第九十六話 三連渦巻き
「さて、今回のアイディアの評価といこう」
『わくわく』
今回の機体は、攻撃能力を持った鷹型ドローンをコントロールして本体を安全な場所に置いたまま、メタルインセクト達に航空攻撃を仕掛ける、というコンセプトだ。
その為にペイロードを大きく割いたイーグルドローンは、一応は想定通りの性能を発揮した。
スラスターによる高速移動能力、大型故の航続距離と安定性、そして単独での攻撃能力。
一応、遠隔操作可能なドローンの類は、ゲームに装備として元々用意されてはいる。だがそれらはあくまで索敵が主任務で、攻撃方法といえば精々爆弾を内蔵して自爆するとかそのぐらいだ。動きも遅く、発見されれば容易く撃墜される程度の存在でしかない。
それらと比べれば、イーグルドローンは確かに高い性能を示した。示したが……。
「成功半分、失敗半分、ってところかな」
『そうですか? 失敗、というのはどのあたりが?』
「イーグルドローンに何か問題があったというより、そもそものコンセプトの練りが足りなかったかな。確かに機動力も航続距離も申し分なかったんだけど、それだけだと囮にしかならない。多数のメタルインセクトを相手にする以上、やはり攻撃力が不足している」
そう。
搭載できるプラズマピストルでは、いいとこ敵を1~2匹倒すのが関の山。安全地帯から狩れる、というのは確かに利点だが、火力不足で時間がかかれば、本体が危険にさらされる可能性も高くなる。
これはもう構造的な問題なので、欠陥というよりコンセプトの問題だ。
『火力が不足しているというなら、もっと大型にすれば……』
「現状でも個人的にはちょっと大きすぎるというか、これ以上大きくしたらどっちが本体なのか分かんなくなるからね……。そこまでやっても、火力不足は変わらないだろうし。旧来の航空機みたいに、爆弾を山ほど搭載するとかならともかく」
例えばF-15Eストライクイーグルとかね。個人的にはプラモデルのパッケージとかで見られる、クラスター爆弾をめいっぱい搭載しまくった構図が凄く好きなんだ。
ゲームの世界ならクラスター爆弾も使いたい放題だから、やろうと思えばやれるけども……。
「でも結局、必要なのは安定して火力を出し続ける事だ。無誘導爆弾の類はコスパに優れるけど、やはり威力過剰だ。かといって、マシンガンとかの類を装備すると、重たいし反動で墜落する恐れもある。エネルギーの問題で、ずっとスラスター吹かし続ける訳にもいかないしね」
『なるほど。それで、コンセプトに問題がある、と』
「そう。問題を解決する為に、恐竜的な末端肥大の道を突き進むと、その果てにまってるのは袋小路さ」
ゲームでも現実でも、頑なに突き進んだ先が正解とは限らない。むしろそうじゃない事の方が多くて、そういう場合大抵予後はよろしくない。
駄目だと思ったらすぱっと切り替えてしまう方がいい。
とはいえ、いいアイディアだとは思ったんだけどなー。企画倒れという奴か……これが……。
「ううーーん」
手慰みに再びイーグルドローンを飛ばし、その軌跡をぼんやり眺めていた時だ。
『あの。成立する過程などを飛ばして、最終的にはどんなのがあったらいいと思いますか?』
「え? んー、そうだね……」
背後からのテレサの問いかけ
純粋な彼女の疑問に私はしばし頭を捻って答えを出した。
「そうだな。使用回数のない遠距離攻撃が出来る端末、ってのが理想かなあ」
『使用制限がない、ですか』
「そうそう。使い捨てだとミサイルと変わらないしね」
具体例を出すと、フ〇ングとかソード〇ットとか。フ〇ンネルじゃないのは、あれらは火力不足という意味では変わらないからである。
多少機動が安直で回避されやすくても、一撃で雑魚を破壊できるぐらいの火力があって、かつ本体に戻して再充電する限り何度でも使える。これがやはり理想だ。
ただまあ、サブエネルギータンクが使い捨てである時点で現状遠距離操作端末は使用回数が存在するし、複数の端末を飛ばした所で制御できる訳ないから、これは絵に描いた餅にすぎない。
とはいえ、できたら間違いなく強い。滅茶苦茶強い。
雑魚をこれらで始末できるようになれば、本体は只管ビーム兵器の強化に専念できる。そう、オールレンジ攻撃だけでは駄目なのだ。いざという時、最後にものを言うのはどれだけゴリ押しできるかなのである!
