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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
最終章
44/50

File.44 一触即発

【湊】


「大丈夫ですか!?」

病院で起きたテロ。


大多数の人間が殺されてしまったが、何人かの怪我・病人や医療関係者が避難してきたのを見た湊。


すると彼らは病院近くにあったビルに追いやられていた。


「どうしたんですか!?」

医者らしい人に話しかけると。


「お前……涼風湊か……?」

医者の男はとても驚いた様子だ。

世間では完全に彼女は物喰い関係者として見られている。


「何があったんですか?どうして避難しないんですか?」


真っ直ぐな目で医者を見つめ、湊は現況を聞く。


“世間のあの情報は嘘なんです、信じて下さい!”


……なんて説得する暇はない。

今は医者の冷静な判断に賭けるしかないのだ。


「状況は!?」


「……………………」

こいつがあの暴走人間になったり、今回のテロの犯人だったら────


そんな思いが医者の男になかったわけじゃなかった。


でも、無意識か意識的か、誰かに頼りたい気持ちがあったのかもしれない。


「我々が避難をしようとしたこのビル……何者かが占拠しているんだ」


周りにいた警察や警備員が囮役を買ってくれて暴走人間はそっちに行ったが、いつ戻ってくるかが分からない状況。


何者かの占拠。

どうせ冥本の差金だろう。


(僕一人で戦えるかな……)

時間は刻一刻と迫っている。


潜一に任されたんだ、裏社会の人間だろうが傭兵のプロだろうが関係ない。


戦うまでだ。

「僕が────」


[涼風湊(すみかぜみなと)だな?]


“僕が戦います”そう言いかけた時。

硬い男の声が聞こえた。


「あなたは……?」


[達潜一(たつせんいち)の仲間だ]


指揮官は淡々とそう返すと、湊は良く分からなかったが取り敢えず頷く。


[突入は我々がやる]

涼風はここで民間人を守れと指示、彼らはそのまま建物内へと入っていった。


─────────────────────

【企業ビル】


彼らは冥本から雇われた黒服達。

荒事精通の者達で、暴走人間から逃げてきた人がここに避難することを冥本は見越し、ここへ奴らを配置したのだ。


ここのビルは入り組んでいて、他のビルと比べて小さい。


彼ら三人は、ここに一人も入らせるなと指示を受けていた。


「今の所順調だな」

一人がそう語ると。


「そういえば、最近台風が近いらしい」

「え〜やだな〜」


「………………」

そんな中、リーダーの男は常に辺りを警戒。

この状況を打破されないように……足音一つ逃さない為に。


五階建てのこのビル。

暴走人間から逃れるためとして誰もが五階へと上っていくだろうが────彼はそれを見過ごさない。


「……まだ撤退時間まで三十分あるな」

警察の避難誘導が上手く進んでいないのだろう。


外では、医療関係者や患者達がここへ入れずにいる。


すると────


「!!」

ダッ!と駆けるような足音が聞こえた。

黒服達がいるのは、部屋に繋がる縦廊下。


約十メートル先にはエレベーターがあり、そこの曲がり角に階段がある。


「階段から何人かが上ってきた」


「……さっきの音的に“四人”だな」

右の角に二人、左の角に二人。

丁度だ。


三人は銃を構えて姿勢を低くし、迎撃態勢を取る。

この距離なら拳銃で問題ない。


「右上部屋からと右廊下からの援護に気をつけろ!突然出てくる可能性がある!!」


黒服の一人がそう叫ぶと、緊張感の糸が全員綺麗に締まった。


そのまま連続で彼ら(制圧群)がいるであろう角に連射。


顔を出させない。

そうして彼らには彼らの作戦があるのだ。


[このまま敵を固(・)定(・)する]


指揮官が指示を出すと、奥にいるサブマシンガンを持った二人はグッドポーズで返事。


遠近両用のアサルトライフルを持った指揮官と一人は……黒服達の銃弾の嵐が止んだ瞬間に発砲。


「伏せろ!!」

射線を切る障害物へと身を隠す。

そのタイミングを見逃さず、指揮官は回り込み、もう一人は近くにある部屋へと入った。


サブマシンガンを持った一人が右の角に立つ。

縦廊下では彼ら二人が撃ち合う形に。


「もう二人は?」

そうして右奥にある扉を見つめると────


バン!!と一人が扉を蹴飛ばし、勢いよく体を乗り出し障害物辺りを射撃。


右角にいた一人が走り出して扉の方へと向かう。

「そう簡単には行かせ────ッ!!」


左角にいたサブマシンガンの一人が援護。

黒服の反撃を封じた。


「右廊下を警戒する」

縦廊下に顔を出したのは三人。

後一人。恐らく指揮官と思われる人間。


回り込んでくるだろう。


「………………」

待って、


「…………」

更に待って────


「……!!」

黒いフルフェイスが見えた瞬間発砲。

指揮官は曲がり角に身を隠すが反撃には成功した。


「このまま暴走人間が合流してくるまで時間を稼ぐぞ」


他の黒服もそれに頷き、最低限の顔しか出さずに警戒。


これでは制圧群でも撃てないだろう。


……ただ。

膠着状態を変えたのは、指揮官の一言。


[やれ]


