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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
最終章
41/50

File.41 対能力制圧群

【二週間前:東京・月島】


店の中は、鉄板とヘラがぶつかるカンカンという音が鳴る。もんじゃが焼けるパチパチとした乾いた音も。


「分身(デコイ)の立体生成?可能なのか?」

冥本は熱々のもんじゃを食べながらブレンに聞く。

ビールを飲み干しながら「あぁ」と返すブレン。


「“四体”までな。お前が取り込んだ柊紅羽の血から能力を昇格させた訳だが……」


「まだ飲むか?」


「まさかお前の腕にある血を飲まされる羽目になるとはな……二度とごめんだ」


美味い血なんていうものは存在しないが、余程不味かったのか、もんじゃを本当に美味そうに食べる。


もんじゃはかなり熱く、互いに咳き込みながら食べていた冥本達。

「仮にそれが出来るなら、作戦の幅が広がるな」


「冥本。医者は上手くいったのか?」


「ぼちぼちだな」

ビールを注文してゆっくりと飲む。


「協力者は?」


「駄目だな。ヤクザとマフィアは皆断った。国家に喧嘩売るのは割に合わないしな」


苦笑する冥本。彼らは何か別の手を考えるのだが……

やはり何も浮かばない。


「なら────“アレ”でいいんじゃないか?」


「おぉ……!なら作戦が綺麗にいくな!!」

実験と検証を重ねる為、冥本とブレンは熱々のもんじゃを急いで平らげ、店を出るのであった。


「お、数少ない“協力者”からメール来たぞ」

スマホをブレンに見せる。

内容は────


“標的”は大東京ホテル十四階にて。

「よし。行くぞ」


─────────────────────

【国会議事堂】


「足立官房長官。氷室総理は?」

彼は特異管理委員会のリーダーである足立の父。彼は政界にいる中枢の一人。


財務大臣が彼にそう聞くが……

「さぁ?私にも……?」


辺りを見渡すと、作戦会議に必要な防衛大臣……左馬もここにいない。


「冥本は死んだ。もういいんじゃないんですか?」

議事堂に集まったのは、内閣総理大臣臨(・)時(・)代(・)理(・)達。


集まったのは財務大臣、国土交通大臣、官房長官、外務大臣の四名である。


左馬と氷室がいない。

「国家の緊急事態なのに……何をやっているんだ?」


国務大臣達が騒いでる中、足立が立ち上がった。

そうして背中から出したある物に、全員はそれに釘付けとなる。


「官房長官!?」

不敵な笑みを浮かべる足立。

黒金色の拳銃を向ける中、足立は首元にある仮面のようなものを剥がした。


剥がした先に出た男は────

足立の太った体ではなく、どこか“筋肉質”の体へと変わっていく。


「随分と簡単に入れたな。議事堂」

物喰い幹部であるブレンの姿だった。

彼の能力はデコイ。変装もお得意なのだ。


「ま!待て────!」

次々と臨時代理達を射殺。


議事堂付近でテロが起きた以上、警備のほとんどは外にいる。


中にいる警備達が戻ってくる前に事を起こすのだ。

「さて、氷室はどこかな?」


ブレンは中にいる警備を殺しながら、議事堂にある執務室へと入るとそこには……安っぽい酒を飲んでいる氷室の姿が。


「来たな。物喰い」

公務中には絶対出ない穏やかな笑みを浮かべる氷室。

酒瓶は半分以上なくなっていたが、酔っ払った様子はない。


「へぇ……殺した二人の大統領は命乞いから始めたのにな」


面白そうに呟くブレンと、楽しそうな様子の氷室でどこか明るい雰囲気になっていた。


「左馬は?」


「あいつは俺が違う場所に送っておいた。残念ながらここにはいない」


「……なるほど」

そのまま拳銃を構えて、ブレンは辺りを確認する。

小型カメラも警備もいない。


完全に……二人きりだ。


「この酒知ってるか?」


「知らん」

あっけからかんと返す。


「柊家の酒だ。お前達のせいで酒造りが途絶えたが。中々いい酒をしている」


すると氷室は酒を全て飲み干し、話を続けた。

「総理になって……国の変革に努めてきたが……まぁそう上手くはいかないな」


いかんせん左馬以外の大臣の選出を間違えたと感じる。


「奴ら一人一人が政界で各々の発言力がある嫌な奴らでな。お前達に殺させてもらった」


もう自身の死は確定。

物喰いは死ぬまで氷室を狙うだろう。


なら政界に漂うガンは消すべきだ。

「足立は殺したのだろう?」


「大東京ホテルにいたからな。乗り込んでバンよ」

“協力者”によって官房長官の場所は特定できた。

関係者を装って入るのは簡単。


「ここまで。俺達はお前の手の中で転がされていた訳か」

自嘲気味に笑ったブレンに「そうでもないさ」と返す氷室。


「………………」


────将来の夢?将来は総理大臣になって国を変えてやりますよ。


貧困層に生まれた氷室は、自分の力で貧困を解決させたい気持ちが昔から強かった。


学生生活はいい人達に囲まれていたが、政界に足を踏み入れてから困難な連続。


国を変える事は物喰いのせいで不可能となったが……

「俺の遺志は必ず誰かが継承する。その為にはお前達みたいな邪魔ものを殺しておくべきだ」


「それに対する答えは……かかってこいだな」

氷室の胸に拳銃を向ける。

彼の表情には焦りも恐怖もない。


(左馬、芳沢……先に還らせてもらう)


数秒後。

実際にそう聞こえた訳でないのに、議事堂中にパン!


