第九話 そこに三つのビーム兵器があるじゃろ?
「迂闊に降りた私がアホだったか……」
ガレージに戻ってきた私は、修理される愛機を前に己の軽率さを恥じていた。
いやまあ、油断しきっていたのは変わらないし、機体に乗ったままでも結果は変わらなかった気がするけど……。
「敵の詳細もわからずに死んだのは痛いな」
まともに交戦していないから、得られた情報は少ない。
だが推察する事は可能だ。
「攻撃は体当たり系。無人状態だったとはいえ、機体の胴体を一撃で貫いたほどだから、攻撃力は相当に高い。バッタみたいな見た目だったし……ジャンプで飛び掛かってくるのか?」
そもそもまだ序盤の敵だし、そんなに複雑な行動パターンを持っているとは思えない。
恐らく、こっちを発見し次第、ジャンプからの突進で攻撃してくる敵なのだろう。
問題は、どう対応するかだが……。
「一瞬の事だったから、突進はかなり早いな。どれぐらいの距離を飛んでくるのかは分からないけど、先手を取って倒せなかったら串刺しか。動きの遅い機体だときつそうだ」
逆に言えば、最初の突進さえ避けられればあとは簡単な感じの雑魚なんだろう。一点特化でそれさえ防げばただのサンドバック、まさしく序盤でチュートリアルを兼ねて出てくる雑魚っぽい。
恐らくここでただ突っ立って撃つだけではなく、回避機動を交えながら戦う事を覚えさせる意図があるのだろう。問題はそんな事できない、という所だが。
「うーん。ロケットブースターで飛び上がれば最初の攻撃は回避できるだろうけど、その後が続かないな……リチャージ時間結構あるし。それに……」
そして他の問題もある。
あの時、私は一応周囲に敵がいないか確認してから降りたはずだ。なのに攻撃を受けた。
安いとはいえ頭部パーツのおかげで索敵範囲が広がっていたにも関わらず、だ。
それだけ敵の跳躍が遠くまで飛ぶとは考えづらい。となると。
「あのクソデカ葉っぱ、索敵妨害の効果があるのか?」
金属成分含んでそうだし在り得そうな話だ。
しかし、そうなるとちょっと困った事になる。
視界を妨害するほど生い茂った巨大ススキ野原に、そこに隠れて一撃必殺を狙ってくるバッタ。普通に考えて殺意が過剰すぎる。ほんとに序盤のエリアか?
バランス調整ぶっこわれてない?
「あ、いや……そういやこのゲーム、オンラインだったな」
本来は複数のプレイヤーがいるから、バッタの狙いがそれる? いやそれだとどっちにしろ狙われた人は死ぬし……あ。そうか、そういう事か。
「複数のプレイヤーが刈り取って、荒野みたいになってる状態が運営の想定ライン……?」
あの葉っぱが邪魔なら、複数のプレイヤーが刈り取りにかかるはず。
その情報が共有されるオンラインではあの草原は狩り尽くされてまばらになっているはずだ。その状態でなら、不意打ちを食らう事なく戦う事ができるのかもしれない。
「えー。それだったらオフラインだと詰むじゃん。いやまあオンライン前提のゲームをオフラインで遊んでいるのがおかしいといえばそうだけどさ……」
いやまああくまで予想だけど。
「うーん、どうしたもんかなあ」
こういう時は手持ちの資産と相談するに限る。私はステータス画面を開いて、購入や生産できるパーツ、レベルやスキル、アビリティを確認する。
ビーム兵器という自他ともに認めるネタプレイしているとはいえ、最序盤なんだから、こんな簡単に詰む筈がないんだ。何か攻略法はあるはず。
「……ん?」
見れば、粒子砲スキルのレベルアップまであと少しまで来ていた。試行錯誤の仮定で結構蟻を倒したからだろうか。
「いいね。ちょっと一狩りいってこようか」
見れば丁度、愛機の修復も終わった所の様子。丁度いいタイミングだ。
そして、蟻を10匹ほど撃って撃って、時々踏んで、そしてまた撃って、とした所で、待ち望んだメッセージが視界に表示された。
《『粒子砲スキル』がレベルアップしました! 新たに『ビーム兵器博学』スキルをゲットしました!》
予想通り、新しいスキルが追加された。さて、今回のはどうなんだろう。
『ビーム制御』スキルは、根本的にビーム兵器の運用が変わる超重要スキルだったけど……。
『ビーム兵器博学:ビーム兵器への理解度が高まり、開発ツリーが解放されます』
え、まって、このゲーム、ビーム兵器ってそんな細分化されてるの? それも開発ツリーの解放って……つまり使える武器が増えるって事?
