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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
最終章
38/50

File.38 ACOG

【物喰い】


「冥本?お前何してんだ?」

彼は自身の拳銃を眺めながら、これからの作戦でも考えているのだろうか?

どこかぼ〜っとしていた。


「ログロの事は……残念だったな」


「……あぁ」

遺体すら回収出来ず、常に軽薄な冥本とブレンでも少しだけ落ち込んでいたのだ。


最後の戦いの為、色々準備していた冥本達だがその前にログロの墓を作った。

残念ながら骨はないのだが。


「………………」

拳銃を眺め、空をただ見つめる。

残りは冥本とブレンの二人のみ。


「さて!!地獄にいるあいつに面白いもの見せないとな!!」

“今”も“昔”もやる事は変わらない。


─────────────────────

【幼少期:冥本】


アメリカで生まれた冥本。

無論本名は冥本なんかではないが……それは誰も知らない。


特に不自由ない生活を送っていたが、五歳になった時にその生活は一変した。

「あら?」


母はいつも積み木やテレビを見ている息子がいない事に気づき、彼を探す。

父親もそれに混ざり、探したのだが……


一切彼は見つからなかった。

「もしかして……」


父親は家の壁を開けると……

「ほら!!いた!!」


いたずらっ子を懲らしめた。とでも言いたげな表情で父は彼を見る。

母は安心した様子だ。


ただ、父の顔が少しだけ険しくなった。

「……それをゆっくり置くんだ」


その光景は、拳銃を握った“彼”の姿が。

ちゃんと引き金に指を掛けていたのだ、両親の顔が少し怖くなっている。


「お願い……良い子だから……ね?」


「………………」

パンッと、軽い銃声が家に響く。

硝煙の香りと、大きなものが倒れた音。


そして薬莢が落ち……母親の目は大きく見開いていた。

「それを置いて!!クリ────」


彼の耳に火薬が弾けた音が痛くなるほどに反響する。

大きく倒れた母。

銃口から出る硝煙。


「…………」

父を見て、


「…………」

母を見て、


「?」

この時の“彼”は子供の語彙ながらにこう思った。

頭(・)を(・)撃(・)っ(・)た(・)ら(・)死(・)ぬ(・)ん(・)だ(・)な(・)……と。


「なるほど〜」



─────────────────────

【現在】


「さて、下ごしらえだ。ブレン!そっちは成功したか?」


「あぁ。“三回しか使えない”けどな」


「いや〜まさか『酩酊』が使えないとはな〜」

冥本は残念そうに語る。

紅羽を吸収したのはいいが、あくまでもそこまで。


「恩恵を得られたのは、柊家の……能力の性能を増進させる“血”による『吸収』の強化のみ!残念!!」


「協力者は?」


「う〜ん、ぼちぼちだな」

すると冥本は拳銃を適当な場所に置き、何か考えついたのか、ワクワクした表情で呟く。


「ブレン!俺ちょっと医者になってくるわ」


「……もう驚かん」

ログロの墓の前で楽しそうに大笑いする冥本の声がただ空に響くのみだった。


─────────────────────

【特異管理委員会】


暫く再開なんてしていなかったこの委員会。

厚生労働省の人間、政治家と“良い関係”な企業の男達。


警視庁の代表として芳沢は再びそこへ向かった。

(いつ物喰いがテロを起こすかも分からないのに、他にいるかも分からない能力者に気を向けている暇はあるのだろうか?)


