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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
第二章
20/27

File.20 戦線

【老朽したマンション】


「………………」

ここに何かがある気がすると思い、紅羽はこのマンションを捜索するも…物喰いの名か首か…どれかを狙ってきた者達ばかり。


裏社会の人間…と言ってもヤクザばかりだ。

その中でも大物がいれば良かったが、生憎小物しかいなかったが。


(勘が外れたな)

現に部屋にいたヤクザは皆切り伏せた。

こんな所にいたって何も変わらない。


「さっさと渋谷へ向かうとするか……」

潜一達が奮闘している。

そこへ向かい能力で支援しよう。


そう思い扉を開けた時、目に映ったのは──

「初めまして、柊紅羽ちゃん?」


「!!」

片手で腰に掛けていた銃を向け、迷わず発砲。

女は姿勢を低くする事で躱した。


紅羽はもう片方の手で剣を再び取り出し、臨戦態勢。

敵が銃を所持、尚且つやり手となれば流石に銃は使う。


「……チッ」

女は曲がり角へと進み身を隠した。

罠なのか逃げたのか分からない以上迂闊には近づけない。


今ここは二階。

こうして戦うのもありだが。


「よし」

窓ガラスを足で割り、辺りを見渡す。

壁にはパイプがある事に気づいた紅羽は……


軽やかに身を外に乗り出しパイプにまたがる。

そのままゆっくりと…そして無駄なく降りた。


スーっとパイプを降り、壁を蹴って地面に着地。

あの女には悪いがさっさと撤退させてもらう。


マンションの窓から撃たれるリスクを考慮しさっさとバイクの下へ走る。


だが……


「残念」

ドン!!と一発大きい音が自然に鳴り響き紅羽のバイクへ直撃した。


紅羽の黒いバイクから燃料が漏れ始め……


窓から女は単発で紅羽へ向かって何度も発砲。

「クソッ」


蛇行しながら移動し森へと隠れる。

紅羽の能力の都合上外はあまり強くない。


(中にいるのはあの女だけか。(バイク)が壊された以上…ここであの女と戦うまでだ!!)


剣を鞘に戻し、拳銃を構える。

三階の部屋にいる女に向けて──


タン、タンと二発撃ち窓の縁へ当たった。


「…ッ」


女は部屋の中へと消え、紅羽は再びあのマンションへと向かう。


一階の窓から部屋に入るとそこには傷だらけの男がいた。


「う……なっ!?」

ヤクザの男は肩を撃たれていた為、止血中だったらしい。


息も荒くしんどそうだ。

「…………………」


「な…なんだ!!なんか言えよ!!」


「おい、もし私に殺されない未来があると言ったら…信じるか?」


紅羽は男の目の前にしゃがみ込み、ドスの効いた声でそう呟く。


彼女の“もし”を聞いて男は希望と不安。そして屈辱などが混じった顔をしていた。


剣の先端を顔に向けて男を脅す紅羽。

作戦があるのだ。


「…条件は?」


「三階の女に──」



──────────────────

【三階:ルシア】


「……あぁもうっ!!なんで繋がらないのよ」

先程から冥本に電話を何度もかけているが全くと言っていいほど応答がない。


今どこで何をしているか全く分からないのだ。

彼の気まぐれなどいつもの事だが今日は酷い方。


──ルシア。


──何?


──このぽつんとマンションにテロ用の取引がある。

そこで合流しよう。


──分かったわ。


──このテロで、俺達能力者の立ち位置を決める。頼んだぞ。



「……………ッ」

作戦開始の前日、冥本は確かにそう言っていた。

だが数分・数十分もしても彼は合流どころか連絡もしてこない。


(何かトラブルでもあったの?それとも……)