「……滅茶苦茶重要なスキルじゃない!?」
私は慌ててガレージに引き返した。
そんでもって、早速確認すると……。
「うわあ、一気にビーム兵器の枠が三倍に増えてるじゃないか……」
一気にページ数が増えたカタログに困惑する。これ、他の武器もそうなの? 見た限り、普通の武器は最初からライフル、アサルトライフル、スナイパーライフルみたいな感じで細かく分けられているけど……。もしかすると使い込む事でバトルライフルとかセミオートライフルとか細かい分類が発生するのだろうか。いやでも、ちらっと見ただけだけど攻略サイトにはそんな事書いて無かったような……いやまあでも企業の作った攻略サイトだしなあ。あんまり信用できたもんではないし。
「それはともかく、ふむ。ビーム兵器は大別して三つに分けられるのか……」
一つは、『フォトンビーム系』。今まで使っていたのがこの分類になる。ジェネレーターから供給される電力を、フォトン粒子っていう高エネルギー粒子に変換し、指向性を与えて打ち出す。フォトン粒子は環境の影響を受けづらくまっすぐ飛ぶのが特徴。ただし、エネルギーを無茶苦茶消費する。大体、使ってみて受けた印象通りだ。
そして新たに増えた一つが『荷電粒子系』。ロボアニメで有名な奴である。重金属粒子を電磁力で加速させて撃ちだし、衝撃と熱量で対象を破壊する。ある意味では実弾武器のアップデート版とも言える兵器だ。ただ磁力の影響を受けやすくまっすぐ飛ばない、という欠点はこちらでもそうらしく、粒子が拡散しやすく威力・射程の減衰が激しい。消費エネルギーもまあまあ大きいし、何よりほぼ物理攻撃なので激烈な反動が生じるとの事。
最後の一つは、『プラズマビーム系』。プラズマというとちょっと曖昧なイメージがあるが、説明を見る限り、核融合で生じた高エネルギープラズマを電磁力で照射するというもののようだ。砲身自体が核融合炉になっているので消費エネルギーを全部まかなう必要が無く比較的消費エネルギーが少ない。その代わりとんでもなく熱量を生じるので連射力が低く、かつ一定値以上オーバーヒートすると砲身を損傷するデメリットがある。弾速も他のビーム兵器に比べて遅く、精度もそこそこ。利便性もギャンブル性も高い、不安定な武器と言える。
これらが、新しく追加されたビーム兵器である。
フォトンビーム系はもともと持っていた奴なので、今はそれに加えて二種類、ガレージに初期装備として追加されている。初期装備はタダなので好きなように装備できるのだが……。
「うーむ。どれを装備しようか……」
問題はそれである。
結局どれもビーム系なので、威力面はあまり変わりないと思われる、実威力に反した滅茶高い表示攻撃力も変わらないし。となるとあとは使い勝手の問題になる。
ただ荷電粒子砲は最初から却下だ。どう見ても扱いきれる自信がない。そもそも現状、機体の足の遅さからできるだけ遠距離戦闘に徹したいという都合もある。
そうなるとフォトンビームか、プラズマビームか、という事になる。プラズマビームは色々と不安な事が書いてあるが……。
「まあ博打武器ってはまると強いしな。試すだけ試してみよう」
そういう訳で、早速愛機の武装をプラズマビームに変更!
比較的スマートでシンプルなビーム砲がガコン、と取り外され、代わりに青白く明滅するコイル状の砲身がむき出しになってる怪しげな武器が機体に装着される。
おぉ……配線とか剥き出しだし、あちこちコーションマーク張り付けてあるし、どう見てもヤバ気な武器だ……。こういうの好き……。
私はご機嫌で、もう片方のビーム砲もプラズマビーム砲に交換した。
「あっ、積載オーバー……」
慌ててステータスを確認する。
なにこれよくみたらフォトンビーム砲の倍近い重量があるじゃん!?
ええ。どうしよう???
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