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酒鬼   作者: 半端者の柑橘系 
第二章
14/29

File.14 利用と優しさ


(どれくらい歩いた…?)

湊は一人で様々な場所を歩き、拠点探し中。


落下した場所が背中から落ちたのが幸いしてスマホは

奇跡的に生きていた。


スマホ決済…残高がそこそこ残っていたのも今まで生きてこれた理由でもある。


(今やるべきは家を探す事!!僕の事情を理解して助けてくれる人……そんな人いるか?)


このまま生きていくなら問題ないかもしれない。

ただ、彼女は物喰いを止めたいのだ。


前哨基地になる場所も欲しいのだが……


「…それで来たのが山奥…か。一つだけポツンと一軒家があるけどさぁ…」


もし政治とか、ニュースとかを間に受ける人間から即通報問題。


世界を巻き込んだテロ組織の“仲間”が捕まったら死刑になるかもしれない。


でもこのまま何もせず彼らと戦うのはもっと無謀だ。

(賭けに勝つしかない…!)


意を決した湊はその家のチャイムを、鳴らした。


…数分くらいは待っただろうか?

留守ならそこまでだが……


そんな事を考えていたら、ガチャっと扉がゆっくり開く。


高身長…百八十には届かないくらいの男が湊を一瞥。

その表情にはフードを被った自分を深く疑っているようだった。


数秒、彼は視線を一切変える事なくただ彼女をみつめ続けるが…突如口を開く。


「初めまして、“涼風湊”君?」


「!?」

逃げ出そうと思った瞬間にはもう腕を掴まれ銃口を突きつけられ、どうしようもない状態に。


「まぁ入れ。俺ァ味方だからな」

そのまま引きずられるまま、湊は男の家へと入っていくのだった。


───────────────


「俺の名前は“潜一”ある人からお前の事を調べろと言われてね、防犯カメラから君らしき人物が映ってたんだ」


もし横道それるのなら、潜一がわざわざ彼女がここに来るように誘導するつもりだった。


「離せ…!!」


「まぁこんな事やり方になって申し訳ないと思ってるよ。こっちの方が何かと早いからな」


すると潜一は、彼女を向かいの椅子に座らせ互いに向き合う形となる。


彼の目は湊から見て悪人が嘘をつく時ではない何かを感じた。


その“何か”は悪い奴らに殺されまくった彼女の勘か、他の何かか。


「物喰いの関係者…って世間では言われるが…実際どうなんだ?」


「…違う」


「ん?」


「僕は間違ってない。そんな事は一回たりともしてない!!」

湊は精一杯、潜一を睨みつける。

その目には一切の濁りはない。


その言葉を見て潜一は軽く笑った後、警戒を解いた様に軽く微笑んだ。


「…ひとまず嘘じゃない…かな。(武器は持ってなさそうだしな)少しそこでくつろいでくれ」


柔和な笑みを浮かべた潜一。

…片手の拳銃は決してしまわなかったが。


【紅羽へ連絡】


「紅羽さん、あなたの“言う通り”涼風湊は関係者じゃなくて被害者だと思います」


『そうか…少ししたら帰る。ご飯でも出しておけ』

紅羽は現在、物喰いと関係するヤクザ組織へと殴り込みへ行き不在。


彼女は現在証拠隠滅中だ。


──────────────


「…あなたはなんで僕の事を?」

紅羽特製おにぎりを美味しそうに食べながら、そう聞く湊。


「俺達は物喰いを追っててな、関係者の可能性があるお前を調べてたんだ」


奴らが日本にいるかも分からない現状において繋がりある人物との接触は貴重。


ラミエという人間が死んだ以上、二人は慎重に調査していた。


「それで…どうしてここまで──いや、それは後で聞こう。これからどうするつもりだ?」


潜一がそう聞くと、湊の目が覚悟が決めた人間の目に代わり、こう呟く。



「僕は物喰いを止めたい」


「…正気か?」

暫く理解が拒んだ。


ニュースを見ても酷い目にあったというのは、ボロボロの服装を見て容易に想像がつく。


そして世界を恐怖に陥れる奴らにたかだか学生のガキ一人が戦おうとしているこの状況。


おかしい以外の何物でもない。

