File.17 楽しくいこうぜ!!!①
【六月十三日】
「物喰いがダークウェブでコード化させ複雑にしたものを読み解いたら、ある“住所”に辿り着きました」
潜一がそう語ると、紅羽は着替えながらその言葉に怪しさを感じる。
「場所は?」
「東京の山奥にある廃墟…近場ですね。数キロ先です」
「……誘い込む気だな」
地図アプリでそこの住所を調べると、四階建てのアパートの様な形状をしているのを確認。
物喰いの動向を気にしているのは紅羽達だけじゃない。
警察だってそれを見ているだろう。
「最悪協力してでも奴らを殺して見せる。潜一!!湊!!お前達は何かあった様にそこで待機だ!」
紅羽は急いで家を出て、ガレージを開ける。
そこには黒いバイクが二つある。
「バイクあるんですか!?」
湊が驚いた様にそう零す。
「まぁな。それじゃあ潜一。逐一報告頼むぞ」
「紅羽さんこれ」
彼女に渡したものは真っ黒の拳銃を彼女に渡した。
紅羽は黙ってそれを受け取り背中に剣を掛けて目的の場所へと向かったのだった。
「……潜一さん?」
(なんだ…?何かが引っ掛かる)
テロを起こすと言った奴らがあんな辺境な所で何が出来る…?
警察や邪魔者を消すつもりか?
──誘い込む気だな。
…紅羽はそう思っていた。
潜一もそう思っていたし、前回のビル戦ではそんな感じだ。
「(戦う為に?いや──)まさか!!」
急いで彼は自分の家のパソコンへと向かう。
もしかしたら判断を誤ったかもしれない。
────────────
【渋谷】
「はぁ…はぁ、はぁ……」
学生達は渋谷の人混みに紛れて大きいバッグを抱えて、指定された場所へと向かっていた。
──警察いると思うけど、目を合わせない様に
そう冥本が言っていた事を思い出し、学生達は無駄に重いこれを運ぶ。
三人一組の五班に分かれて三回“これ”を運ばなくてはならないのだが……
「なぁ…」
バッグを持った三人の中で、一番の筋肉質の男が突然呟く。
「このバッグの中身ってなんだろうな?」
「バカ!見るなって言われてたでしょ!!?」
高校生らしい女子が慌てて男の疑問を叫んで止めた。
金髪のギャルで、こんな所にいるからか更に頭が悪そうに見える。
バイトリーダーから支給されたスマホを見つめている気弱そうな眼鏡を掛けた男は、
手が大きく震えているのを見て、頼りなさに拍車がかかっている。
二人の馬鹿みたいな言い争いに、不安になったのか彼も口を開く。
「そんな…!大声で叫んで誰かに聞かれたらどうするんですか…!?」
「「…………」」
二人は黙り、そのまま目標地点へと着々と進む。
渋谷の街にいる警察はそこら辺りをチラチラ見ているだけで彼らを全く警戒していない。
『此方一班、一つ目設置完了』
『三班です。一つ目設置完了』
「やば…速く置かないと…!!」
金髪女が男へ早くしろと迫り、男もそれに乗せられて慌ててそのビルへと向かう。
なんとかそのビルに入るとその中は商業ビルだった。
…関係ない。お金も貰っているし仕事をこなさいと。
「此方五班…設置完了…!」
─────────────
【数十分後】
「いや〜大量だなぁ!」
感嘆の声を漏らした冥本。
トラックへパンパンに“ある物”を詰めた彼らは…
「いいんすか冥本サン?そりょ俺達にとっちゃ儲かっていいっすけど…」
物喰いとの売買を繋がり反社の男が心配そうに返すと、
「日本の建物強度はとんでもないからな、これくらいしないと壊れないのさ」
「しっかし…渋谷か…もう少し旅行に行けばよかったかな」
ブレンの一言に苦笑する反社の男。
これから渋谷に壊滅的ダメージを与える男達には到底思えないからだ。
「んじゃ、また今度ね」
冥本はそう告げて、彼らの違法売買は終了。
トラックに乗った冥本とブレンはそのまま目的地へと駒を進める。
『冥本さん、一〜五班は後もう少しで設置し終えるぞ』
「OK。雇われ組はそのまま待機だ」
『了解』
ブチっと通信を切り、態勢を万全にどんどん近づけていく。
運転中の冥本は「免許取り立てだから厳しいな〜」
…と愚痴を零したつつ、目的地へと進む。
隣にいるブレンは拳銃の最終調整中だ。
互いに防弾チョッキを着て、武装準備は欠かしていない。
するとここでスマホに通知が鳴る。
「どうした………ルシア」
『冥本!今どこにいるの!?あなたが突然作戦を変えると言うから私はここに──』
最後まで聞く事なく冥本は通話を切った。
はっと笑うブレンに、冥本は誰に言うまでもなく呟く。
「今まで俺達はテロの時は必ず政界の人間を狙ってきた。どの国でも…それは変わらない。だが今は違う、無差別・被害予想なしの完全な殺戮ショーだ」
大きな笑い声をあげながら冥本は、ブレン以外誰もいないトラックの車内で一つ──宣言した。
「さて…日本変えようか!」
どんどんと目標地点……老朽化が進んでいる十五階建てのビルへと近づく。
その近くには…老朽ビルよりも更に高い新築マンションがあるのだ。
上手くいけば…面白い物が見える。
「ブレン!衝撃に備えろ」
冥本はここでアクセルを前回。
彼の目に映るのは一階のみ。
辺りにある車を押し除け前進。
「ははははは!!!!!」
ドゴォン…!!と人と車を巻き込んだ冥本トラックがビル一階へと突進した。
窓ガラスの破片や、巻き込まれた車や人が辺りに“散らばっている”
