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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第十五話 荷電粒子砲



 仕事の昼休憩時間。私は携帯端末でプレイ動画を再生していた。


 ビルドロボオンラインのプレイヤーの、自称トップギルドの一員だという人物の対戦動画である。オンライン版ではメタルインセクトを倒して探索するのはあくまで前哨戦で、そこで得られた資源でロボをカスタマイズし勢力戦に参加するのがメインコンテンツらしい。終わる事なき闘争の歓びを、という奴である。


 動画では、二つの勢力が入り乱れて壮絶な乱戦が繰り広げられている。プレイヤー視点ではなく、ゲームの機能である戦闘観戦機能で撮影されたというそれは三人称視点で、戦場のハイライトに応じて視点がちょこちょこ変わる。


 その中で一番長く映り込んでいるのは、動画をUPしたプレイヤーの愛機だ。真っ赤なカラーリングのF1みたいなスタイリッシュな機体が、両手に大型ライフルを持ち、ブースターで高速移動しながら次々と敵を撃破していく。とてもじゃないが同じゲームを遊んでいるとは思えない動きだ。


 と、そこに新手が。


 現れたのは、あきらかに重量級の茶色い二脚機体。一見すると武装は片手のサブマシンガンのみと貧弱だが、代わりにその動きは見た目に反して非常に俊敏。このゲームの最適アセンだという、武装を絞り込んで耐久力と機動力を両立するアセンのお手本のような機体だ。


 バババ、と放たれた銃弾が、赤い機体の左肩を捕らえる。こちらは機動力に大きく比重を傾けているようで、グロスレッドの肩パーツが被弾で容易く脱落する。一瞬動きが鈍った所に、茶色い機体が腰からスタンスティックらしきものを引き抜いて襲い掛かった。


 とっさにライフルを片方犠牲にして受け止める赤い機体……膠着状態も一瞬、爆発と見まがうバックブースターで急速後退して、残ったライフルを両手で構えて精密に相手の頭部を狙撃する。


 頭を吹き飛ばされて動きの止まった敵に、さらに正確にコクピット周りに数発。


 ガクン、と膝をついて動かなくなった敵を前に、ライフルを構えて残心。が、それも長続きはせず、画面の外から飛来してきた榴弾の爆発に見舞われ、赤い機影が土煙の中を高速で離脱していく……。


 そこで私は動画を停止した。


「やー。最終的にはあんなブースターバリバリ吹かして移動できるようになるんだねー」


 もちもち歩いている現状からは想像もできない。いやまあ、ビーム兵器を諦めれば割と遠くは無いのかもしれないが、それは御免だ。


 しかし……。


「んー。トップギルドでもビーム兵器は使ってないか。というか、画面が地味……」


 動画を遡って再生するが、ビームのような閃光は確認できない。大体ライフルとかマシンガンとかで、時折面制圧にミサイルとかグレネードが飛んでるぐらいだ。一応最序盤に一杯ミサイルは飛んでいたが、全部迎撃されて宙の華と散っている。


 おかげで戦闘の大半は、土煙や黒煙が巻き起こる中で、泥まみれになりながらロボット同士が実弾で射撃戦を行っているというものだ。


 それはそれで、一つの浪漫である事は決して否定しないんだけど……。


「効率化を突き詰めると地味になる、それは仕方ないんだけどねー」


 やっぱり私に対人戦やギルドやらは向いていないなー。あらためてそう思うのだった。






 という訳で戻ってまいりましたニューホーム。


 昨晩はじっくり見なかったガレージを、あらためてマジマジと観察する。


 木の根っこに浸食された地下施設。利用には問題ないようだが、なんだかちょっと荒廃気味である。操作用のコンソールにもコケみたいなのが生えているのは芸コマというか。


「なんか、放棄されて時間がたったガレージって感じだなあ」


 一応、このゲームの世界観設定を軽く調べてみた感じだと、この地下ガレージは“イコン”と呼ばれる設備であるらしい。人類が残した開拓拠点の一つでその機能はロボットの製造・整備に留まらない。なんでもイコンには人間のデータが記録されていて、戦場で死亡したプレイヤーはここで記憶ごと再生産されているという事になっているそうだ。


 ただ、色々あってその機能は不完全になっており、まだ多数の人間がデータ内に眠っている状態にある。たまたま目覚めたプレイヤーは、人類の復活と惑星の謎を探し求めて探索する……というのがメインストーリーであるようだ。その果てに待ち受けているのが、大企業の戦力に組み込まれての終わりなき勢力戦というのがなんか救いがないような気がするけど、まあ仕方ない。


