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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
第一章
7/27

File.7 銃声①


「殺してやる」

純粋な殺意の塊を向ける紅羽。

物喰いと取引をしようとしたこの(ラミエ)に全て吐き出させる。


入り組んだこの十五階で、曲がり角の奥に彼女は隠れ機会を伺っているこの状況。


しかも奴は銃を所持。

迂闊に近づく事はできない。


此方も角から顔を出すが、すぐさま反撃され強行突破は難しいだろう。


「チッ…!」

極め付けには……


「柊紅羽。現状は?」


「!!」

背後から男の声。

素早く─尚且つ静かに此方に向かってくるのは、特異対策課の堺だった。


拳銃のスライドをゆっくりと引く彼の姿を冷や汗を引きながら見つめる紅羽。


その様子を知ってか否か彼は口を開く。

「今お前を捕まえる事は任務にない。優先順位は奴らの方が上だ」


「…そうか」


「それで─現状は?」

堺が嘘をついている感じはしない。

今はなるべく早く奴らを捕まえたいのだ。


なら──

「犯行は恐らく二人。今奥にいるのは女、そいつは物喰いと繋がっていて、傭兵の一人を雇い奴らと“取引”をする予定らしい」


バックられたらしいが。


「(その傭兵と言うのは恐らく迅達と戦っている奴か…まぁあいつらなら大丈夫だな)成程。それでどうするつもりだ?」


その傭兵にも話を聞きたいが今は目の前の男に集中するしかない。


紅羽も堺もそれは同じ。


「協力しろ警察」


「生意気な……はぁ…いいだろう」

彼女のムカつくその一言に堺は不服ながら頷いた。

後は奴をどう倒すか。


すぐに堺が前に出ようとするが、紅羽がそれを止めた。


何故?と言いたげな彼に彼女はこう語る。

「二対一の状況がバレてこのまま逃げられたらどうする?奴みたいなタイプは戦いをビジネスと思うタイプだ」


逃げられでもしたらせっかくの物喰いへと迫る情報を逃す事になるのだ。


それは出来る限り避けたい。

「……少し時間はかかるが」


紅羽が思いついた策は……?


「よし、この作戦で行くぞ」

そう紅羽が告げると堺も黙って頷き、彼女はどこかへ行ってしまった。


────────────

【ラミエ視点】


パン。

と銃声が一発、紅羽がいた所から聞こえた。


「…?」

ゆっくりと顔を出すと、即座に銃を持った堺が壁から現れ、連続で発砲。


反射的に曲がり角に身を隠し、今の状況をまとめる。

(あの女を殺したのか?しかもあれは警察…でもここを離れる訳にはいかないしな〜まぁ…)


やるしかない。


顔と銃だけ外に出し、無駄のない構えで堺を迎え打つラミエ。


雇う側に回った彼女だが、元傭兵としての技術は健在。敵を殺す事だけに注力した構えだ。


「!!」

ばっ!と空気を切る音が鳴り、黒色の物体が角から出現。


そのまま何度も撃ち込むと違和感に気づく。

(スーツ…!)


たった数秒の動揺による射撃の停止が──()に隙を与えてしまった。


刹那。近くにあった柱へと滑り込み再び射線を切った堺は身を乗り出し角ギリギリに連発。


射撃が鳴り止んだ時。

カランカランと筒状の物がラミエの近くに転がる。


(フラッシュ!!)

このまま居ては不味い。

閃光弾から離れる為に咄嗟に距離を離す。


室内が光り輝き、酷い耳鳴りが彼女を襲う中、撤退する為に奥へと向かう中──


「どこへ行く」

閃光弾の影響を受けてない堺は躊躇わずに発砲。


「グッ…アッ!!」

その一発はラミエの右肩に当たりそこを片手で抑えながら彼女は逃亡した。


入り組んでいるこの階で一度見失ったら見つけるのは困難だが……


「これでいいんだろ。柊紅羽」


そう言った堺の言葉は聞こえず、彼女は逃げ続ける。

「はぁ…はぁ…!」


まさかあの警察があそこまで武器の使用に躊躇いがないとは思わなかった。


(日本の警察は“死”に対する覚悟がぬるいと思っていた…!!)


