File.6 多発的②
(…爆発?それにしては衝撃が少ない)
爆薬を起爆させたのではなく、何か違う物を爆発させた可能性がある。
早速防犯カメラで確認すると、爆発した場所は十階。
一階から十一階まで続くオフィス。
「な!?」
謎の煙…いやガスに覆われて確認できない。
爆音と言うのはここからか。
中にいる社員が全く見えない。
一体十階で何が起きているのだ。
『先輩!やられた!セキュリティ室を乗っ取られた!』
「…別のカメラから警察と敵を探してくれ」
『了解!!』
非常階段はビルの入り口とは真反対。
マスコミや何者かによって撮られる心配はないだろう。
実際カメラはこちらにも見え、更に丁度ここは防犯カメラに映らない唯一のポイントでもある。
「(焦って戦えば、警察か奴ら…どちらかに漁夫られる可能性がある。今は待機し─)ッ!?」
ガキュンと弾丸が壁にぶつかる音が響く。
下からの発砲。
警察に勘付かれたかとゆっくりと視線を下に向けると……
「………社員?」
虚な目をして拳銃を所持した…この会社の社員。
なんであれ紅羽の判断は……
「…どけ」
────────────────
【十階:迅と千景】
上から突入した堺と晴菜とは別に、二人は避難経路の確保とテロ対策の為に一階から上っていた。
丁度十階にいた二人は爆音の正体を確かめる為、慎重にその場へ向かうと……
「おいおいおい…なんで社員が銃を所持してやがんだ!?」
ゾンビの様に辺りを徘徊する社員。
そんなものとは違い、銃を所持し、被害を受けなかった社員達を次々と銃殺。
「取り敢えず、社員から銃を奪取し動きを止めるよ!」
千景は近くにいた社員を早速狙う。
「無闇矢鱈に撃つなよ。発砲音で呼び寄せたら詰みだ」
「分かってる」
サプレッサーを取り付け、狙うべきは社員が持つ拳銃。
外せば最悪死ぬ。
正直全員の制圧は難しいかもしれないが……
「問題ない」
音の籠った銃声が響き男社員の拳銃を吹き飛ばした。
「今だっ!!」
吹き飛ばされた銃と同時に迅が飛び出し、男を確保。
両腕を後ろに回し手錠でクリアだ。
銃を飛ばす事により、社員は眠る様に静かになった。
「銃が本体って言うレベルで静かだな」
「これを後…何人やればいいの…」
やれやれと言わんばかりに呟く千景。
多勢に無勢。
これは…
「堺さん。千景です、聞こえますか?」
『無事か!?』
心配そうに話す堺にふっと笑いながら無事と返すと、いつもの冷静な彼に戻った。
「現況は、恐らく能力と思われる物によって十階にいた大多数の社員が洗脳。拳銃を持ち、洗脳の被害を受けなかった者達を次々と射殺」
『…下にいる警備員や仲間を突入させ暴走した社員達の無力化と、保護を最優先に行動させろ』
「了解。俺達は仲間が来れる様に階段周りにいる社員達を一掃します」
そう迅が返す。
ただ大規模な銃撃戦にしない為、堺が導き出した答えは──
『そっちに晴菜を送る。俺は引き続き柊紅羽を追う』
「どうしてそこまで彼女に?」
『彼女には利用価値がある』
そう返し、通話は途切れた。
堺には何か策があるらしい。
今できるのは三人で持ち堪えるだけ。
「やる事はシンプルだね、いくよ!」
「分かってる。俺に続け!千景」
─────────────
【十二階セキュリティ室】
事態がカオスになっている中、男女の二人がセキュリティ室にいた警備員もろとも殺し、完全にこのビル全体を乗っ取る事に成功。
「ゲ!一階警察きてんじゃーん。さっさとシャッターと〜じよっ…と!!」
ボタンを力強く押し、建物に入る為のシャッターが綺麗に閉じ、警察達は足止めをくらう。
「後は十階のシャッターを閉じて〜っと!!」
警察四人を閉じ込める事に成功し、上機嫌な女と、自身の持つサブマシンガンに惚れ惚れする男。
「ラミエは上を奴を、俺は下の奴らを殺す」
「りょ〜か〜い」
「じゃ、いってきま─あれ?社員殺すのはマズイっけ?」
男がそういうと、ラミエという女は特に介さず
「んにゃ、別にいいよ」
…と返し男は楽しみと言わんばかりにセキュリティ室へ去っていった。
(取り敢えずこれで作戦の七割は成功。後は俺が帰還しこいつから金を貰えばオールオッケー)
そんな男の思惑がありつつ、そのまま女も上へ向かう為にここを後にするのだった。
本格的な戦いは、今…始まろうとしている。
───────────────
【十階:迅と千景】
「階段前に到着──クソ…!」
