↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
最終章
40/50

File.40 ACE

最後の戦い

【東京湾岸国際医療センター】


港区近くにあるこの大規模病院。

人数は医療スタッフを合わせて五千人以上。


「あの……娘は大丈夫なのでしょうか?」


「脳に腫瘍が残ってます。このまま手術をして、それを取り除きます」

医者の男は淡々と告げ、心配そうな母親に状況を伝える。


「娘を助けて下さい……!!お願いします……!!」


「任せて下さい」

男はかっこつけるように眼鏡を押し戻すと、そのまま手術室へと向かう。


彼女はどこか安心したような、まだ不安があるような顔をしていた。


「よろしくお願いします。冥本先生……!!」


こうして冥本と言う名前の医者は、娘と医療スタッフと共に手術室へ。

最後までその姿勢を母親は見つめ続けた。


「大丈夫ですよ。冥本先生は凄腕なので」


「凄腕?」

調子が良さそうな看護師の女が母親に話しかける。


「確か……北海道の自衛隊の人がここに来たんですけど、冥本先生が元気フルパワーにしたんですよ!」


「そうですか……!」

冥本は、ここで何をするつもりなのだろうか。


─────────────────────

【潜一陣営】


内閣の選ばれた人間が議事堂に集まる中、潜一達は千代田区付近で待機していた。


「…………」

本当に物喰いが何をするのか分からない。

今は可能性のある所で待機するのみだ。


「湊」

車の中で口を開いた潜一はある物を湊に渡す。


「これは……!」

渡した物は真っ黒な拳銃。


「前にも言ったよな、“コレ”を取ったら全てが終わるまで普通の学生には戻れないと。もし……もし今回の戦いで冥本を逃したとしたら、お前と俺の戦いはここまでだ」


「え?」


「海外とかに逃げられたら、俺は奴を追うが、湊……お前は日本に残って“普通”の生活をしろ」


流石に冥本や海外の人間から自分の身や湊を守りきれる自信はない。

日本は警察や政界とかに味方は作れたが……


「……はい」

そうなったら自分では何もできないことを察したのだろう。

彼女は文句を言うことなく受け入れた。


「ハッ、安心しろ。ここで勝つ」


「……!はい!!」

ここで終わらせる。

そして────


「冥本は今日、必ず東京の“どこか”で“何か”をする。ですよね?」


「あぁ、絶対だ。(さぁ、どうやって暴れる)」

物喰いが起こす大規模テロ。

その全てが不明な以上、犠牲は避けられない。


だからこそ止める。

止めなくてはならないのだ。


(でも議事堂付近は警察が特例で守っていたはず……どうするつもりだ?)

─────────────────────

【千歳基地】


滑走路にて一つの戦闘機が離陸態勢に入っていた。


『今すぐ降りろ!F-15の離陸は認められていない!!』

男の通信機から指揮官と思われる人から怒号が飛ぶ。

その通信に一切応えず男はどんどん離陸態勢を整えていく。


『熊野!!何があった!?』


「…………」

“熊野”という自衛隊員はそんな指揮官の声を無視。

聞こえていないレベルだ。


『熊野!!』


「う……あ……あぁ……」

帰ってきたのは、言語にもならない言葉だった。

彼は渋谷に旅行へ行った時、テロに巻き込まれて入院。


“ある医者”に治療された。

F-15に近づいた時に彼の様子が急変したのだ。


「あぁぁ……」

そうして彼は戦闘機と共に離陸。

基地には風を切る音のみが残った。


墜落まで……

────────────────────

【潜一陣営】


『速報です!北海道にある千歳基地から戦闘機が────!』


「!?」

車の中でニュースを見ていた潜一達は驚きで画面を凝視する。

このタイミングでこうなると言うことは確実に冥本絡みだろう。


「でも、北海道でしょう?何時間も……」


「約十五分だ」


「……嘘ですよね?」


「マッハなんて日常で体験しないから当然の反応だな。でもそれくらいに速いんだ」

速報といっても数分〜数十分の遅れはある。


「つまり────」


つまり……と言おうと潜一が口を開いた時。

キィィィィ!!!!と空気を切り裂く音が上空を走り、通り過ぎていった。


「はっ!?」


「冥本────お前……!」

潜一は急いで車から降りて、双眼鏡を通して議事堂を見る。


────でも議事堂付近は警察が特例で守っていたはず……どうするつもりだ?


