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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
第二章
19/27

File.19 Field

【屋上班】


「此方屋上班、十階から一気に突入する」

…と連絡してみるものの、返事はない。

帰ってくるのは砂嵐の様な音のみ。


「…悩んでいる暇はない。少しでも救出するぞ」

下の階へと続く扉を開けようとした瞬間──


「があっ…」

一番後ろにいた隊員の胸から血が吹き出た。

狙撃か。


「急げ!!」

四人はなんとか扉の中へと入りそのまま逃げる様に階段を下る。


十階の構造は少し入り組んでいる為慎重に辺りを警戒。


階段を下った先、奥の廊下に人がいた。

どうやら従業員ではなさそうだが。


「!!」

曲がり角に身を隠し最低限の顔と銃を出して、奥にいた男は発砲。


隊員は近くの支柱に身を隠した。

だが一人……


男の発砲に対応できずそのまま頭を撃たれて死亡。

残りは三名。


「二名死亡」

特に動じる事なく戦いに身を置く隊員三名。


隊長の指示も仰げない。

敵の武装の方が優れている。


だが今ここで逃げる訳にはいかないのだ。


「敵のいる曲がり角はおおよそ8〜10m。近くには遮蔽物となる支柱がある。そして廊下内には左右に部屋が二つ」


「敵の武装は恐らく拳銃のみ。大量の弾薬…というより拳銃を数丁持っている」


右奥の支柱にいる隊員と連携するのは難しい。

絶妙に離れている為に聞かれる可能性がある。


隊員の一人は右支柱にいる隊員へと指を指す。

内容は至ってシンプル。


“戦闘続行”


奥の隊員は頷き、敵の方をじっと見つめている。

先程の連発とは一変、敵は一切動かなくなった。


そんな事を考えていた時、右の部屋から女の悲鳴が聞こえ──


ダンッ!!と扉を蹴飛ばし女の従業員が部屋から出てきたのだ。


「撃つな」

逃げてきた?

よく見ると後ろに……いる。


女性を盾にして発砲した男。

男の見た目は筋肉質で撃ち方に関しては無駄がない。


「そっちに多いな」

そのまま片手で二人の隊員が隠れる支柱を撃ち続け牽制。


目指すは逸れた一人の隊員だ。

男は女性の首を掴んで遮蔽物を作り出す。


「おらいけ!!」

ある程度まで近づいた時、女性を支柱の方へと蹴飛ばした。


隊員はそれを受け止める事はなく、敵に集中していた時……


「たす…たすけて…」

女性の胸からピピピーと電子音が確かに聞こえた。


「!!」

全てを察した隊員は戦闘続行。

左の支柱を撃ち続ける男へ発砲した。


「なっ!?」

銃を飛ばされた事に驚いた男は器用に銃を切り替え、支柱へ発砲。それを続けて部屋へと戻る。


隊員は二人の仲間に目を向けてそこへ銃を飛ばした。

何かを言う訳ではない、一瞬のアイコンタクト。


ピーと長く不快な音が響き女性に付いていた爆弾が爆発。


右の支柱にいた隊員は爆散した。


死んだ隊員が遺した拳銃を掛け、静かに呟く。

「…任せろ」


残るは二人。


「奴は奥の部屋に入った。警戒しろ」


扉は閉じてある。

この扉は引き戸。


部屋の中についてはどうなっているかは不明。

突入するには……


「グレネードを使う。合図を境に開けろ」


今だ。

その一言を聞いた隊員が扉を大きく開いた。


投げ入れようとした時──

視線の正面に従業員がいた。


「!!」

辺りを見渡すと丁度回りに人質となる従業員がいる。

グレネードの使用は不可能だ。


人質がいるなら話は別。

本来なら。


「近づくな、爆破する可能性もある」

自分も人質を身を守る方法はこれしかない。



「…どこへ行った?」


人質に対してはそのまま放置する。

救出の仕様がないからだ。


「……………?」

先程から何か引っ掛かる。

人質の感じ……生き物特有の反応を感じない。


全員が隊員達を見る事なく、下を向き、全員が空虚な表情でぼ〜っとしている。


(テロ組織物喰いは“推定”能力者集団……いやまさか)

隊員は人質に銃を向けながらゆっくりと…その部屋へと入り、辺りを警戒しつつそれに近づく。


隊員の一人に辺りを警戒させ、もう一人でその人質に触れて見ると……


「!!」


肩を触ろうとしたら、触れたのは肩ではなく空気。

…掴めない。


「ここにいる人質は皆偽物か!!」

あれがあの男の能力。

人にそっくりのデコイを作成できるもの。


「奥の扉を警戒し──ッ!!」

その“奥の扉”へと視野を移した時、開いた扉の所から腕()()見えた。


急いで机に身を隠すが……その腕は一切動かない。

もう一人の隊員がそこに照準を合わせて反撃しようとした時にはもう─遅い。


「俺の能力の種まで明かすとは…やるな」

筋肉質の男…ブレンが後ろの扉に立っていた。

SATが反応する前にブレンは二発発砲。


立っていた隊員の背中と、身を隠し横たわっていた隊員には頭へ。


屋上班は全滅した。


「冥本。こっちは終わったぞ」

ブレンは部屋に入り、SATの武具を物色中。

警戒心が強い彼は今…勝利を確信していた。


朦朧とした中で、反撃の炎を燃やさんとしている者がいるというのに。


(“あの目”に報いる為に……!!)

爆散した仲間が遺した拳銃。


背中を撃たれた衝撃で持っていた銃は手放してしまったが、こっちは持っていた。


もう目の周りが暗くなっていく、もう死ぬ。

動ける前に動くのだ。


「…冥本…そっちはどう──」


タンッ!