下の階に通じる階段の所にシャッターが閉じていた。
何者かによってセキュリティ室を乗っ取られた事を悟る二人。
「落ち着け千景。今はいつどこから発砲されてもおかしくないぞ」
「分かってる!!」
少々ムキとなって返す千景と、ため息混じりに辺りを警戒する迅。
道中にかなりの社員を捕捉。
操られた者同士が争う事はないという法則を導く事で確保をより楽に行えたのだった。
(ただ解せないな…混乱を生みたいなら、敵味方なとわ定めずに暴れさせた方がいいはずなのに……)
謎はある。
…今は社員の安全確保に努めるべきだ。
すると上からコン…コン…と足音が聞こえた。
「!!」
二人は急いで銃を背後に向けると……
「「「あ」」」
同じタイミングで晴菜、迅、千景が呟く。
合流した。
「良かった…無事だったんですね」
「晴菜ちゃん、途中で社員には合わなかった?」
そう千景が聞くと、晴菜は銃を調整しながら答える。
「銃を飛ばせば無効化出来たので問題はなかったです」
さも当たり前に答える晴菜に二人は思わず笑ってしまう。
この課が設立同時、二人は工藤晴菜の情報に大方目を通した。
胆力と射撃の腕が飛び抜けて高いと評価されている彼女。
その実力は本物の様だ。
「流石〜」
口笛を吐きながらそう返す迅に、少し照れた様子の晴菜。このままここを防衛するだけ──そう思っていたが。
「ありゃ!?もうみんな片付けられてる!?」
知らない男の声が、近くで響いた。
特に動揺なく三人は銃と目線だけ、廊下の曲がり角に向ける。
潜入して戦おうとしている様には見えない。
確実に…敵だろう。
幸い死角から襲われる可能性はない。
背後にあるのは階段のみ。
「……??」
曲がり角からゆっくりと“何か”が現れた。
「(四角い…黒の丸……)ッ!!」
それがなんなのかを即座に理解し晴菜は発砲。
見事命中し、それがどこかへ飛んでいった。
「成程〜」
飛ばしたものはスマホ。
潜伏先がバレたが問題なし。
ここから廊下を通って曲がり角の間はおおよそ十メートル。
「いいね!」
すかさず男は飛び出し、“拳銃”で右に一発、左に二発撃った。
一瞬で三人は身を隠し、男は暫く連発するも……
「うるさい」
千景が一瞬だけ銃口を出し敵の拳銃ジャストに吹き飛ばした。
「うお!?」
「チッ…外れた」
男は驚きながら身を隠し、その後すぐに豪快な笑い声が響く。
「ハッハ!ただの警察かと思ったけどどうやら違うみたいだ!」
そう言いながら男は背中に掛けていたライフルを手に取り、完全な臨戦体勢。
「下の階が閉じている以上、仲間の介入は不可能。
千景はセキュリティ室へ向かえ、俺と晴菜でこいつをすみやかに倒し合流する」
「了解」「分かったわ」
千景はそのまま上の階へと向かう。
「奴ァプロだな。黒スーツに身を包んでややこしいがどうやら社員の一人が起こしたクーデターという訳ではなさそうだ」
銃の扱いと判断速度、身体能力。
どれを取っても優秀。
「晴菜。注意しろよ」
「はい!」
───────────────
【十五階:柊紅羽】
辺りに誰もいない事を確認し、窓を背に紅羽は防犯カメラを見ていた。
先程襲ってきた社員には能力『酩酊』を浴びせるとすぐ気絶。
敵が使った能力の仕組みは不明だが、何か弱点があるのだろうか。
「十階で対策課が交戦。十五階には…ん?非常扉が開いて──」
トン。
そんな力強い足音が聞こえた時、紅羽の全細胞が避けろ!!
…と、こう告げた。
「死ね!」
拳銃で紅羽に向け何発も乱発する女。
「ッ…!!」
紅羽はそれをなんとか躱す。
窓ガラスには弾丸による大きな穴が空いてしまったが。
「あ〜あ。やっぱり下手くそだな〜私」
ケラケラと笑う彼女に、紅羽は近くの壁に身を隠し奥の曲がり角に身を隠す女に一つ……聞く。
「お前が物喰いか?」
重々しく返すそれに、女は暫く黙り…こう答える。
「彼らと約束して、“ある情報”を渡せば銃火器と交換してくれるらしいからわざわざ高い傭兵雇ったのに……まさかドタキャンはないよね〜?」
呆れた様に返す女に紅羽の目は一段と研ぎ澄まされた。
「(こいつが今一番奴らに近い!!)すぐ殺してやる」
氷の様な冷徹さと怒りを混ぜた紅羽な思いが、敵に迫ろうとしていたのである。
投稿日を金曜19時と土曜7時にします。
前作で毎日投稿してたからストーリー進めないとムズムズする体質になってしまった。