「!!」

全部吹き飛ばすつもりなのか。


空気を切り裂く音の次は、巨大な何かが爆発する音。

『戦闘機です!!戦闘機が……戦闘機が議事堂“前”に墜落しました!!』


近くにいたアナウンサーが叫ぶと、現場は大混乱らしい。テレビの中でもそれが分かるくらいに騒がしい。


「潜一さん!戦闘機が……!」


「あぁ。見(・)た(・)よ」

漸く作戦開始という訳だ。

一発目からこんな大規模な……


「まだだ。まだ何か────!」


「潜一さん……」

心底驚いた顔をして、スマホを潜一に向ける。


『……煙の中から……人です……人が出てきました!!』


その男は“武装”をして、ライフルを片手にカメラと目を合わせていた。


「……冥本」


何故?どうやって?

様々な疑問が浮かんでは消える中、たった一つの考えに辿り着く。


「総理の暗殺は……初めから過程に過ぎないと言うわけか!!」


段階的にテロの規模を上げる物喰いの性質上、総理を殺して終わりはあり得ない。


二段階目が渋谷のテロだったのだ、三段階目……つまり最後のテロがこれだけで終わるはずがないのだ。


(なんだ……何が引っ掛かる?こいつが冥本?本当に?)


冥本が映るスマホの画面を凝視する潜一。

もはや勘にも等しい違和感は今もなお、彼の心を揺らし続けていた。


【議事堂前】


ライフルを持ち、完全に武装した冥本の姿。

戦闘機で警備を一掃して正面での登場だ。


「いたぞ!!あいつが物喰いだ!!」

爆風の被害を受けなかった第二・第三の警官達が集まってきた。

サブマシンガンを向けられ、四面楚歌という言葉が似合う現状。


「撃ちますか!?」


「まだだ。奴が何をしでかすのか全く分からんからな」

銃口は完全に冥本へと向けられている。

そんな冥本は沈黙を貫き、降伏することも抵抗することもしない。


そうした時、冥本は銃を地面に置き手を頭の後ろに置いた。

「!?」


判断を間違えたのか、これも作戦か────

アサルトライフルは地面に適当に置かれ、降参の意を示しているのだが……


「近づいた瞬間撃たれる可能性も……」


「……このまま確保すれば終わる」

そうして上官と思われる人間はゆっくりと冥本へと歩く。

銃を置いて、姿勢を低くし、手を頭の後ろにやっている冥本と銃口を向ける上官。


「全員!そのままこいつに銃を向けたまま警戒するんだ!!」


銃を片手に手錠を冥本へと掛けようとした瞬間。

ドン!!!!と後ろの建物が爆発した。


「なっ────(外務省が……!!)」


一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、警官達の視線が建物に向けられる。

誰も冥本なんて見ていない。


刹那。

冥本は上官の銃を取り、上官の後ろにいた警官を射殺。


「!?」

これで囲まれている状況は回避。

上官を盾にしている以上誰も撃てないだろう。


「今の一瞬で……お前は何者なんだ?」


「………………」

彼の問いに対しては一切応えない。

そんな事を考えていた時に冥本は上官の足に発砲。



「グアッ……!」


パッと手を離し、上官と共に地面に倒れる。

先ほど落としたライフルを拾い、倒れた上官の反対側にいた警官を次々と射殺していく。


「クソッ!!」

「待て!撃つな!!」


冥本を囲む際、彼に近づいたのが裏目に出た。

今もバキン!!と音を鳴らして撃ち続ける冥本を撃てない。


「……撃て撃てぇ!!」

上官がそう叫び、それに呼応されるように発砲する警官。


そうして上官ごと冥本を撃ち殺したのだ。

「やったか……?」


──────────────────────

【潜一陣営】


『潜一。冥本が死んだぞ?』

堺からの通信。

警察が抵抗する冥本を殺した。


「はい……それでもあんな事、冥本がするか?」

そもそも戦闘機の爆風から冥本は現れた訳だが……


「戦いたがりな奴だけど、意外と慎重だ。なら…………“偽物”?」


「議事堂に行きますか?」


「……湊。まだ何(・)か(・)あ(・)る(・)。警戒を絶やすなよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。