先程の女を殺したと思われるのあの警察は、あくまでも足を撃ち行動を封じただけで殺意はない……


…と思っていたし、今の警察にそこまでの胆力があるとは…到底彼女は思えなかったのだ。


外の非常階段に繋がる部屋へと入り、さっさと撤退する。


物喰いはどうせ来ないだろう。

特に理由のないドタキャンも彼ららしい。


扉を乱暴に開けると、人影が映る。

「なっ…!!」



警察に出し抜かれたと思っていたその姿は──


「また会ったな」

それは柊紅羽の姿。


「こいつ」

左手で銃を取ると同時に銃声が狭い部屋に響くと、彼女の拳銃は遠くへ飛ばされた。


隣には堺。

もう…詰みな状況なのだ。


「ふふふ…!こうなれば一か八か─」

能力発動を感じ取った紅羽は、ラミエの顔を手で掴み、


「『酩酊』」


「が……ぁぁぁぁ…!!」

彼女の手から放たれる酩酊の効果は一番効率的で無駄がない。


(なにこれ…酔った?錯乱?動けない…)


「確保」

そう堺が呟き、ラミエはそのまま気絶したのであった。


──────────────

【数分前…】


「…少し時間はかかるが」

しょうがないと呟き、紅羽は堺へと目を向ける。


「奴を非常階段へと追い詰めろ。後は私が能力で眠らせる」


「今ここで発動すれば良いだろう?」


「……それじゃあ無理なんだよ」


紅羽の能力『酩酊』は他者を酔わせる、所謂毒ガス。


剣先から垂れた液体がすみやかに気化し敵に迫る。

無色透明且つ甘い香りを持つ彼女の煙。


先程のラミエの襲撃で窓を壊された影響で本来なら少し離れた所からでも蔓延できる彼女の酩酊が機能しなくなったのだ。


外に流れても問題ないくらいに酩酊を発動し“続ける”事は可能でも体力が底を突くだろう。


【今に至り…】


「だからこうして追い詰めてもらう必要があったんだ」


「…そうか」

取り敢えず彼女の肩から流れる血を止め、応急処置をした。


「後は目が覚めてからのお楽しみだ」


──────────────

【十二階セキュリティ室近く:千景】


下の階で待ちぼうけをくらっている警察達を突入させ、戦況を変える為にハックされ侵入されたセキュリティ室へと向かう千景。



「…チッ!」

やはりセキュリティ室前には操られた社員数名がそこを固めていた。


銃を飛ばせば、敵は気絶し身動きを取らなくなる。

…が、それは中々至難な上かなりの集中力を求められるのだ。


判断を誤り発砲が遅れたらヘッドショットによる即死…少なくとも負傷は避けられない。


迅と晴菜によって大多数は駆逐されたがまさかここまで連携をとってそこを死守しているとは。


「ッ!!」

ドン!と四名の内一人の銃を飛ばし、社員の男は気絶。


銃声によって敵達は一斉に千景へと発砲。

遮蔽物となる場所へ隠れた。


「洗脳によってこんな事まで…!」

もうそこに敵は見えないというのにまだ発砲をやめない彼らに一抹の恐怖を覚えつつ、一人ずつ冷静に戦う。


しかし────


バン!と弾丸が彼女の頬を掠めた。


右の廊下からも社員が登場。

虚な目のまま何度も千景に向かって発砲してくる。


素人の一撃は、はっきり言って酷いものだがいつ当たるかどうか分からない。


「チッ!!」

なんとか向かってくる社員の銃を飛ばすが──


セキュリティ室の警護を外れた社員の一人が千景を殺す為、彼女の下へ歩いていたのだ。


殺意などの感情ない目が、死を覚悟した千景を捉え…銃を持った右手がゆっくりと彼女に向けられる。


(ごめんみんな…判断ミスった)


死ぬ直前は、全てがゆっくりに見えると言うがまさにこの事。


ここで終わ──


「!?」

背後にいた男の銃が飛び、そのままセキュリティ室にいた社員達の銃を次々と飛ばした男の姿が。


「お前なァ…なにやってんだ!!」

それは…わざわざ十二階まで来た迅の姿だった。


本来ならかっこいい助太刀なはずなのだが……


「おいなんだその不満顔は」


「あ〜〜晴菜ちゃんに助けられたかった」

あまりにも生意気な一言に迅は驚きを隠せない。

命を失うか否の状況下でこんなわがままを……?


