、そいつが魔法ってやつか。随分とおもしれえな!』
「セイの術もすごいのう。特に植物を操るような魔法は見たことがないから驚いたのじゃ!」
レイラの作った料理と村でもらってきた料理を食べて満足したセイ。そのあとはセイの術を見たいとエルネが希望した。
美味なる料理を食べて上機嫌となったセイはいくつかの術をエルネに見せ、エルネも代わりに魔法を見せた。同じ風を使う者同士、互いの術を見て驚いている。だが、森羅樹縛のような植物を操る術は魔法にはないらしい。
「エルネお姉ちゃんとセイちゃんはすっごく仲がいいね」
『セイ兄は強い人に興味を持つんだよね。あの魔法みたいな不思議な力が気になったのかも』
「まあ仲が良いのはいいことだ。……そのうち戦おうと言い出しかねないか心配だがな」
セイとエルネの相性は悪くないようだ。術や魔法をお互いに見せるだけならばよいが、腕試しに戦いたいと言い出さないか少しだけ心配である。なんにせよ、これから一緒に行動するので、喧嘩などをしないようでほっとした。