何を敵と判断したいのか。

本当に分からない。


「警視庁から、芳沢君。能力者について────」

前回の会議から、政治家の足立はより偉そうになった気がする。

この委員会の代表を務めていた。


太い眉と、気味の悪い歯並び。

もう少し清潔感を出せないものなのか。


「それについてですが我々から一つ。様々なサイトでも物喰いと思われる者がテロの声明を出しました。これは明らかに日本政府への宣戦布告です」


冷静に淡々と呟くと、他の政治家達が騒ぎ出した。


「……は?」


化けの皮が剥がれるのが早い。

丁寧な様子など全く見られない。


「…………?」

無理だと呟いた足立。芳沢はそれに対して違和感を抱いた。

その様子は────────


「ま、まぁ……そんな事より、皆さん知ってるか?“対能力制圧群”っていう部隊を」

下衆な笑みを浮かべた足立は、政治家などの協力者達一人一人に目を向ける。


怪訝な表情の彼らに、足立は続けて話す。

「噂によると氷室総理・左馬防衛大臣・自衛隊上層部達が作った部隊らしい。“コレ”隠蔽するべきか?」


「待ってください」

会話の内容が対応策から不祥事に行こうとするのを、思わず芳沢が口を挟む。


「そんな事より、物喰いの対抗策を……」


「あのね、宣戦布告っていっても何をするつもりなの?」

いやらしい笑みを浮かべる足立に、そんな彼を睨む芳沢。

癪だがそれに対する反論は全くない。


潜一の読みはあるが、それを情報として話すには些か心許ないのだ。


「……ないでしょ?それよりも総理大臣達が国会での手続きを踏まずに特殊部隊を作ってる。……重要な問題でしょ」


「それは────!」


「第一に、制圧群なんて書いてるけど、それが能力者による暗殺部隊なら?いち早くこれを公表するつもりなんじゃないの?」


氷室と左馬の正義感と愛国心は本物。

制圧群はこの国の為にあるだろう。


こうして会議は終わった。

不毛な政治家達は互いに足を引っ張る図。


「……………」

芳沢はある人に電話する。


『はい?』

女の声。

秘書か。


「警視庁の芳沢だ。指定した場所と時間に……左馬防衛大臣を呼んでほしい」


『一応、連絡しておきますね』


「あぁ。頼んだ」



────────────────────────

【夜:???】


ある和風の屋敷に一人の男が佇んでいた。

「…………」


机に置かれた料理や酒に一切手に付けず、目を瞑ってただ待つのみ。


「お連れ様がいらっしゃいました」

和亭の女が呟くと、男は目を開けて扉の方を見る。

そして女将と男を呼び出した人が。


「……老けたな。芳沢」


「お前と氷室には言われたくないな。左馬」

左馬の向かいに座った芳沢。


数十年ぶりの会合に、二人は互いに睨みを利かせる形となった。


「さて、ここに呼び寄せて何のつもりだ?特異対策委員会?だったか?大方足立が暴れてるんだろ?」


「知っていたのか…!?」


「父親が“官房長官”だからな」

憎たらしげに呟く左馬。


同じ内閣の仲間……とは思っていなかったが、その様子だとねちっこさは親も子も同じようだ。


「噂…というか、もう本当の事だろ?対能力制圧群」


「……仮にそうだとしたら……どうする?」


「近々に物喰いがテロを起こす。今までと比べものにならない大規模のものだ」


真っ直ぐと、そして嘘なしで答える。

「対能力制圧群を出動させてくれ」


「俺の答えはシンプルだ。断る」


「左馬…!」


「制圧群は非公式の部隊だ。国民の前に公開したら俺や氷室だけじゃない。陸幕長や空幕長に危険が及ぶ」


自衛隊の特殊部隊である以上、彼らを通さなければ部隊は作れない。


二年前。左馬は陸幕長に制圧群を創設・指揮を命じた。


情報というのは必ず漏れるもの。

確実に隠せるものではないのだ。


「どうせ足立から息子に情報が伝わり、今に至るんだろう」


「奴の狙いはなんなんだ?」


「……まぁ、俺や氷室などの人間を政界から押し出したいんだろう」

日本酒を軽く飲み、溜め息を吐きながら左馬は答える。


「国家の危機だぞ!?」


「その時が来たら……な」


「“かも”、“しれない”と言ってる場合じゃ……」

芳沢が強く食い下がるのを見て、スルーを貫こうとした左馬だったが流石に違和感を覚えた。


「……今度氷室と会ってくる。あいつの事だしお前みたいに説明したら……もしかして……な」


「左馬……」

物喰いを侮っている訳ではない。

でも、本当に国家へ壊滅的ダメージを与える事などできるのだろうか。


「決断するのは俺じゃない。まぁ……俺も含まれるが、最終決断するのは氷室だからな」


そうして立ち上がり、彼はどこかへ行ってしまった。

ただその姿を見つめる芳沢を残して……













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