File.30 WHEN
東京グランドアリーナ。
スポーツ大会や大規模イベントなどに使われ、数々の有名人などがここでライブなどを行っている。
そんな“輝き”と“熱”があるこの場所が、血みどろな戦場と化す。
班分けは……
紅羽(単独行動)
潜一と湊
特異対策課四名。
全員が真っ黒なスーツに身を包みその裏社会の人間達に紛れ込んでいた。
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【潜一・湊】
(…流石に圧が凄い…)
怖い顔をした男達が揃っている。
ここにどれくらいの悪い人が集まっているのだろうか。
「湊。キョロキョロすんな」
「しちゃいますよ!そもそも僕はここに縁なんてなかったんですから」
元の顔が中性的で筋肉質な湊だから傍から見れば馴染んでいるように見えるが、湊本人からすれば怖い。
いつ戦いが始まってもおかしくはないのだから。
それと…湊から見た潜一だってキョロキョロしているように見えるのだが……
「…まぁそうだな。ならせめて建物の構造でも覚えておけ」
「あぁ!だからさっきまで!」
「まぁな」
そうして潜一と湊の二人はとにかく様々な場所を回る事にした。
物喰いが主催となる人身・武器売買まで後一時間。
まだ“競売”は始まらない。
今はまだ。
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【特異対策課】
「流石に広いですね…!」
晴菜が驚いたように呟くと堺は会場のおおよそが載っている、会場案内のパンフレットを黙って見ていた。
全体的に白を基調とした会場内。
ホールも大小あり、様々なスポーツにも対応している訳だが……
「競売を行うのは恐らく“第三ホール”だな。ルシアの情報によると円形に囲まれた会場で、ログロはそこに現れるだろう」
迅の一言に千景も頷く。
彼らの作戦は極めてシンプル。
セキュリティ室の襲撃と確保だ。
その為には第三ホール内と会場。両方の監視が必要となる。
「ルシア。そっちはどうだ?」
先に潜入させたルシアが、第三ホール内を監視。
彼女が此方側の人間である事は物喰いにはバレていない。
……バレてないと信じたいが。
『特に何もないわ。でも…今日は変な感じ…』
「変な感じ?」
『えぇ。今まで私も競売には何度も参加しているけど今日はなんか……変な空気よ』
「…分かった。そのまま監視を続けろ」
こうしてルシアとの通信は切れた。
堺は顎に手を添え、考え込む姿勢を取る。
「変な空気…ですか」
晴菜の一言に堺は、
(冥本やブレンはいるのか…?そもそも俺達が潜入した事がバレている可能性だってある)
それでも今は待機するべきだ。
慌てる必要も────
「悩む必要もない」
「え?」
「俺達はそのまま待機。柊紅羽が動くまで」
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【一週間前:作戦会議】
「俺達の勝利条件は無論、競売の破壊と紅羽さんの兄・拓さんを助けること」
常に物喰いから先手を取られ続けていたが、今回先手を決めるのは此方側。
その為にやる事は二つ。
「一つはセキュリティ室の確保だ」
潜入するという事は、情報源は敵に先行されている。
ここを陥とさない限り勝利はない。
「とは言え、敵…恐らくログロって奴はバカじゃないだろう。そこは戦況をひっくり返せる重要機関。何か仕込んでいると考えるのが普通だ」
堺の考えはもっとも。
先に攻撃を仕掛ける為の“とっかかり”がない以上、攻めるに攻められない。
「そうです!それで必要なのはシンプル」
少し間を空けて焦らす潜一。
全員の視線が彼に向いた時、潜一はこう呟いた、
「情報の混乱です」
無勢が多勢に勝つには、此方は的確な情報を持ち、敵には不確かな情報を。
「厄介な事にこのホールはセキュリティ室が“二つ”あります。一つはホール全体を取り締まり、二つは第三ホール“だけ”にあるセキュリティ室」
権限的に強いのは前者だ。
狙うのは無論ここ。
「…俺達のやる事はセキュリティ室の襲撃か」
「はい。そして────」
「!?」
潜一が思いついた作戦。