今の彼女に余裕はない。

邪魔な奴はさっさと殺して情報を集めないといけないから。


そんな事を考えていた時、大きな足音を立てて、誰かが階段を上っている事に気づいたルシア。


「!?」

急いで階段回りに銃を向けるが、そこに紅羽の姿はない。


待ち続ける事三十秒。

狼狽なくただそこを見続けるルシア。


その時ピンッと階段裏から音が聞こえた。

聞き間違いじゃない。


確かに何かの──

すると紅羽は腕だけを階段から出し、“何か”を投げ入れた。


「なっ!!?」

フラッシュバン。

閃光弾だ。


急いで部屋の中へと身を隠し、耳を塞ぐ。

強烈な閃光と爆音を回避して再び扉から身を乗り出し発砲。


黒いフードを被った紅羽はそのまま此方に目を向ける事なく隣の部屋へ走り去った。


暫く撃った後、カチッと弾切れを表す音が鳴り、

彼女は室内へと再び戻る。


「はぁ…はぁ……クッ…」

ルシアの考えとして頭の中では“柊紅羽に近づかれたらまずい”が彼女の中でループしていた。


出来る限り扉から離れ余裕を作る。

彼女が扉から姿を見せたら即殺す。


その思いで。





…そんな彼女の“敗因”はたった一つ。


()()()()()()()()()()()である。


ぬっと人影がルシアを覆う。

「!!??(しまっ──)」


そこに映っていたのは柊紅羽“そのもの”だ。

彼女は体を大きく窓ガラスへぶつけてそれを割った。


ルシアを巻き込み部屋へと突入した紅羽は、ルシアの反撃をすらりと躱し、剣で彼女の銃を吹き飛ばす。


「ッ!!」

体術での反撃に出ようとした彼女へ持っていたナイフを用いて素早く首へと向けた。


「残念ながら、この間合いに私がいる以上、私の勝ちは必然だ」


首にナイフを当てられている為動けないルシア。

そしてそのまま彼女の顔を手で掴み……


「『酩酊』」

酒に関する能力で彼女を眠らせたのだった。


「さて…お前は誰だ?」


─────────────

【渋谷:某バイク企業ビル】


『潜一、聞こえるか?』


「無事でしたか?」

紅羽と潜一は互い安心した様子で話す。


『あぁ。そっちは?』


「現在SATの人達と俺と湊で作戦会議中です。冥本がここにいる」


『………そうか』

そこに自分がいない事に関する悔しさか憤りか、そうかと呟く前に少しだけ間があった。


「そっちはどうでしたか?」


『今日の私の勘はいいようだ。もしかしたら物喰い関係者と思われる女を捕まえた』


「え?女?関係者?」

潜一が思わずそう零すと、“女”と“関係者”という単語を聞いた湊が口を挟む。


「それ!もしかして僕が会った人かも」

湊を人体実験から救い出し、物喰いのメンバーとして勧誘したあの女かもしれないのと、彼女は踏んだ。


「先輩、そいつの顔写真送れますか?」

そう言う湊の声を聞いて、何かを察した紅羽は黙って連絡アプリへと、彼女が捕まえた女の写真を送った。


「あ!!この人です!!」


『繋がったな。ここにいる理由は謎だが、今はそれを考えるより先にこいつを無力化する』


「分かりました」

通信を切ろうとした潜一に紅羽が最後にこう零す。


『死ぬなよ』


「分かってますよ」

通信は終了。

後は冥本達との戦いに備えるだけ。


現在テロ開始から一時間弱。

時は十二時ちょっと…と言った所だろうか。


「お前の言った“先輩”と言うのは柊紅羽の事か?」


隊長は単刀直入に潜一に聞く。

この人達…主にこの隊長に隠し方はできないと悟った潜一は──


「そうですよ。呼び方変えたのは無駄でしたね」

特に隠す事なく話した。


「芳沢さんはアイツが気になって仕方がない様子です。まぁ気持ちは分かりますけど」

部下がそう返す。


「…まぁそんな事より、対冥本戦です」


「待て。何故冥本限定なんだ?」

疑問に思った隊長がそう問うと、潜一は全員のスマホにあるデータを送信。


そのデータは……

「このビルの防犯カメラ!」


驚いた様子の湊。

SATと合流する前にやった事の一つ。


「現在、仲間の一人……確か冥本は“ブレン”って言ってたな、そいつはあなた達SATのお陰で戦闘不能状態。もう銃は撃てないでしょう」


「成程。つまり冥本さえ倒せてしまえば後はどうにでもなる訳か」


隊長の一言に部下も頷く。

話が早いというのはストレスがなくていいものだ。


「SATは予想外の強力な武力と、彼らの鍛えられたゲリラ戦によって負けた。それは情報の“差”があったから。カメラとセキュリティを奪取した今、完全にイーブン」


そして冥本は何故か今も逃げる様子を見せる事なく、誰もいない九階に留まっている。


一度十階に戻っていたが、その時何をしていたかは不明。


ただ一つだけ確信できるのは……

「奴らはもう此方を一撃で破壊できる爆弾はない」


シンプル且つ純粋な…破壊力で叩き潰す。


「俺達なら出来る。準備はいいですね?」


「無論だ。潜一と湊は後ろに続け、我々が前線を張る」


陣形を整え、四人は部屋を出る。

そして潜一がこう零す。


「勝ちますよ」

そう強く零した潜一の一言に、全員は深く頷くのであった。










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