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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
最終章
43/50

File.43 ワルキューレの騎行


「えっ!?」


潜一の携帯にかかってきた人物は、テレビで有名。そして現時点において“国”の指揮権を持つ。


『勝つ為には……お前達の力が必要だ』

左馬防衛大臣だった。

しかしかけてきた人間はサイバー課の的場から。


つまり……

「サイバー犯罪対策課にいるんですね?」


『本来防衛大臣がわざわざここにいるのは異例中の異例だが、お前の経歴を調べてここが一番早くお前と連絡が取れると分かったんだ』


様々なゴタゴタに襲われつつも、左馬は冷静だ。

港区を襲う膨大な情報を自分なりに対処していたのだろう。


『いいか?警察達と協力して得た情報だ。俺たちは現場には行けない。状況はこうだ!!』


現在、港区中心に起きてる大規模テロ。

冥本は(恐らく)民間人を操り、混乱を生み出している。


『警察達が一掃を狙っている訳だが……一(・)向(・)に(・)減(・)ら(・)な(・)い(・)」


「減らない?」

湊が思わず聞き返す。

強い違和感に襲われる潜一。


「冥本……じゃないな。利用者達か」

手段は全く分からない。


どうやら『吸収』により人を操る術を手に入れたのだろう。


『俺は能力犯罪学に詳しくない。それでも考えつくのは……』


「「根本(冥本)を叩く」」

潜一と湊が同じ事を呟いた。

二人の考えていること、それは左馬も同じ。


『つまり持久戦だ』

粘れば粘るほど、敵は増えていく。

冥本を特定しなければ東京は破壊されるのみ。


全ての武力・知力を以て、物喰いとの最終勝負だ。

ここが正念場。


『全指揮・責任は俺が取る。はっきり言って苦しい戦いだ……でもまだ負けてない』


「……冥本を倒すぞ」

こうして左馬との通信が切れた。

どこかの知らない誰かが戦っている。


潜一も湊も、あくまでもその渦中の一人なだけ。

「それに続くまでだ。

……湊!」


「はい?」


「俺はここから冥本を追う。湊は……ここを守ってくれ」


潜一は真っ直ぐな目で彼女を見つめる。

この状況を変えるためには、湊の力と潜一の力。


どちらも必要なのだ。

「……潜一さん……いや、やっぱりいいです。倒して下さい。冥本を」


「あぁ」

静かなやり取りの後、互いに背を向けて走り出す。

湊は避難誘導、潜一は……最後の戦いの為に。


─────────────────────

【冥本】


利用者殺害の為、港区近くの場所をゆっくりと歩く冥本。


持っているのは拳銃のみ。

日本にいる利用者には丁度今日、ここ辺りに集合してもらっていた。


壊滅させるなら今しかない。

「あぁ〜面倒くせぇ……でも顔バレてる以上消さないとな……」


日本がどうとか全く関係ない、この薄暗い場所でわざわざ戦わなくてはならないとは。


……これからの物喰い活動では必要な行為。

ゴタゴタ言わず、さっさと終わらせてしまおう。


「ハロ〜!」

扉を開けると、SAT並に武装した裏社会の厄介共が。

どうやら……


「あら? 

────おっと!!」


早速撃ってきた。

冥本はすかさず物陰に隠れ、拳銃を構える。


集団という“群れ”に対する対策はたった一つ。

そうして彼は銃弾の嵐が止まった瞬間に駆け出した。


一人だけショットガンを持った人間がいたため、冥本はそいつの腕と足を撃ち抜く。


「ぐわっ!?」

倒れそうになった所を滑り込むように、地面と敵の間に入り込む。


銃口が一斉に冥本へと向くが……


「待て……撃つなぁ!!」

撃たれた男が叫ぶと、全員の動きが止まった。

誰も撃てない。


敵戦闘員は四十名辺り。

そして階段上に冥本を見ているのがリーダーだろう。


「クソ……もう撃つぞ!!」


「待ってくれぇ!!」


「うるせぇよ」

地面に落ちていたショットガンを拾い目の前にいた、武装していた人間の首を狙って撃ち殺す。


自身の肘を、盾にしていた男の首に強く当て気絶させ、しゃがんだ状態から立ち上がる。


後ろにはちゃんと男が盾になる。

(撃てねぇよな。残念ながら)


どんどんヘッドショットで殺していく中、流石に近づいて発砲してくる輩が。


「!!」

パン、という音が響いた時ガクンと膝が落ちた。

体を支えていた膝が撃たれたのだ。


意に介さず撃ち続けるも、背中が猛烈な痛みに襲われ────そのまま地面に倒れた。


倒れる寸前に、死体に触れたのだが……

(臓器か……)


体が全く動かない。

これで終わり。


「……『吸……収』」


そんな冥本の想いには能力は応えられず、これで死ぬ。


“人は”これで死ぬだろうが。

なら……“怪物”は?