……と乾いた音が聞こえた気がした。


九月十二日・十二時四十分。

氷室蓮司総理大臣は……テロ組織物喰いにて死亡。


─────────────────────

【警視庁:芳沢】


国会議事堂の襲撃は一段落した。

戦闘機突撃→冥本突撃→死亡から何も音沙汰がない。


「!!」

すると、芳沢の携帯から通知が。


「どうした」


『氷室総理が……死亡しました』

警官の一人はそう語った。

芳沢もこの職に就いて数十年。


「………………」

生まれて初めて頭が真っ白になった気がする。


『芳沢さん?』

「…………」

『あの……?』


「…………」


「…………」

電話している彼は、芳沢の顔は見えない。

返ってくるのは沈黙のみで……


「分かった」

こうして電話を切って、指示を出す。


「楓」

公安部長としての責務を果たす。


「はい?」


「私はケジメを付けてくる。頼んだぞ」


「……はい!!」

彼女も芳沢と同じ現場上がりの人間。

頼めるのは彼女しかいなかった。


こうして移動する事数分。

拳銃を持ち、真っ直ぐ前を見つめる。


【特異管理委員会】


「来たか芳沢」

官房長官で、父である人間が死んだと言うのに彼は何も感じていない様子だ。


ここにいるのは芳沢と足立と少数の取り巻きのみ。

つまらなさそうに「あぁ」と返す芳沢。


「何故競売が日本で続いていたのか。私なりに調べさせてもらった」


「…………」


初めてこいつが怪しいと感じたのは、紅羽宅での作戦会議中。


────なんで冥本はここでやるんだ?


────見て見ぬふり。もしくは何者かによって隠(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)


────……!!

その一言に芳沢は何かを考えた様だが口には出さなかった。


「足立。お前は競売が始まる時……いや、もっと前から“物喰いと結託していた”な?」


怒りをそのままぶつける芳沢に、一切こちらに振り向かない足立。


競売の違法性を隠蔽したのはこいつだ。

「父も……彼らと結託していた」


「……なんだと」


「最初の作戦は、物喰いに日本を破壊させて、大臣の座に就く事だったが……」


それではつまらないのだろう。

目指すのはもっと上。


「総理大臣か」


「氷室総理は……盤石だ。一切隙がなかった」

いくら物喰いでも、彼らを崩せるかと不安だったが、なんとかなった。


「これでチェックメイトだ。芳沢……!これで────ッ!!」


拳銃を向けて、殺意を向ける芳沢。

「国家転覆を企てたのは大罪だ。一人の警察として……ここで終わらせる」


「ッ!!……だがどうするつもりだ?内閣の人間は全員死んだ!!終わりだろ!?」


足立には……逃げられたら困る。

自身の手を汚さずに、なんの罪もない人達に刃を向けた罪は大きい。


無言で足立の足と腕を撃ち抜いた。


「う゛おあぉぁぉ!!!」


「このクソおん────」

芳沢は素早く体を切り替えて、銃を出そうとする取り巻き達の腕を撃ち抜く。


今こうして何人もの人間が殺されている中、こいつらはのうのうと生きている。


「う……クソ……畜生共が……」

取り巻きが落とした拳銃を拾い、芳沢に向けた足立。


(次行くところは左馬の────)


乾いた音が狭い室内に響く。

真顔で脇腹に目を向けると、血がポタポタと流れる。


「…………フン」

足立の拳銃を吹き飛ばし、応急処置を済ませてスーツのボタンを閉めた。


「芳沢さん!!」

連絡した後輩達が部屋に入ってきた。


「連れて行け。私は左馬の所に行ってくる」


─────────────────────

【左馬と芳沢】


ある場所で、二人はまた出会った。

辺りには避難の影響で誰もいない。


遺された幼馴染二人だけ。


「……芳沢」


「左馬。もう分かっただろ?これで残ってるのはお前だけだ」


指揮系統の麻痺。

間違いなく物喰いのシナリオ通りに話が進んでいる。


「対能力制圧群を出動するんだ」


「……俺は」

真っ直ぐな目で左馬を見つめる芳沢と、悩む左馬。

彼女の顔には汗ひとつない。


「違法の部隊なんだ。俺一人の立場なんてどうでもいいが、協力・訓練に加わった陸幕長や空幕長の身分に関わる」


彼は拳を強く握る。

自衛隊の特殊部隊────それを出すには……


「今回のテロに関しては、俺が指揮を取ろう。だが……制圧群は……彼らみたいな英雄を犯罪者にしてしまう」


「…………左馬」

彼は自分の事よりも、子供の頃から大好きだった自衛隊の彼らを気にしていた。


「ん?」

左馬の携帯から一つの通知が鳴る。

まさか────そんな思いが彼女を襲った。


『左馬防衛大臣……』

硬い男の声。

電話越しでも圧を感じる。


『氷室総理大臣、陸幕長、空幕長から承認されました。全員準備が整っています』


淡々と呟く。

(氷室……俺をここに置いたのは、俺に任せる為なのか?)


恐らくそうなのだろう。

まさか本当に……命を賭けてまで……


(そうだな。芳沢)


そうして左馬は口を開く。

「柊紅羽が掴んだ尻尾を、必ず離すなよ。

────出動」


「左馬……」


「お前の言う通りだ。俺達でできる事をしなくては」


─────────────────────

【???】


完全に武装した男達“五人”

銃も整備済み。


抜かりはない。

フルフェイスを深く被り、後ろの隊員に指揮官は語る。


[行動開始]




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