「個人的にはゲームの都合を上手い事落とし込んだ良い設定だと思うなー」


 ぐるり、とエレベーターを中心にぐるりと見て回って満足したので、愛機に視線を戻す。


 そこには傷一つなく修復された愛機が、新しい姿で佇んでいた。


 脚部はこれまで使っていた重量二脚から、積載量重視の中量二脚に変更。最大積載量は下がったが、そこはプレイヤースキルである程度誤魔化す。頭部も索敵性能をそれなりに重視した、四角いカメラアイが特徴のものに変更する。テレビみたいな顔だが、これはこれで愛嬌がある。……いや、流石に無機質すぎるな。ペイントでニコニコ笑顔でも書いておこう。


 右腕は新装備こと実戦型荷電粒子砲。見た目はなんていうのかな。砲身の生えたタイヤ? カタツムリ? コンパウンドケースにも見えなくもない。説明を見るにまだまだ試作段階の域を出ないらしいが、チャージ時間が大幅に短縮され、拡散率が抑えられた事で有効射程も伸びている、だそうだ。実際どんなもんかは、撃ってみないと分からない。


 んでもって左腕は引き続き重量級の腕。ただ積載量にちょっと余裕が出来たので、ハンドガンを持たせている。マシンピストルと違って連射は手動だが、その分弾道が安定している、はず。敵のHPを削るサブウェポンとして使おう。


 あとは最後の切り札、ロケットブースターが胴周りに。使いどころは選ぶが、いざというとき縦方向限定とはいえ高速移動が出来るのはありがたい。思えばカメレオン戦でもうちょっとうまく使えばよかったな。


「よし、さっそく試してみよう。出撃だー!」


 いそいそと乗り込んで外に出る。


 リフトの出口は、見覚えのある大木の近くだった。ちょうど足元に、人間サイズのエレベーターの出口があるという位置関係。となると、この周辺には敵がいないのだろうか。待ち伏せタイプの敵に出た所を襲われたら洒落にならないからね。


 首を巡らし、周囲に警戒しながら、私はとりあえずボス戦の部隊となった広場に向かって歩いて行った。


「ボスは……いないな」


 広場に踏み入っても、何か異常は発生しない。一度倒したボスはもう出現しないのか、再出現に時間がかかるのか。ただ、広場の様子はすっかり元通りになっていた。倒れた木々も起き上がり、爆発で抉れた地面も元通りになっている。


 何もいないなら試射にはちょうどいい。


 広場の中央に陣取り、私は適当な木々に狙いを定めた。勿論、制御スキルは解放・出力ともに100%。


「発射!」


 引き金を引くと同時に聞こえる、バシャ! という何かを展開する音。確認してみると、特徴的な円形の粒子加速器、そのカバーがスライドして倍ほどの厚みになっている。開いた隙間からは光が漏れており、内部で高エネルギーが高速回転しているのが伺えた。


 ヴォオオン、という音がどんどん高まっていく。凡そ2秒ほどでピークに達したそれと同時に、ガコン、という凄まじい反動が機体を襲った。想定以上の衝撃に、コクピットがガクガクと揺れる。


 放たれたのは紫色に煌めくエネルギーの粒子。それは霧吹きのように拡散しながら広がっていき、やがて標的である大木に届く事なく消滅した。


 …………。


 ……え?


「これで終わり?」


 標的の木との距離は100mも離れていない。有効射程を伸ばしたとは何だったのか、困惑しながら周囲を確認した私は、それに気が付いた。


「えっ」


 地面が。


 私の立っている場所から地面がおよそ50mほどの距離に渡って扇状に掘り返され、溶岩のように赤熱化していた。


 恐らく、これはそのまま荷電粒子砲の有効範囲になるのだろう。


 なるほど。


 だいたい分かった。


「例えるなら反動硬直ありのエネルギースラッグガンか……」


 一応この表現は語源的に正しくないらしいけど、アサルトコア用語的に。


 しかしこれはまた一癖あるなあ。ヒートゲージはしっかり一発でオーバーヒートするから連射できないし、それでいて有効射程の短さから連射は出来ない。それでいて発射にはタイムラグがあるし、オマケに発射後短時間だけど反動で機体が動けなくなる。


 複数の雑魚を相手にするなら、あらかじめHPを削りつつ、全員を上手い事範囲内に捕らえてふっとばさないといけない。仕留め損ねたら反撃確定である。


「まあクセが強いのなんて今更か」


 さて。


 これでどうやって戦おうかな。



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― 新着の感想 ―
にこにこ笑顔で前方数十メートルをドロドロ溶岩にする異形ロボ……、やべーやつじゃん!
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