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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
第二章
16/28

File.16 嵐の前日

今回は短め

【訓練開始から三日後】


六月十二日


「ふぅ……」

かなりの弾を消費したが、かなり上達したと自分でも思う。


ただの高校生が銃を握り、敵と戦おうとしている。

それは自分で選んだ事。


悔いはない。


潜一の予想を遥かに超え、湊の射撃技術は大きく向上した。


時折紅羽もアドバイスをする。

射撃技術…ではなく、銃同士の戦い方だ。


これについては経験による柔軟な考えが大切だったりするから、彼女も「半々で聞いてくれ」と言っていた。


(元から筋肉は他の女子と比べてある方だと思っていたけど……)


腹筋に関しては割れてこそいないものの、しっかり硬くなっているのを感じる。


足腰もかなり鍛えた。

…それでもまだ練習不足だ。


「女の子らしさは…全然ないけど」

王子様と呼ばれるのはあまり好きじゃない。


この短くなった髪を見せたら、よりそう思われるだろうか…?


【拠点にて】


湊の参加により、食卓が賑やかとなった。

彼女自身、誰かと一緒に食事するなど学校振りだ。


「紅羽さんって料理得意なんですね、美味しいです」


「そうか?普通だと思うが…」

情報収集に明け暮れていた紅羽、その足で探すスタイルは警察時代から変わらないらしい。


どんなに疲れても、紅羽はその足を止めることはない。


情熱にも近い復讐が彼女の原動力なのだから。


「潜一。奴らの動向は?」


「あの日から一切物喰いの動きがないですね……ただ、日本で動くのを辞めたと思いきや…世界でも予告声明を出してないです」


活動停止?

あり得ない。


舌打ち混じりに呟く潜一の目には、怒りが含まれていた。


「これはハッカーとしてはありえない結論だけど…紅羽さん、あいつらはまだ日本にいる気がするんだ」


彼が襲われているのは“悪い予感”そのもの。

それについては紅羽も湊も同意見だ。


何か大変なことが起きる予感。

取り返しがつかない様な………



「潜一さん。自衛隊とかは動かないんですか?」


「無理だな。彼らが動く為には災害や国家同士の争いレベルの話にならなきゃ積極的には動かない。

…いや()()()()んだ」


簡潔に言うと、違憲となる可能性がある。

世界レベルのテロ組織が動くからと言って、


それらを“国家レベル”とみなして迎撃するには情報が足りなすぎる。


「警察だってそう簡単に発砲は出来ない。責任とか…そんなの話してる余裕なんて…ないと思うけどな」


紅羽をそう語ると、日本のテロ組織に対する対抗策が湊はあまりにも不透明に感じてきた。


目の前の命が危険に脅かされると言うのに。

「私達の利点は好きに動けること、出来るだけ速く奴らの動向を掴み、テロを止めるぞ」


「明日も頑張ります」

そうやって爽やかな笑みを浮かべた湊なのであった。


─────────────────

【物喰いの秘密基地】


「冥本!持ってきたぞ。()()だ、扉の奥にいる」


「サンキュー。今回は派手にやんないとな」

ブレンが見たのは、大きな黒いバッグをたくさん持って重そうにしている彼の姿。


重そうに地面に下ろすと、ブレンは中身を除くと…


中身を見た彼は気味の悪い笑みを浮かべ、バッグのチャックを閉じた。


互いに笑いながら、冥本は人材を迎える為にその扉を開く。先程とは違う…爽やかな笑みを浮かべて。


「初めまして。俺が()()()()…支持役と言っていいな」


その様子を見た()()()は希望、不安、驚きに包まれていた。


ここにいる学生達は大金に釣られた高校生〜大学生だ。無論、彼らはもう逃げられない。


「明日十一時に此方が指定する渋谷のビルにこれ(バッグ)をおいて欲しいんだ」


学生達の前に置いた大きい黒バッグ。

それがただのバッグではない事は…バカでも気づくだろう。


「中身は覗かないでね!!」

冥本はここに来た学生達は全部で十五人。

三人一組の五班でいこうと思う。


五つのビルに一気に置けるのは簡単でいい。

「(こっちがやりやすくなる、しかも学生……)はっはっ」


此方(物喰い)はお前達のサポートをしてやる。警察がいると思うが気にするなよ」


ブレンの発言で学生達は後戻りできない事を悟る。

金に関しては前払いされているが、要求されている事は間違いなく犯罪だ。


その後一時間。冥本から作戦を伝えられた学生達は帰ろうとした時──


いつもの笑顔を絶やさずに冥本は再び口を開く。


「あ、もし当日逃げたり通報したりしたら君達が俺達に関わった事をネットに晒すからよろしく〜!」


学生達はそれを見て、何も言い返せずただ帰る事しかできなかったのだった。


「…本当にいいのか?」


「何がだ?」


「あいつらを信用できるのか?」


「愚者が智者になるに必要なのは、“経験”だと思う。バカな彼らに経験を与えてやるのさ」


爽やかにそう返す冥本だが、その気味悪さを全く隠せていない。


「まぁ…経験は一回きりだがな。楽しみだねぇ」


そうやって学生達に見せたら爽やかな笑みを浮かべる冥本。


「あぁそれと、知り合いハッカーに()()を暗号化する様頼んどいてくれ。あまり難しすぎない様に注意させてくれよ」


渡されたのは紙。その内容をブレンはただ見つめる。

少しだけ驚愕の二文字が…彼の顔に浮かんだ。


「…いいのか?こんな事したらルシアは──」


「良いんだよ」

冥本とって彼女とは………


────────

【紅羽宅:十八時】


「紅羽さん。湊」

潜一の呼び掛けに、紅羽達は筋トレを止めた。


「奴らが動いた。明日の()()()()何かが起きる」


物喰いがダークウェブに出した犯行予告はこうだ。


        


         六月十三日

         テロを行う




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