表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
第二章
22/29

File.22 隊長


十階で、冥本とブレンはSATの武器や防具などを盗んでいた。


防弾チョッキを元から冥本が着ていた物とSATから一つ。計二枚のチョッキを装着し、生存率を上げる。


肩や首周りの負担が大きいが仕方ない。


麻酔銃の注射器では、分厚い二枚の防弾チョッキにより阻まれ、彼の体に突き刺す事はできなかった、


【部屋の中】


「準備しないとね」

彼は粘着テープで自身の左手と銃に巻きつけすぐ撃てる様にした状態で──


「よっ!」

左腕を切断。

それは遠くに飛ばし、戦いに備えた。


──────────

【現在】


「リベンジマッチだ」

粘着テープで手と銃をぐるぐる巻きにした左手で、隊長に向けて発砲。


状況を理解できてはいなかったが、銃口を冥本に向けてはいた。


「グッ!!」

隊長の胸と腹辺りに命中し体が倒れようとした瞬間を冥本が支える。


肉壁の完成。

湊は撃てない。


「これ貰うよ」

彼が持っていた麻酔銃を強奪し、姿勢を低くした冥本はそのまま湊の足に発砲し命中させた。


「!!」

刺された痛みが足の脛から広がり、強い眠気と共に襲われ…重い瞼が閉じる前に潜一がいた扉の方を見る。


(潜一…さん…)

全身が脱力状態の彼女に何かを話せる訳がない。

湊は抵抗虚しく地面に倒れた。


一瞬で包囲網を突破された潜一チーム。

銃声を聞きつけ冥本に銃を向けた頃には、仲間はもういない。


「…クソッ」

地面に倒れて全く動かない隊長。

足に注射器が刺さり眠っている湊。


少し目を離した瞬間に、状況が最悪になっていた。



「冥本ォォ!!」

顔を狙って発砲時、火薬が爆ぜた音が聞こえたのと同時に──


「は!?」

冥本は頭を真横に傾け弾丸を避けた。

潜一は驚愕を隠せない。


撃たれた弾丸を見た…と言うより撃つ前からそこに頭があった感じだ。


「残念!!」

完璧にその一撃を躱した冥本は潜一の銃を撃ち抜き吹き飛ばした。


急いで支柱に隠れて新たな銃に持ち替えるも……

冥本は支柱の両端に撃ち続け、潜一の動きを停止。


「楽しかったよ、それじゃ」

両手に銃を持って弾丸を全てを支柱に撃ち続けそのまま奥の扉へと、冥本は逃げる。


潜一は動けない。

隊長も動けない。


ただ一人…いる。

──僕がもし敵に撃たれて即死しなかった場合、僕の頭を撃って殺して下さい


「…できるか?湊」

支柱から体を出せば冥本に撃たれる。

だが湊の体は撃てる。


一番覚悟出来てなかったのは俺自身。

信じられていなかったのも俺自身。


「…!!」

潜一は湊の頭を撃ち抜き……


「…はっ!」

蘇った彼女は辺りを確認する前に扉の奥へと逃げようとする冥本が見えた。


落とした拳銃を拾い、冥本の足を狙って連発。

だが、彼の動きを止める事はできなかった。


冥本は完全に階段の奥へと行ってしまい、そうして姿を隠し……


「クソッ……!!」

悔しさを隠せずに怒りを露わにした湊。

潜一は彼女の肩に手を置き、落ち着く様促す。


完全に動揺してしまい、最後まで冥本に遅れをとってしまった。


強いて挙げられる敗因は…そんな所だろう。


「ひとまず隊長達の安否を──!?」

外から大規模な爆発。


十階建てのこのビルが大きな地震でも起きたのかと思うくらい揺れた。


正確にどれくらい続いたのかは分からなかったが、数分くらいは続いたと思う。


揺れが収まる時、外を確認しようとすると─驚きの光景が窓から見えた。


「……何をするつもりだ」

急いで防犯カメラと同期しているスマホを確認。

無数にあるカメラから彼らを探す。


外にはマスコミや警察が集まっているところを見るに、外の事態は収束したのだろう。


すると破壊された壁の近くに冥本とブレンの二人がバイクに乗っている映像が。


「まさか!!?」

先程の爆発で隣にあった、六〜八階建てのビルがこのビルにもたれているこの状況。


そしてバイク。

このビルが…()()になる。


窓から一瞬だけ、冥本達が乗っているビルを視認。

潜一の考え通り彼は倒れたビルを道として脱出した。


「どうしてバイクが!?というかどこから!?」


「このビル…いや企業を思い出せ」


「思い出せって……あ!」

ここはバイク関係の企業ビル。

社長室には記念すべき第一号のバイクが置いてある。


燃料は…奴らが持ってきたのだろう。

「…?」


カメラを切ろうとした瞬間妙な物が潜一の目に映る。

タイマー?勝手に作動したもの?


