第49話 おっさん陰陽師、新たに修行をつける
「……ふ~む。陰陽二気に五つの要素か。やはり魔法とは根本的に異なっているようじゃ」
レイラにしたように、まずは陰陽術の基本的な仕組みをエルネに教えた。魔法は火水風土木の要素以外にも様々な属性というものがあるらしい。あの呪詛師が使っていたのは闇魔法という少し特別な魔法で、基本的には火や水などの魔法から学んでいくようだ。
他にも雷魔法や聖魔法、召喚魔法、空間魔法など多岐にわたるらしい。あのマジックバッグという魔道具は空間魔法を使った魔道具のようだ。
「霊符や形代を使ったり、式神を顕現させたりする時にはその五行力とやらが必要なわけじゃな。魔力のようにそれを使えるかが要となりそうじゃ」
「うむ。一月ほど修行をして才が芽生えない場合も多くある。そればかりは当人の資質となるので致し方ない」
そのあたりは魔法と同じようだ。
エルネと話をし、たとえレイラのようにすぐ陰陽術を使えるようにならなくとも、まずは一月ほど様子を見るということになった。少なくとも一月ほどは我らと行動を共にするらしい。
「それでは瞑想からだ。足をこのように組む結跏趺坐にて瞑想をおこなう」
「了解なのじゃ!」
陰陽術の説明が終わり、レイラと同様に瞑想の修行から始めていく。
「……残念ながらこの霊符に五行力は込められていないようだ」
「う~む、残念なのじゃ……」
今日の修行が終わり、最後に我の書いた霊符をエルネに持たせて瞑想を行ってもらったが、レイラの時のようにその霊符に五行力が込められていることはなかった。
レイラはまだ童であることから初めは修行の時間を短くしていたが、エルネは我よりも年上なのでそれよりも長く修行をしていたのだが難しいようだ。少なくともこれでこの世の者すべてがレイラのように陰陽術の才を持っているわけでないことはわかった。
「そもそもたった1日でできる者などレイラ以外に見たことがないぞ。しばらくはこのまま様子を見ていくとしよう」
「うむ」
多少はがっかりしている様子であったが、そもそも才のある者でも数日は要するので落ち込む必要はまったくない。しばらく修行を続けつつ、様子を見ていくとしよう。
「レイラの方は形代を動かすことができるようになってきたな」
「う、うん。でも自分が見ているのと少し違う感覚で変な気分だよ」
「じきに慣れるものだ。慣れれば自身の両の瞳を開けていても見えるようになるぞ」
レイラはというと、霊符をある程度使えるようになり、今は形代を使う修行も共に進めている。人の形をした形代に自身の視界を移すことは霊符を扱う以上に難しいのだが、早くも短い範囲ではあるが操れるようになっていた。
初めは自身の視界と形代の視界を共有する際に違和感があるため、自身の瞳を閉じて形代の視界に集中させているが、慣れれば自身の視界に加えて形代の視界も同時に見られるようになる。
それができるようになれば、視界を共有する形代をひとつずつ増やしていく。5つの形代を同時に操れるようになれば一流である。レイラもそれを聞いた時は複数なんてできるか心配そうにしていたが、ひとつできてしまえば複数を操るのは意外と簡単なのである。
今後は移動をしたり、街を回りつつも2人の修行を続けていくとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『主、目的地らしき村が見えてきました』
「うむ、一度止まってくれ」
翌日の昼過ぎ、今日の目的地である村が見えてきた。バーギニア山までの道のりは多少あり、この村ともうひとつ街を越えた先にある。
少し早いが、今日はこの村に泊めてもらう。こういった街と街の間にある村の大半は旅人や商人が泊まれるようにしてくれているらしい。
「ここからは歩いて行くべきじゃな。ビャクが魔物と間違えられて村の者を警戒させてしまうかもしれぬ」
「ああ、そのようにしよう」
エルネの言う通り、村の手前でビャクを還す。街へ訪れる際も門番を驚かせてしまうことは多かったが、村だと余計な警戒心を与えてしまうかもしれぬからな。
「随分としっかりした村であるな」
『やっぱり建物なんかも京の都近くの村とは違うよね』
歩いて村まで向かうと、村の全容が見えてきた。街に比べるとやや小さいが、木や石造りの建物は割としっかりしている。
我は京の都の外に出ることは稀であったが、数回ほど都付近の村まで妖退治をしたことはある。
「いずれはヤコウの世界も見てみたいものじゃな。じゃが、油断は禁物じゃぞ。滅多にないことじゃが、村ぐるみで旅人から金品を奪うような輩もおるからのう」
「ええっ!? そんな人たちもいるんだね……」
……長い間様々な場所を旅しているエルネがそう言うと説得力があるな。
我とレイラは村を訪れること自体が初めてとなる。エルネの言うように悪い者も少なからずいるので、我も油断はせぬようにしよう。