そうして少し遅れて、

「!?」


ドン!!という音が外から聞こえた時、窓ガラスを貫通した“狙撃”が黒服の一人を貫いた。


────……さっきの音的に“四人”だな

(“四人”じゃなかったのか!!)


隣にある巨大ビルの適当な部屋からの狙撃。

制圧群メンバーであるN5(ネームファイブ)は狙撃・医療担当。


この状況は相応しい以外の何者でもない。


ガチャンと薬莢を排出し、再び此方を見ている黒服の一人へと撃つ。


「……グッ」

黒服は背中にそのまま撃たれ、地面に倒れる。

逃げ遅れ、死ぬのは確定したがやれる事はある。


《俺を盾にして脱出しろ》

声は出さず、頭の動きと口の動きで黒服リーダーに指示。


リーダーはそれに頷き、縦廊下にある射線に対して彼を盾にする事で射線を切った。


無慈悲なサブマシンガンの連射が彼らを襲うが、ダメージを受けることなく右廊下へ。


そこには指揮官が発砲しようとしたが、リーダーが先に撃ち牽制。


そうして曲がり角にいる事を見越し、素早く体を出して指揮官を捉えた。


[N2!!]

指揮官が叫ぶと、奥の廊下から何かが見える。

アサルトライフルを持った────


そうして撃たれる前に指揮官はしゃがみ、狙撃ラインをはっきりとさせ……


「……チッ」

リーダーの首を撃ち抜くのであった。


[作戦終了]

耳に入れた通信機に手を掛け、全員に連絡。

遺体は後で回収する。


制圧群は誰にも見ないように遺体を部屋へと隠し、開けられないようにした。


[涼風。避難者を中にいれろ]


『は、はい!!』

そうして湊の案内で、ぞろぞろと皆が建物に入っていく。


─────────────────────

【隊長】


彼の名前は秋元。

渋谷テロにてSATの隊長を務めた男だ。


潜一と湊と共闘し、冥本を後一歩まで追い詰めた。

彼は冥本による銃撃で負傷したが、数ヶ月の療養で復帰。


今彼は自身の身分を捨ててまでもやるべき事があった。


────何故?うっせぇな、逆の立場ならアンタだってそうするだろ!!ムカつく事に俺が警察を志願したのは、人を助けたいと思ったからだ!!


自分を助ける潜一に「何故?」と問いかけた時、彼はそう答えたのだ。


SATになろうがならなかろうが、自分は彼と同じ思いであったことを。


そうして怪しい道を迷う事なく進むと、老けた男が店番をしていた。


「オススメはあるか?」


「……アンタ……SATの人間だな」


「“元”な。今の俺はしがないオッサンさ」

老けた男は配慮なしに、秋元へとタバコを吹きかけてくる。


彼も無表情を貫き、返事を待っているように見える。

「どのみち法を破って。今ここにいる」


「…………何故?」

「ここがわかったか?……か?」

「違う」


「……なんだと?」

怪訝な表情となる秋元。

老けた男はタバコを捨てて、彼を見つめた。


「何故銃が欲しい」


「アンタら(裏社会)に合わせて言うと……“義”だ」


「ほう」

興味があるのかないのか。どっちとも取れて、どっちとも取れない表情。


「金なら払う。いくらだ」

時間が惜しいと、急かす秋元だが……この男は全く動じる様子がない。


「いや、くれてやる」


「あ?」


「芳沢さんの命令だ」


「………………?」

どうやら彼女は秋元がここに来る事を見越して何かアクションをしていたらしい。


ただ老けた男の表情には懐かしさも含まれていた気がした。


「まぁ……彼女もお前も、危ない橋を渡っているんだろうな。今も……昔も」


こうして彼は近くにあったガレージを開き、大量にある銃を見せる。


「持ってけ」


「……ふっ」

今ここで銃撃戦をしても足を引っ張るだけ。

悔しいが前線には出られないだろう。


安心しろ潜一。


部屋を出て、大きいバッグを背負い、彼は一言呟いた。


「必ず助けてやる」

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