事故に巻き込まれなかった人々はあまりにも突然のことにそこに立ち尽くして何もできていない。
「よしOK。社員室にいこうか」
二人はトラックを降りて、その部屋に行き、着替え始め……
そのままビルから出た。
近くいた警察はそんな冥本やブレンの事を「大丈夫ですか!?」「無事ですか…よかった…」
…などと言って安心している。
それを見てバカらしくなり笑いが零れた冥本。
(あぁそうだ。コレはやっとかないとな)
冥本とブレンはある場所に向けてピースポーズを取った。
そのまま救助へ向かう警察達の目を盗み、二人はビルからどんどん離れていく。
『こちら01。冥本さんは今どこに?』
「あいつは今見晴らしが良いところに行ってるんだ。タイムリミットは?」
『冥本のみぞ知る』
「…しゃーないな。十三階で観るしかないか」
知らない会社のビルに勝手に入り、勝手にエレベーターを使う。
彼らは今回のテロの協力者だ。
様々な高所から冥本達や学生達を監視している。
最もその高所にいるのは冥本ではなくブレン。
冥本がいるのは───
【渋谷スクランブル交差点】
「いいな、ここからじゃビルがはっきりと見える」
学生達も準備完了。
後は…冥本の手に握るスイッチに委ねられている。
──────────────
【先程の学生達】
「なぁ…そろそろ帰ったっていいんじゃないか?」
筋肉質の男がそう呟くが……
「はぁ!?ダメに決まってるでしょ!!リーダーには“三つ目を設置したら合図があるまでここに待機”って言われてるんだから!!」
金髪女がそれを阻止する。
気弱そうな男は、数十分待っても何も連絡が来ない事に違和感を感じていた。
他の班にかけても皆同じ。
どうしたもんかと思っていたその時。
ブーっと彼の個人用のスマホから通知が鳴った。
「なんだよこんな時に!!」
母親のメールに少し苛立ちを含みながら内容を見ると……
「……渋谷大変らしいよ大丈夫?」
そうメールには事故写真と心配事が貼られてあった。
昨日一昨日の事件じゃない。
六月十三日十時五十七分十二秒の写真だ。
つまり今日であり、ほんの数秒前の写真。
「…ん?」
気弱な男が写真をスクロールするとカメラに向かってピースをしている男二人が見えた。
「どうした?」
「何々?」
二人も彼のスマホを見る。
そのピースしている二人にどこか見覚えがあったから。
そしてその顔は、三人の違和感を決定づける─いわば証明写真。
その顔は……
「これ…リーダーの顔じゃ…?」
金髪女がそう告げる。
ここで気弱な男が焦燥に駆られ急いでバッグのチャックを開く。
「ちょっと!?アンタ何して──ッ!?」
「嘘……だ嘘だ嘘だ」
二人の顔はどんどん青ざめていく。
バッグの中身はそう。
「…爆弾」
後四十秒。
詰みだ。
「い……イヤァァァァァ!!!!!!」
金髪女はそのままどこかへ走り去る。
「あ……ぁぁぁ!!!」
筋肉質な男もそれに続いた。
気弱な男は全てを諦め、最後の母親にメールを送ろうとする。
ごめんなさい。
そう打ち終わり送信しようとした刹那。
バッグから一瞬で目を覆い尽くす光が───彼を襲った。
耳を心臓を直で殴りにくる様な爆音が、先刻まで渋谷にいた人達全員に襲いかかる。
“たった一回の爆発なら”まだ誰かは冷静になれただろう。
……一回なら。
「さて……どうなるかな?」
トラックに詰め込んだ方ではなく、学生達に置いてもらった爆弾の起爆スイッチ。
冥本は、力強く真下にスイッチを叩きつける。
「え!?」
「なんで!?」
「誰か助け──」
そんな学生達の声が聞こえてくる様だった。
花火の様に絶え間なく、総勢十五個の中型爆弾がビルなどの建物、近くにあるコンビニや適当な場所に次々と爆発。
それを見た人々は事の重大さに気づいたのか漸く逃げ始めた。
「逃げろー!!!!」「誰か助けてくれ!!!」
「イヤァァ!!」「走れ!!!!」
渋谷スクランブル交差点では、人々が冥本の反対方向へと進んでいく。
その方角には“アレ”があるが。
「…………!!」
彼は特に何も言わずに、興奮そのまま、もう片方のスイッチを押す。
カチッ。
そんな音がトラックの倉庫から鳴っただろうか。
救助中の人間の喧騒にやり、それは多分…誰も聞こえなかったと思う。
爆音の事をボン!!と言う事があるが、そんな物ではない。
ドガン。
言葉にするには簡単で……とても恐ろしい。
協力者達、冥本、ブレン。
こいつらが見た物は老朽ビルの一階が壊れ、バランスが崩れ大きく前後に揺れるビルの姿。
ビルはそのまま、近くのマンションにもたれ掛かったのであった。
窓ガラスが割れる音が次々と聞こえ、近くにいた人達に悲鳴が鮮明に聞こえる。
『冥本。お前…バケモンだよ』
通信でわざわざそう告げたブレン。
雇われ組もここまでなるとは予想外だった。
「はは…!」
その様子をただ見る。
逃げ惑う人々。
倒れ込むビルを見て絶望するマンション住みの奴ら。
全てが……予想以上だ!!!
「は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!
は!!!!」
誰も冥本を疑わない。
交差点の真ん中で笑う人間を…人々は誰もこいつが主犯だと疑わない。
「はははははは!!!!!」
テロ開始。
警鐘が鳴る。