「もう終わりだ。一応、頭を────」

リーダーの男がそう指示をしようとした時、怪物が目を覚ました。


「どうも〜」

冥本が集団の群れがなくなる前に即座に発砲。

死に近い形からの復活。


もう“盾”はいない。

利用できる“吸収対象のみ”だ。


「殺せ!!」


冥本の体に何発も撃つが、彼は止まることなく人を殺していく。


合間合間に『吸収』という単語を放ちながら……

彼は死ぬ寸前、ヘッドショットで殺した遺体に触り能力を発動。


体は『吸収』という名の通り、撃たれた箇所が数秒で治る。


今まで自分の体にしか『吸収』は発動できなかったが、紅羽を取り込んだ事によりできるようになった。


ドガンドガン!!……と、ショットガンの銃声が何度も建物内に響く。


何度撃っても死なない怪物に、どうすればいいのだろう。


何度も。

何度も。

何度も何度も。


裏社会の連中は何度も冥本を撃ち続けては殺しかけているのだが、誰もトドメを刺すまでには至らなかった。


約十五分後……


「さて、残るはお前だけだな」


た(・)ま(・)た(・)ま(・)日本にいる利用者達がここに集まったのは、訳があるだろう。


「大方、俺が不要になった利用者を消す事をどっかで知った。そんな所だろう?」


利用者のほとんどは、自分が物喰いに一方的に利用される駒である事を知らない。


対等な協力者である事を誰もが盲信している。

「ま……まて……私にはまだ利用価値がっ────」


特に返答する事なく冥本は即……射殺した。

これで日本にいる邪魔者は消せたはずだ。


夏休みの宿題を最終日で終わらせたような気持ちで、外の様子を眺める冥本。


「よし……どうやって消えようかな」

適当に建物を漁ると、一つの“ポスター”が目に映った。


「へぇ……」

またまた港区に行く必要がありそうだ。

お台場に……逃げる為のカギがある。


「よし」


─────────────────────

【潜一】


「どこだよ冥本!!」

スマホで、的場達から送られてくる情報を素早く脳に叩き込む潜一。


防犯カメラの情報によるとここら辺りのはずなのだが……


「探しても探しても出ねぇなクソッ!」

彼の背丈は平均的な日本人の身長より遥かに高い。

そしてこの港区近辺にも大量のビルがある。


悪い事をするには充分すぎる場所しかないのだ。

バッグからパソコンを取り出し、ここら辺りの防犯カメラの画面情報を二十四分割してハッキングした。


小さい画面を何度も再生していくと…………


《潜一さん見つかりました!》

「いた」


サイバー課の後輩、櫻井と同時に冥本らしきものを発見。


ようやく、痕跡を見つけた。

どうやら追跡されていることすら気づいて────


(冥本は恐らく、追跡される可能性についても何か対策を考えてる。というか……まぁ本人が強いしな)


恐らくもう冥本が入っていった建物に、奴はいない。

それでも調べる価値はある。


櫻井にありがとう!と返し、何かバイクなどの“足”を探しながら走る。


今まで鍛えてきたはずなのに、拳銃とパソコンが重く感じた。


「はぁ……追いついてやる」


数分歩いて到着。

着いた場所は、ビルとビルの路地裏にある建物。完全にここはヤクザのアジトですと言いたげだ。


(ひとまず、ここを五分以内に調査してさっさと冥本を追いかけ────)


曲がり角を最短で曲がろうとしたのが裏目に出た。

冥本による暴走人間……


「痛(い)ッ……!!」

反射的に振り上げられた、硬質の爪により、潜一の腕が引っ掻かれた。


潜一も反射的に躱したが、かなり痛い。

痛みに感情を支配されている場合じゃない。


反撃をしなければ。

無傷の方の腕で、拳銃を抜き頭を撃ち抜いた。


まだ奥に何十人もいる。

先程の街にはまだ民間人がいる以上、下がりすぎると危険だ。


このまま交戦しなければならない。

ドン!と何度も連発し、ヘッドショットで鎮めていく。


だが……

「ダァっ、クソッ!!」


横から現れた暴走人間に気づかず拳銃を吹き飛ばされてしまった。


その勢いのまま尻餅をつくと、もう逃げられない。

「あ、ァァァァ……アッ!!」

暴走人間の声。


(クソッ……やばい……!!)

振り上げられる腕が、スローモーションに見える。

完全に失敗した。


「ッ……!!!」


刹那。

バキン!と背後から銃声。


そうして建物から出てきた暴走人間を鎮めた。

湊?あり得ない。警察?ならこんなに静かか?


(そう言えば芳沢さんが、やる事があると言っていたな────)


つまり……

「ハッ」


ゆっくり立ち上がり、軽い笑いが溢れた。

この東京の街並みに相応しくないほどの、完全武装。


そのフルフェイスからは表情が全く読み取れない。


[達潜一。作戦は?]

硬い声……“軍人”の声だ。


五人の部隊。指揮官と思われる人間以外は三百六十度を警戒している。


「……戦いは完全に持久戦。でもこのまま奴がつまらない陣とり合戦をやるとは思えません。必ず何か仕掛けてきます」


[分かった]


「俺は冥本を追います。協力してほしいですけど、作戦の都合上……出来る限り俺一人の方がいい。涼風湊と合流して下さい!」


制圧群という貴重な戦力を、会えるか分からない冥本に費やすのは違う。


[分かった]

どうやら芳沢の献身は、状況を大きく揺らがしつつあるらしい。


民間人を守るため、彼らは動く。

[N5(ネームファイブ)とN3(ネームスリー)は後ろに続け!!]


そうして指揮官は語った。

[作戦開始。目標は暴走人間の一掃と利用者・協力者の一掃だ]



日曜はお休み。

月曜19時に投稿します。

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