「“時間”がどんどん減って……ッ!湊!!!さっさと確認して逃げるぞ!!」


声を荒げた潜一に驚く湊。

彼女が何故かを聞こうとする前に彼は答える。



()()()


──────────────────

【物喰い組】


「おいブレン大丈夫か?」


「あぁ…チョッキ越しだったのが幸いしたな」

止血はした。

多分大丈夫だろう。


「野郎と二人乗りするハメになるとはな……」

少しだけ嫌そうに呟く冥本。

ブレンは彼のヘルメットを何度も叩く。



「嘘嘘冗談!!冗談ですから!!」

馬鹿げたやり取りをしている中、一つだけ綺麗なビルの屋上からポツンと人影が彼の目に映った。


「ん?」

それがなんなのかは分からない。

考えられるのは……


「此方冥本〜そこにいるのは雇われ組か?もう任務は成功したし帰って…おい応答しろ〜?」


返事がない。

もう帰ったか?


もしくは通信が……


…だが違った。

刹那、弾丸が真っ直ぐ冥本のヘルメットへと接近。


「!!」

反射で首を真横に動かし躱した冥本は、バイクによる高速移動、そこから更に頭へと的確に狙う正確性に驚きを隠せない。


片手に余裕があるブレンがその方向へと持っていた高倍率スコープでそこを見る。


「…黒い…フルフェイス?」

服装はSATと似ているが何かが違う。


雇われ組は最低限の装備しかしていない為にあの重装備はおかしい。


SAT以外にも敵がいたとは、まぁでも……

「作戦は達成している。逃げるぞ」


─────────────────

【潜一・湊】


潜一は脇腹を撃たれた部下の脈と呼吸を確認するが…

「クソッ…」


もう死んでる。

助けられない。


「湊!隊長さんは!?」


「生きてます!!」

二発撃たれた隊長は、防弾チョッキに直撃した為に致命傷までにはならなかった。


苦しそうにしているが意識ははっきりしている。

爆発まで残り十分丁度。


「何故……俺を助ける?早く…逃げるんだ…!!」

隊長は潜一達の治療を拒み、逃げろと命令するが彼らは全く動かない。


「…よし。湊、隊長の防具を脱がして少しでも体を軽くしろ」


「潜一さんは!?」


「俺達の服装を知らないのか?」

潜一達はこの企業の服装を着ている。

帽子を深くかぶれば誰だか分からないだろう。


彼は入り口付近に佇むマスコミ達に声を張り上げた。


「爆弾だ!!!早くそこから離れろ!!!」


これで逃げるかは分からないが……

「隊長さんをどう助けるんですか?」


「俺が抱えて走る!湊はマスコミに顔が割れている、非常口から合流するぞ!」


「……死なないで下さいよ」


「はっ!約束はできないな」

そうして湊は非常口へと向かい別れた。


このまま彼女がマスコミに顔を出せば間違いなく世間の目はより厳しくなるだろう。


潜一は隊長の所へと向かい、苦しそうな顔をしながらもどこか不思議そうな顔をしていた。


“理解できない”そう言いたげだ。

「達…潜一…」


「何故?うっせぇな、逆な立場ならアンタだってそうするだろ!!ムカつく事に俺が警察を志願したのは、人を助けたいと思ったからだ!!」


「………もし」


「あ!?」


「もし助かったら…俺に…何か……できる事は…あるか?」


階段を下りながら隊長はそう零す。

掠れた声に一つの芯がある。


「…それは──」


【七分後】


「はぁ……はぁ……」

なんとか下りる事が出来た潜一は急いで入り口を出た。


爆発するという彼の言葉をしっかり聞いてくれた様で近くにマスコミはいない。


(何か引っかかる…何かが……)

そもそも爆弾を起爆させるならタイムリミットなんてつける必要があるのか?


奴らがそんな丁寧にやるのか?


「隊長さん、もっかい走るからなんとか耐え──」


ピーー。

そんな音が聞こえた訳ではないが、どこからか聞こえた気がした。


「ッ!!」

十階の窓という窓から炎が吹き出し、爆音を鳴らす。


流石にビル内全てを覆い尽くす程ではないが、今一番危険なのは……


「ガラス片が降ってくる!走ります!!」


雨の様に降るガラス片は潜一達の体を無慈悲に切り裂きあちらこちらから血が滴る。


「グッ……!!」


「…ッ!!!」


奇跡的に隊長の首などの急所に当たる事はなかった。

「救急です!!皆さんの体を見せて下さい!!」


待機場から投げ出した数人の救急隊員がリスクを承知に潜一達を救出。


「ビルにいた人は?」


「…俺達で最後ですよ」

中にいたSAT隊員の遺体は…回収できなさそうだ。

主に彼らは九〜十階付近にいた。


残ってる者は………


…これにより物喰いの一同のテロ事件は収束。

潜一達の手により救えたのはたった一名。


「弾丸が彼の体に入っていないのが幸いしましたね。命に別状はありません」


様々な方向から強い信頼を得ているこの隊長の命のみだった。























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