File.12 無力な少女
「あぁ…えっと……クッキー…作ってきたんです!受け取って下さい!!」
そう頭を下げて、湊さんは受け取ってくれた。
感想は返ってこなかったけど、多分忙しいんだろうなと思っていたし、それとしか思っていなかった。
あの日までは。
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『能力を覚醒させた者である涼風湊を警察“物喰いの関係者”として追跡しています』
「………え?」
ニュースキャスターがそう告げた瞬間。
私の頭の中は真っ白になる。
「えぇ〜嘘!?咲、この人のこと知ってる?」
母がそう返すと私は、「う…うん」としか返せなかった。
何度見返しても彼女の顔がテレビに映されているのだ。疑いようはない。
彼女が犯罪を犯した?
世界のテロ組織と共謀して?
いやでもありえない。
あんな優しくして、真っ直ぐな人が犯罪を…テロなんてしないはず…なのに……
「なんで…!!」
「咲?大丈夫か?」
父が心配そうに聞くが私は何も返せなかった。
涙はでない。
けど、相当なショックに襲われた。
【咲の部屋】
(テレビの内容…酷かったな)
湊さんを悪く言う内容だけ映されていた……あの人達は学校でも湊さんが嫌いな人達だから。
今湊さんは行方不明らしい。
警察から逃れる為に?
何が本当なのか分からない。
同二年生でで、去年同じクラスになって、一瞬でスクールカーストの上位になったあの人は、ああ言う“明るい人”にしては静かで…優しかった。
───君、もしかして一人?
───え?あぁ…はい…友達…いないので……
───じゃあ僕も君と一緒に食べていいかな?今日僕も食べる人がいなくてさ。
───…良いですよ。
そう言って彼女は私と一緒にご飯を食べる事に。
───君、名前は?
───さき…です…あっ!すいませんハキハキ喋るのが苦手で……
───ははは、僕は気にしないさ。僕は湊、これから一年間よろしくね
どこか女性にしては低い声と、中性的な顔立ちに私は少しだけドギマギしてしまう。
あの優しい目に見られると、顔がどんどん赤くなってしまう。
(私には…何もできない)
自分の力についてはよく知っているつもりだ。
テロ組織としての壮大なレッテルを貼られた彼女を助ける術なんて…ない。
【翌日】
ピーピーピーとスマホが鳴る。
「ん……?」
目覚ましはいつもオフなのに……
こうやってスマホを見ると…
友達の名前が画面に映った、そして今の時間は七時、六時にはいつも出ているから……
「やばい寝坊!!」
私よりも早く親は仕事に出る。
故に起こしてくれる人はいない。急いで支度をして玄関を出ると、呆れた様な顔で友達を待っていた。
「遅い!!」
「ご…ごめん」
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【登校中】
「というか、咲が寝坊って珍しいね!いつも私の方が待たせているのに」
「あはは…考え事して寝落ちしちゃったみたい…」
その“考え事”を見越したのか、友達は咲の悩みをズバリと言い当てる。
「湊さんの事でしょ!」
「な…なんで分かったの…」
少し頬を赤く染め返す咲にニヤニヤしながら、「バレバレだよ〜」と返す友達。
「ま、確かにあのニュースは驚いたね。文武両道で体育祭でも文化祭でもリーダーやらせたら“滞りなし”と言われてる彼女がね〜」
憧れるのは分かるが、あまりにも別世界の人間過ぎて嫉妬心などは湧かない。
正直彼女がどんな人なんて知らない。
(一年経てば忘れちゃうよね……)
クッキーを渡した時、湊は咲に対して初対面の様な反応をしていた。
「咲はどう思っているの?」
「え?」
「咲は、湊さんを犯罪者だと思う?」
それは咲がずっと悩んでいた事だ。
彼女が正しいのか正しくないのか。
分からない。
本当に分からない。
私なんかじゃ…いやでも……
「……わない」
「ん?今なんて─」
「思わない…!!」
「!!」
友達が驚いた様に咲を見る。
咲が大声を出すなんて初めて見たのだ。
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【放課後:家】
「お〜い咲〜手紙が届いたよ」
母が彼女に封筒を手渡し、チラッと中身を覗くと……
“涼風湊”
…の名がそこに書いてあった。
「え!?」
急いで二階の部屋へと向かい、その中身を本格的に見る。
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【手紙】
咲君へ、
クッキーを貰った時、初対面みたいな対応して本当にごめんなさい。
あの時の僕には余裕はなかった。
本当は君ともう少し話したかったんだけどね……ごめんね。
クッキーは色々あって食べられなかったんだ、もし全てが終わったら会いに行くね。
その時はクッキーを焼いて欲しいな。
もしこれを見て不快に思ったのなら破いてもらって構わない。
それじゃあまた。
──────────
「…………………」
咲はぎゅっと手紙を抱きしめる。
一体何がそうさせたかは分からないが、そうしたかった。
「美味しいクッキー…作りますから」
彼女は…誰にどうするかも分からないけど、勝ってくれると信じている。
間章:独りの殺意編 完。
次章
第二章 〇〇編




