第47話 おっさん陰陽師、次の目的地を決める
「みなの同意がとれた。これからよろしく頼む」
「エルネお姉ちゃん、お願いします」
『よろしく~』
「おお! こちらこそよろしく頼むのじゃ!」
翌日、街から離れたところでスー以外の式神にエルネが同行してもよいかを確認した。ゲンは喜び、ビャクは構わないと言ってくれ、セイはどちらでもいいといった感じであったのはみならしい。
「明日くらいにはこの街を出ようと思っている。次の目的地はバーギニア山という火を噴く山を目指すつもりなのだが、問題はないだろうか?」
街の者たちから聞いた話によると、この辺りからそこそこ近くて珍しい場所を聞いたところ、その山の名が挙がった。なにやらとてつもなく大きな山で、その山の中心には赤き炎が常に宿っているらしい。みなと相談をして次の目的地はその山に決めた。
我の世でも京の都からは離れていたが不尽の山(富士山)という大きな山があり、永き時に渡って数度荒ぶって火を噴き出すという話を聞いている。聞くところによるとバーギニア山は炎を宿してはいるが、火を噴きだすことはなく、多くの者が山を登りそれを拝みにいくようだ。
「ほう、あそこか。妾も何度か訪れたことがあるが問題ないのじゃ」
「むっ、訪れたことがあるのか。それでは別の場所にしたほうが良さそうであるな」
そういえばエルネは長年多くの場所を訪れているのであったな。この辺りでだいぶ有名な山のようだし、すでに訪れている場所があっても不思議ではない。
バーギニア山以外にも気になっている場所は多くあるし、どうせならばエルネも訪れたことのない新しい場所を訪れた方が楽しいだろう。
「気にする必要はないぞ。ちょうど妾ももう一度訪れたいと思っておった場所じゃ。あの山の麓にある温泉はとても気持ちがよいものじゃからのう」
「エルネお姉ちゃん、温泉ってなあに?」
「温泉とは地中から自然と湧く温かい湯のことじゃ。稀に火を噴く山の麓にある場所で、その湯を溜めて風呂にして入ることができる。理由はわからぬが普通の風呂とは異なり、疲れをとったり傷を癒したりする効果があるのじゃ」
『へえ~そんなのがあるんだね!』
ふむ、我らが聞いた情報の中にそれはなかったな。自然に温かい湯が沸き出るとは不可思議である。領主殿の屋敷で入らせてもらったあの風呂とやらはとても心地が良いものであった。あれにまた入れるというのは楽しみだ。
この世のことに詳しいエルネがいてくれるとありがたい。エルネもバーギニア山を訪れることに異論はないようであるし、次の目的地はその場所で決定である。
「エルネはマジックバッグを3つも持っているのか」
「うむ、これはとても便利な魔道具であるからのう。用途別に分けておくとすぐに必要な物を取り出せるのじゃ」
午前中は再び海で遊び、午後は街の市場へやってきて、必要な食材を購入しに来ている。エルフという種族が珍しいのか、いつも以上に我らを通り過ぎる者がこちらを見てくるが、それも今更か。
買った物をマジックバッグに入れていくと、エルネがその一部を預かると言ってくれた。かなり高価である魔道具のマジックバッグを3つも持っているとは驚いた。そして同じマジックバッグでもより高価な物の方が入る容量は大きいらしい。おそらくこのひとつひとつが我の持っている物よりも高価なのだろう。
「おおっ、レイラは料理ができるのか」
「うん」
「我らの食事はレイラが作ってくれているのだ。……我は料理をしたことがほとんどなくてな」
海でとれる食材や野菜などを購入していると、エルネがそんなことを言う。
「エルネは長いこと旅をしていると言っておったが、自分で料理はしないのか?」
「う、うむ。妾は料理が少し苦手でのう……。屋台などで購入した料理をマジックバッグに保存しておるのじゃ」
どうやらエルネも料理ができぬらしい。我もそうであるが、長年生きたとしても人に得手不得手はあるのだ。
このマジックバッグとやらはいれている間の時が止まっているため、食材や料理が腐ることはないので、確かに料理を多く購入しておけばことは足りるか。
「すまんが妾の分も作ってもらってよいかのう? もちろん食材の費用は出すのじゃ」
「うん、もちろん大丈夫だよ!」
「おお、それは助かるのじゃ。せっかくならば妾もみなと同じ物を食べたいからのう」
エルネに頼られて嬉しそうな表情を浮かべているレイラ。屋台の料理も美味で様々な種類はあるのだが、自分たちで狩った料理をその場で料理して食べるほうがより美味に感じるものである。
寝具やテントなどはエルネ自身の物を持っているので、そちらは新たに購入する必要はなさそうだ。
これで明日の朝にはこの街を出発できる。この街の海というものはとても広大ですばらしいものであった。次の目的地も楽しみであるな。




