第46話 おっさん陰陽師、相談する
エルネと共にまた海へとやってきた。レイラは昨日と同様にゲンとスーと一緒に海へ入り、楽しそうに遊んでいる。昨日の場所はこの街へ海を見に来た客が多いということなので、エルネの知っている小さいが誰もいない浜辺にやってきた。
我とエルネはというと、浜辺で先ほどの続きを話している。どうやら陰陽術に興味があるだけではなく、魔法についてもだいぶ博識であるので、これまで気になっていたこの世の魔法や魔道具についてすべて答えてくれた。
「なるほど、闇の魔道具の他にも特別な魔道具があるのか」
「うむ。闇の魔道具とは闇魔法の使い手が作りし魔道具で、効果が強力な代償としてなんらかの対価を払うのじゃ。そしてどこの誰が作ったのかもわからぬ古代の魔道具の中には代償もなしに凄まじい効果を持つ物もあるのじゃ」
あのバームンが使っていた闇の魔道具は随分と強力な魔道具だったらしい。確かに何も使わず瞬時に攻撃を発することができるあの魔道具には驚いたものだ。
だが、闇の魔道具には何らかの対価を払う必要性があるらしい。あの首飾りの処遇についてはマーチル殿に任せたが、今度あの街へ行った時に詳しい話を聞いてみるとするか。
「ふ~む、その闇の魔道具を防ぐ結界に闇魔法の呪いを使用者に返す術か。陰陽術とやらは奥が深いのじゃ」
エルネの方も陰陽術にだいぶ興味を持っているようである。
「……よし、決めたのじゃ! ヤコウ、そなたたちはしばらくこの国周辺を旅するのじゃな。その度に妾も同行させてほしいのじゃ!」
「同行?」
「うむ。そなたの陰陽術にとても興味が湧いたのじゃ。間近でそなたや式神を観察したい。妾は第二級冒険者で、この辺りの地にも詳しいから必ずそなたたちの役に立てるはずじゃ。なんなら同行している間の費用はすべて払ってもよいぞ!」
ものすごい勢いでこちらに詰め寄ってくるエルネ。
旅の費用を払ってまで我らに同行したいとは驚くほどの熱意である。エルネは魔法だけでなくこの世のことにも詳しいので、我としては同行してくれるのであればとても心強い。とはいえ、同行となると我だけでは決められない。
「同行となると我だけでは決められぬゆえ、少し考えさせてほしい。それと同行するとしても費用をすべて出す必要はないぞ」
「わかったのじゃ」
エルネの方が歳上とはいえ、我もこの歳で生活の面倒を見てもらうつもりはない。自分の生活する金くらい自身で稼がねば陰陽師の名折れである。
「おじちゃんも遊ぼうよ!」
『ご主人、こっちこっち~』
『海は気持ちがいいわよ』
「むっ、そうだな。せっかく海に来たのだから遊ばなければ。せっかくならエルネもどうだ? 少なくともあと1~2日はこの街でのんびりするので、時間はあるぞ」
「うむ、そういうことなら妾も遊ぶのじゃ!」
先ほどからずっとエルネと話し込んでしまっていた。ここへはのんびりするために来たのだからな。式神たちやレイラに誘われたことだし、たまにはゆっくりと羽を伸ばすとしよう。
「うん、レイラは賛成だよ! エルネお姉ちゃんはすっごく優しかったし、魔法もバーッてすごかったから楽しみ!」
エルネと別れて宿へ戻り、昼間にエルネと話していたことを相談する。
レイラの言うバーッというのは水魔法とやらのことであろう。海ではゲンが水を操るのと同じように自在に操って遊んでいた。ああいった細かい操作もできることには驚いたな。
『……おいらも反対はしないけれど、いっぱい触るのはやめてほしいかな』
「うむ、それについてはエルネに注意しておこう」
エルネが同行することにレイラは賛成でスーは条件付きで可といったところである。初めて式神であるスーに触れた時にあの者はだいぶ興奮していたから、落ち着いている時は大丈夫なはずだ。
他の式神には明日聞いてみるか。セイだけはエルネと会わせたことはないが、同行者が増えて文句を言うことはないはずだ。あの者がいつまで我らに同行するのかはわからぬが、ひとり増えることだし準備はしておいたほうが良さそうである。
エルネは旅慣れているようだし、明日相談してみるとしよう。あるいは数日だけの同行という可能性も十分にある。
「エルネにも相談してみるが、明日もまたのんびりと過ごし、明後日にこの街を出ようと思う」
『ええ~もっと遊んでもいいんじゃない? まだ遊び足りないよ!』
「この街で聞いたが、まだ他にも面白そうな場所がたくさんある。それに戻って来ようと思えばいつでも戻って来られるからな」
「うん。また来たいね!」
この街で海や海で獲れる料理を随分と楽しんだ。この世には海の他にもまだ見たいものが多くある。
海に近い湖というものもあるようだし、来たいと思えばまたいつでも戻ってくればいい。自由な旅というのはいいものであるな。