火力最高!!
……なんてね。
『うーん。そうなると、紐でもくくりつけて使用後に回収できるミサイルみたいなものになるんでしょうか。なんてね、冗談です』
「はははは、そんな投げ銛か何かじゃあるまい、し……ん?」
いや。
案外、悪くないアイディアじゃない?
「……いけそうじゃない?」
『いやいやいや、相手はメタルインセクトですよ?! ちょっとやそっとの勢いじゃ装甲を貫けませんよ』
「いや、別に本当に銛にする必要はないんだ。あくまで、敵にくっつけばそれで……いいぞ、アイディアが固まってきた!! ホームに戻ろう、早速機体をくみ上げる!」
ひゃっほーい、と私は喜び勇んでホームに走った。
このなんか面白い事が出来そう、って閃いたのを形にする瞬間が一番楽しいよね!
そんな訳でホームに舞い戻った私は、早速カタログから仕えそうな部品を漁る。
まず目を突けたのは、作業用ユニットのカーボンワイヤーだ。頑丈なカーボン素材で作られたワイヤーをぐるぐると巻いたリール、長さの方は最大で数キロぐらいになるらしい。遠距離戦、というには少々短いが、そこはまあ妥協するべきだろう。
問題は射出方法である。ロケットブースターとかで加速させるのも手だが、あれはクーリング時間が意外と長い。繰り返し使用するには、できるだけ再使用時間が短いのが望ましい。
なので、イーグルドローンの射出に用いたカタパルトを改良して使いまわす。プラズマビーム砲の電磁レールを使用する事も考えたが、あれは射出時にかなりの電圧やら何やらが掛かるので、弾頭部分が損壊する可能性が高い。射出の勢いで物を破壊しよう、という訳ではないので、とりあえず撃ち上げられる勢いさえあればいい。
そして撃ちだす端末には、ビームカービンとクローを搭載する。射出後、カナード翼で姿勢制御しながら端末が相手に接触し、クローで固定。ゼロ距離からビームを撃ち込んで敵にダメージを与えた後に、ワイヤーを巻き取って回収するという訳だ。なんなら掴んだまま引き寄せて本体でトドメを刺すというのもありである。
本来、この手の衝撃を受けるパーツにビーム砲なんて精密部品を搭載するのは大分無茶だが、こちらはメガフレーム合体で散々試行錯誤したので衝撃吸収ノウハウには一家言ある。それに壊す勢いで投げつける訳でもないし、許容範囲だろう。あとはビーム砲なら、発射時の衝撃で固定が外れるという事もないはず。
いいねいいね。形になってきた。
「うーん。結構重武装に見えるか。まあこれはこれで」
思った以上にワイヤーの巻き取り部が大型になって大口径キャノン砲みたいな見た目になったな。ウィンチキャノンとでも名付けようか。
「あとは……そうだな。引き寄せた敵を確実に撃破するために荷電粒子砲を搭載しようか。腕はウィンチキャノンで埋まってるから……胴体に内臓して、粒子加速機は背中に……む、これだとコクピットをおさめる所がないな。頭部にコクピットをうつして……いっそ透明キャノピーにするか? 防御力に難はあるけど見晴らしがいいし」
そうして出来上がったのが、背中に巨大なコイル状の部品を背負い、両肩部に巨大なリールを背負ったアンバランスな人型兵器。
目的の為に特化したシルエットはどことなく重機のようにも見える。せっかくなのでカラーリングも黄色にしよう。
『……な、なんか、カタツムリみたいな見た目ですね』
「カタツムリは弱そうだなあ、せめてアンモナイトと言ってほしいかな」
触手もといウィンチキャノンが搭載されてるのもそれっぽいしね。
よし、これで次の試作機は完成だ。
さっそく建造スイッチを押して……今日はここまで! 寝る!
『あ、はい。お疲れ様です~』