それを皆に話すと、全員が驚きを隠せず目を大きく見開いた。
「紅羽さん。出来ますよね?」
「…ふっ。あぁ、問題ない」
微笑みで返した紅羽。
奇想天外の作戦だが、面白い。
「頼んだぞ。潜一、湊」
「「はい!」」
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【一時間後】
人がぎゅうぎゅうに詰められたホールに、姿を現した司会者。
大量の歓声と拍手に手を振る彼は、円の形をした会場の真ん中に居座る。
『ログロ様。会場内に怪しい人物はいません』
「OK。それさえ分かれば充分だ」
通信で部下に会場内を探らせている訳だが……返ってきたのは“いない”という報告のみ。
第三ホールのセキュリティ室に佇むログロは、人々の歓声を見届けながら、競売を見守る。
「それでは皆様──始めましょう!!」
そうして、司会者の登場よりも何倍の歓声が会場内に響いた。
歓喜の声に包まれる中、敵の首を獲るべく集まった人間もいる事に…彼は気づいている。
(冥本の言う通り…奴は来るかな?どうするつもりだ?柊紅羽)
会場を見下ろすセキュリティのガラス越しに、ログロは不敵な笑みを浮かべ、待ち構える。
「酒なら好きだぜ。俺もな」
彼の腰に掛けてある刀と銃の重さが、全身に伝わった気がしたログロなのであった。
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【警視庁:芳沢】
「楓、帰ったぞ」
「あぁ…芳沢さん。お疲れ様です」
クタクタになりながらも彼女と自分の仕事を終わらせた楓に、労いのコーヒーを届けた芳沢。
「あれ?和泉さんは?」
「アメリカに帰った」
「あはは…淡々と…」
そう言えばこの一週間何をしていたのだろうと興味を持った楓が、芳沢に聞こうと思った瞬間───
ブーブーと芳沢のスマホから呼出音が。
「すまない」
防音の部屋に籠った芳沢。
楓から見て、彼女の表情はどのか懐かしそうな顔をしていた。
『聞こえるか?ヨシザワ?』
「あぁ聞こえるよ。バーンズ」
『全く。せっかくアメリカに来たんだからもう少し堪能していきゃぁ良かったのに』
「FBIのバーンズ様にそんな手、煩わせたりはしないさ」
芳沢は公安で海外任務に勤めていた頃、FBIの彼とはある程度の交流があった。
彼女の人脈の広さは世界に広がっている…という訳。
『お前が調べて欲しいと言った、クラモト?についてだが、ある程度見つけられたぞ』
「本当か!?」
『驚くなよ。奴ァ…俺の“大先輩”だ』
淡々とそう告げたバーンズ。
彼の綺麗な発音により、更に“先輩だ”という言葉が強く聞こえた気がする。
『奴は射撃や体術など、ありとあらゆる技術はトップでFBIに入ってる』
「顔については?」
『落ち着け──いやまぁ、気持ちは分かるがな。この情報は本当にほぼ全てのハッカーに頼んで漸く掴めたしな』
上層部か、もしくは冥本の本人か。
誰かがその情報を揉み消したのだろう。
『アジア系の顔だが、当時はジョブという名前でやっていたらしい、そしてある時から自分の“冥本智”と名乗り、テロを開始し──一年前…当時の大統領を暗殺した』
「そのある時から今に至るまでが一切不明なのか?」
『あぁ』
何故FBIに入ったのか、何故テロを起こしたのか。
芳沢の頭の中では考えても仕方がない事がグルグルする。
『分かる事は一つだけ。奴は……日本人である事』
どうやってアメリカに?
何歳?日本というのは本当?
こんな事考えても意味などないのに。
「……………助かった。バーンズ」
『それはなにより』
こうして通話は終わった。
元警察官で優秀。
とても申し分ない実力の持ち主が…何故?
(渋谷テロの時から分かっていた。…分かっていたハズなのに)
圧倒的な武力と財力・作戦立案能力。
元FBIでも想像つかないほどに彼は強い。
「冥本智……お前は一体……何者なんだ……?」
携帯を握ったまま、ただ唖然と空を見つめる芳沢。
もしかしたら日本は、とんでもないものに目をつけられてしまったかもしれない。
10万字イェイ。
明日の投稿遅れるかも…すみません。
バレー見過ぎた。