「お前マジか…?」


「流石に冗談だよ。ありがと」


「軽いな!」

セキュリティ室前で二人は痴話喧嘩をしつつ、中へ入った。


幸いな事に機械はまだ壊されてない。

これならまずシャッターを上げ、下にいる警備員達と合流する──前にやる事がある。



「あの男をどうするの?」

迅が上がってきたのには理由があるだろうと千景は思う。


「あの長い廊下が幸いして、奴が晴菜の所にすぐ特攻を仕掛ける可能性についてはないだろうと判断した。だか

らァ…こうして今お前と合流してセキュリティ室を奪還した」


奴は完全に武装し、尚且つ荒事にも精通している傭兵だろう。


顔もチラッと見えたがどこかヨーロッパ系の顔立ちをしていた。


「あくまでも“すぐ”だがな、手榴弾も奴は持ってたし突入の心得もあるだろう」


射撃はずば抜けている晴菜でも懐に入り込まれたらゲームオーバーだ。


「千景。もう一度俺と、命を張ってもらうぞ」


「張ってない時なんてないでしょ?」


─────────────

【傭兵視点】


(一対一。あの警察の女、中々だが…そろそろ厳しいだろ?)


晴菜が持つのは拳銃一つ。

ある程度の武装はしているが、今彼が持つライフルとサブマシンガンと拳銃。更に…弾やグレネードなど完璧に揃えている。


彼女も男も撃ち合いが上手い。

本当に打つ時しか体を一切出さないし、判断もキレキレだ。


(目測で八〜十メーター弱。あいつも拳銃一つでよくやってるよ。そして……)


晴菜達は階段…つまり上階へと上がる際は必ず敵の射線上となる。


その為に上がる際は、迅や晴菜などのカバーを受けてようやく上がれるのだが……


「……一人でどうするつもりなのやら」


彼のその思考。


そして同時に、

晴菜は筒状の物を近くに投げた。


数秒後に割れる音を鳴らして煙が廊下を覆う。

スモークグレネードだ。


煙の端に、彼女と思われる者が上へと昇っていくのが見えた。


(逃げた…ならこの状況で一番可能性があるのは…背後だろ!!)


僅かに聞こえた足音を頼りに発砲。

彼の勘通り、南階段から降りてきた千景と迅の姿を確認。


「ほらな…!」

誇らしげにしている場合ではない。

彼もそれは分かっている。


先程の女は上へ行った事を確認済み。

それならやる事は単純且つ簡単。


「あんま改造とかは好きじゃねぇけど」

様々な状況に対応できる様、彼のライフルに“あるもの”を常に取り付けている。


背後へ来た彼らから身を隠し、ライフルの下部に取り付けいる発射機から煙弾を上階へと発射。


十一階へと続く階段が煙だらけに。

「おいおい、俺が忘れると思ったか?」


地面に置いておいたサブマシンで、迅と千景がいた所へ乱射。


ある程度撃ち切り、そのままそれを捨て去り、廊下を走った男。


煙による妨害で銃だけ出すのは不可能。

(体でも出してみろ、この走りながらの状態でも当てられる)


彼の視界は上階段…つまり“上”へと注がれる中、“下”から、冷たい目線と銃口が彼を見ていた。


ドン。

その音を響いた時には、彼の右肩には穴が…空く。


「あ?」

鋭い痛みが肩から全身に伝わる。



撃たれた。



ドサっとその場に倒れ、現実を受け入れるのに数秒掛かったが、何が起こったかを冷静に考える。



撃たれる寸前に見えたのは…下の階からの閃光。


(人の姿は全く確認できなかった……つまり目と銃しか見せずに命中させたのか!)


だが、悪魔でも撃たれたのは右肩のみ、片手でも撃てる。


問題はない。


痛む体を動かし落とした拳銃を拾ろうとするも、抵抗虚しく銃は後ろからの射撃により吹き飛ばされた。


「クッ…ソッがぁ…!!」



「お前にはまだ聞きたいことがあるんだ。まだ殺さんさ」

そう迅が告げると、拘束具を持った千景が晴菜と一緒に彼に応急処置を施した後、拘束。


「此方千景。敵を確保しました」


『了解。よくやった』

そう堺が安心した様に返し、今回のテロも収束した。



警察と紅羽の介入、そして物喰いのドタキャンにより今回の取引の終了した。



………“取引”は。

7時に投稿すると言ってしない男。

(普通に間に合いませんでした)


次は守ります!!(多分)

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