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いじわる継母の心変わり~これまでの行いを猛省した私は、家族と仲良くなろうと奮闘する~  作者: 夏芽空


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【25話】闇の力


 ミアの頭を撫でていた私は、その手を即座に止めて立ち上がる。

 異常事態が起きていた。

 

「……えっ、リーシャ?」

 

 なによ、あれ……。

 

 全身から噴き上がる黒いオーラ。

 目を逸らしたくなるような禍々しい雰囲気。

 

 尋常ならざる姿だ。

 普段のリーシャとはあまりにも違いすぎる。

 

 衝撃的な光景に、思わず一歩後ずさってしまった。

 

 いったいなにが……!

 どうしちゃったのよリーシャ!!

 

「すごい! どんどん力が溢れてくる!!」


 今のリーシャは明らかに異常。

 けれど弾んだ声とその笑顔は、確かにリーシャのものだ。ずっと近くで見てきた私が間違えるはずもない。


「お母様! 見ていてください!!」


 大岩へ向けて両腕を伸ばしたリーシャは、

 

「はあっ!」


 手のひらから黒い閃光を放った。

 ミアの放った氷のつらら受けてもビクともしなかった大岩が、完膚なきまでに砕け散る。

 

「あはははは!」

 

 激しい土煙が舞う中、聞こえるのはリーシャの笑い声のみ。

 見ていた三人はその光景に圧倒され、揃って言葉を失っていた。

 

 今のはいったい……。

 

 急に魔法が使えるようになったこともそうだが、威力がおかしい。

 あまりにも強力すぎる。規格外だ。

 

「これでもう私はミアよりも強い! 出来損ないじゃない!」


 笑みを浮かべたリーシャが、こっちに近づいてくる。

 お母様褒めてください! 、と私にねだりながら。

 

「ここは私が食い止めます! 奥様はミアさんを連れて早く屋敷の中へ!!」

「……いいえ。ミアはあなたに任せるわ」

 

 たぶんここは、講師の判断が正しい。

 

 けれど今逃げたら、取り返しのつかないことになる。

 私には、そんな予感がした。

 

「っ!? あ……うあああああ!!」


 足を止めたリーシャはうずくまると、両手で頭を抱えた。

 痛ましい声で叫ぶ。

 

「リーシャ!!」

 

 苦しんでいるリーシャへ私は手を伸ばす。

 

 瞬間、脳裏にとある記憶が浮かんだ。

 

 私は……知ってる。

 こうなっているリーシャを、前にも見ている。

 

 そう、前世で。

 

 前世の私がやり込んだ乙女ゲーム――『マジララ』。

 ゲームの終盤で闇の力に目覚め闇堕ちしたリーシャが、まったく同じ苦しみ方をしていた。

 

 闇の力は強大だ。

 しかしその代償として、術者に強い苦痛を与える。

 

 闇の力をその身に宿したリーシャは今、とてつもなく苦しんでいるに違いない。

 

 闇の力に対抗できるのは、たった一つ。

 対となる光の力だけだ。


 マジララではヒロインのミアが、ヒーローとの絆により光の力に覚醒。

 リーシャの体から闇の力を消し去ることにより、問題を解決している。


 だが今は、ゲーム開始の五年前。

 

 ミアはまだ、ヒーローと出会っていない。

 光の力に目覚めることはないだろう。

 

 つまり現時点では、打つ手がない。

 私にできることといえば、講師の言う通りミアを連れて逃げることくらいだ。

 

 ……そんなの無理。

 あんなに苦しそうなリーシャを、放っておける訳ないでしょ!

 

 私が行ったところで、なにになるかはわからない。

 まったくの無駄かもしれない。

 

 それでも、やる。

 だって私は、あの子の母親なのだから。

 

 リーシャへ向けて歩いていく。

 

 背中越しにミアと講師の制止する声が聞こえるが、今は無視だ。

 ごめんなさい。

 二人とも心配してくれてありがとう。

 

 一歩進むごとに強烈な圧が、体にのしかかってくる。

 今にも体が押しつぶされてしまいそうだ。辛くて苦しくて、仕方ない。

 

 それでも私の足が止まることはなかった。

 だってリーシャは私なんかよりも、ずっと苦しんでいるはずだもの。


「ダメですお母様! 今の私に近づかないで!」


 やっとの思いで手が届くところまでたどり着いた私に、リーシャが泣き叫ぶ。

 

 こんなときでも私の心配をしてくれるなんて。

 本当に優しい子。


「遅くなってごめんね」


 両手を広げた私は、リーシャの体を抱きしめる。

 

 瞬間、経験したことのない激痛が全身を襲った。

 意識が飛びそうになる。

 

「早く私から離れて! このままじゃお母様が死んじゃう……!」


 私の胸にすがりつくリーシャは、涙きじゃくりながら必死に訴える。

 それでも私は離れなかった。

 

 むしろ、さらに強く抱きしめる。

 絶対に離すもんですか。

 

「言ったでしょ。あなたのそばにずっといるって」


 全身を襲う激痛により、私の体はもう限界だ。

 それでもリーシャを不安にさせたくなくて、わずかに残った力を使って笑顔を作る。

 

 リーシャの苦しみは、私が全部引き受ける! 私はどうなってもかわまない!

 だからお願い! この子を解放して!!


 強くそう願ったのを最後に、私の意識はプツンと途切れた。

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