そんな軽い音が響いた時…ブレンの背中から血が吹き出ていた。


「ッ!…クソッ!」

すかさず反撃し、トドメを刺したが……


『ブレン?どうした!?』


「チョッキ越しに撃たれた…あぁ〜!クソ油断した!!」


死にはしないと悟ったのか通信越しに冥本の笑い声が響いた。


『彼らの戦績はお前の背中にダメージを与えて終わりだな。はぁ…もういい、脱出の準備をしろ』


「チッ…分かった」

どのみちもうブレンは戦闘に加われない。

もうテロも行き詰まった感じがあるし、ここまでだろう。


『ん?あれ?』


「どうしたさっきから?うざいぞ」


『酷いな!じゃなくて、今セキュリティ室にいるんだが……変だ、何を押しても機能しないし、カメラが十秒前から変化してない……』


「何だと?」


『………………』

何かを考えていたのか、冥本は通信を切る事なくそのままにして黙り込んでしまう。


「おい…」


『……まだ誰かいるのか?ははは!!

……ブレン!まだ一悶着ありそうだ!』


先程の退屈そうな声色と打って変わって、少し楽しそうに言葉を零す。


『セキュリティ室が何者かによって()()()()()()()()()()



─────────────

【正面部隊】


「グッ…くぅ……」

なんとか目を覚ましたSAT隊長。

なんとか銃は無事だ。


「無事ですか!?」

部下がそう告げ、二人は辺りを見渡す。

そこには黒焦げた壁や床、そして火薬の匂いが漂っていた。


「俺達は奴らの武装を侮っていたのか…?」


冥本が施した最後の爆弾により盾を持った三人の隊員が死亡…その衝撃に巻き込まれた隊員一名と隊長が今の二人。


「…撤退…ですか?」

部下が悔しそうに呟くと、隊長はそれに対して答えられなかった。


奴らが想定を遥かに上回る武力を用していたのは事実。正直このまま帰っても誰も何も言わないだろう。


「…足掻くぞ」

現在地は五階。

まだこの階に生存者がいるかもしれない。


一人でも多く助ける。

それが隊長の言った“足掻く”だ。


「!?」

突如通信から砂嵐の音が聞こえ始めた。

ジャミングされたと思っていた為、息を吹き返したの

だろうか?


「誰だ?」


『もし…まだ勝つ気があるなら──五階の非常用扉がある部屋でアンタ達を待つ』


そう言い残し通信が切れた。

罠だ。


いや…もし罠じゃないと言うのなら。

「隊長…これは──」


──もし…まだ勝つ気があるなら……

「……仮に敵なら倒すまでだ。行くぞ」


その言葉が嘘ではない様に感じた。


復活した通信。

動きのない物喰い。


全てが不気味だが、どこか好機にも感じるのだ。


「ここだな」

近くに二人は構え扉を勢い良く開ける準備をする。

三、二、一…でそのまま扉を開けた。


銃を部屋へと構える。

そこには両手を上げて、此方を緊迫した表情で見る男女の姿が。


なんと銃は扉の近くに置いてある。

男性の方も女性の方も同じだ。


「お前がハッカーか?」

隊長は遮蔽物越しにそう話す。

部下が銃口を向けて、いつでも殺せる様にしている。


「あぁそうだ」


「名前は?」


「元警察の達潜一。後ろにいるのは涼風湊。協力者だ」


見た所、潜一の背後にいる女性は彼と比べて若い。

学生くらいだろうか?


「何故…こんな所に?」


「物喰いを止める為だ…!」


────────────────────

【潜一と湊】


ここまでは想定通り。

後はどれだけ速く彼らを味方につけるかどうかだ。


今銃口を向けている部下…?の人もそうだが、さっきから一瞬たりとも油断していない。


「ジャミングを行う機器は破壊した。アンタ達の上司に話が出来るハズだ!!」


「………そのまま警戒していろ」


「了解」


ひとまず最初の賭けには勝った。

後は彼らどう出るかに全てが掛かっている。


奥の隊長と思われる男と上司の会話に、一つだけ聞き逃さなかったものがあった。


それは……

()()()()


静かなこの部屋の中で彼女の名前を呟く隊長の一言が聞こえたのだ。


(芳沢!?あの人が…)

まずい。

やり手が相手にいるのか!!


「潜一さん、もし…ダメだったら…」


「その時は交渉する」


「え?」


「お前だけは守る」


「………!」

隠れてこそこそ言っていたし、今敵か味方か分からない状況でSATに背中は向けられない。


彼女の表情は見えなかったが、潜一の一言を聞いて黙った。


…数分して隊長は扉の前に立つ。

防弾バイザーのせいで上手く顔は見えない。


「潜一。お前が警察にいた事について確認が取れた。後ろにいる湊の本人確認もな」


「……だったらなんです?」


「…お前らに手を借りるのは一回きり、他にどうしようもないからな」


「…僕達は同士だ、だからこそ交われる」

湊の一言に、ふっと笑った隊長とその部下が銃を下げ、潜一達に背中を向けた。


その背中はどこか大きく感じる。

紅羽(能力者)もいないこの状況。


今…こうして戦いが再び始まる。


「物喰いを倒すぞ」

隊長の一言に全員が頷き、上へと向かう。

あの快楽殺人鬼を止める為に。



         



スケジュール管理が下手くそで8万字に到達しないとコンテストのルールに満たないので満たすまで毎日投稿します。(多分29日まで)


一日に二話投稿する日もあるかも。

よろしくお願いします!!!



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