「僕は役に立てる。不死だから」


盾にするなり囮にするなり色々思いつく。

それを実行する気になんてなれないが。


「帰ったぞ」

紅羽の声が聞こえると彼女はすぐさま湊の所へ駆けつけ潜一の隣に座った。


「元警察の柊紅羽だ。奴らを追っている」


「…よ…よろしくお願いします」

潜一も顔は悪くないが、紅羽の美貌にギョッとした湊。


まさか女が来るとは予想してなかったのだろう。

驚愕の二文字が顔に張り付いている。


「湊、お前が奴らと“接敵”したのは何故だ?」

紅羽の疑問に、湊は起きた事をありのまま話した。


物喰いメンバーを名乗る女。

人体実験をされた湊。

不死の能力とその目覚めた理由。


…全てを。


「……辛い事を思い出させてすまない」

手に顎を当て、紅羽をじっと考え出す。

嘘はついていないと思うが……


捕虜の女に託され、その遺志を受け継ごうとしているのも分かる。


分かるのだが。


「その情報を確かに有益だ。また一歩奴らに近づけた……それで…何故戦う?」


「僕は彼らと会って理解したんです。能力者の差別をなくす為に戦うという事を言っていますけど、実態はただの人殺し」


紅羽も潜一もそれに頷く。

奴らの実態はただの人殺しだ。


救済なんて名ばかり。


「戦っても戦わなくても、母校は襲われるかもしれないし襲われないかもしれない。でも僕は…託されたから」


「……私達はこれからも奴らを追い続ける。だが、ほとぼりが冷めるまでここにずっと匿う事だってできる。死体を見るのも、銃を見る事もない生活だってできる」


あくまでも冷静を装って話す紅羽だったが、潜一も同じく本心は“普通に生きる”と湊に言って欲しいのだ。


十七歳…もう少しで大人になる子供が銃や死などの戦場にいて欲しくない。


「僕は戦う。それは変わらない」


湊の目は今まで一度もブレなかった。

一体何が彼女をそうさせるのかはわからない。


───私が…物喰いを殺す。

そう言えば自分も、上司にそんな事を言ったっけと思う紅羽。


無意識の内に自分と彼女を重ねていたのかもしれない。



「……潜一」


「はい?」


「銃の使い方を教えてやれ」


「はぁ!?マジで言って──はぁ…分かりましたよ」

ため息混じりに、潜一は違う部屋へ向かう。


紅羽は彼女の決意を受け取り、紅羽なりの誠意で返した。


後は湊次第だ。


───────


紅羽は情報収集へと再び外出し、湊と潜一の二人きり。


互いに向き合ったまま、彼は重そうな拳銃を彼女の目の前に置いた。


「これを握った時、お前は本当に普通の学生生活に戻れなくなる」


彼の善性が滲み出てる事を湊は察するが、どんなに脅されようと湊はブレない。


「やるんだな?」


「何度も言います。僕は──やる」


「それじゃ…一から教えてやる。外に行くぞ」


【山奥】


ここじゃ銃声が響いても辺りに人はない。

通報されるリスクも皆無だ。


「持ってみろ」


「重い…」


持つのが精一杯。

…と言うわけではないのだが、しっかりと重さを感じる。


「一般的なハンドガンの重さは700〜900グラム。弾が入れば更に重くなる」


そして潜一は木に付けた人の顔を模した画用紙を貼り付け、顔を狙う。


パン…と、うるさい音が自然に響いた。

潜一は見事に頭へ当ててみせたのだ。


「凄い…」


「元警察だからな」

フッと笑いながら答える彼は、湊に銃を構えさせる。


「前傾姿勢を維持しろ。足は並行か利き足を後ろに…そうだ。いつでも撃てるように体は絶対ブレるなよ」


湊の体がガチガチなのに気づいた彼は深呼吸を促す。


「力は抜け、練習は何日もやる」


「…はい」

そう言うと、湊から肩の力が抜けた。


死なないとは言え、銃撃戦に巻き込まれたら誰だって緊張するだろう。


余分な力は不要。


取り敢えず今は銃の持ち方、構え方の指導を徹底し、筋トレも並行する。


「タイムリミットは、物喰いがテロの予告声明を出すまでだ」





運命の出会い

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