表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いじわる継母の心変わり~これまでの行いを猛省した私は、家族と仲良くなろうと奮闘する~  作者: 夏芽空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/27

【23話】悪夢 ※リーシャ視点


 ベッドで眠っていたリーシャは、ハッと目を覚ました。

 外は真っ暗だ。夜中に目を覚ましてしまったらしい。

 

 体を起こしたリーシャは、片手で胸を強く抑える。

 

(なに、これ……すごく痛い)


「力がほしいか?」


 胸の痛みに苦しむリーシャに聞こえてきたのは、声。

 

 でも部屋には、他に誰もいない。

 眠りに落ちる前に体を抱きしめてくれたバネッサもいなくなってしまい、今はリーシャ一人だけだ。

 

 しかもこの声は、普通じゃない。

 耳ではなく頭に直接響いてくるような、不思議な感じだ。

 

「な、なんなの……」


 小さく声を漏らすと、

 

「ククク……」


 不気味な笑い声が、また頭に響いてきた。

 

「俺は邪神ディオニス。今は嬢ちゃんの体に間借りさせてもらっている」


(邪神? 冗談でしょ?)


 邪神という言葉自体は知っている。

 最近読んだ小説に出てきた。

 

 でもそれは、あくまでフィクションの話。

 現実にはいない。

 こんなの嘘っぱち。悪い冗談だ。

 

 しかし頭に声が直接聞こえるという驚きの現象が、実際に起こってしまっている。

 嘘をついていると言い切れるだけの自信が、リーシャには足りなかった。

 

「……もしあなたの話が本当だとしたら、どうしてそんなことをするの?」

「嬢ちゃんは選ばれたのさ。お前ほどの逸材はなかなかいない」


(選ばれた? 逸材?)


 ディオニスの言っていることがひとつも理解できない。


「俺を受け入れれば、闇の力がその身に宿る。それによりお前は最強の魔法――闇属性魔法を使えるようになる」


(闇属性魔法……聞いたことがある)


 火、水、氷など、魔法には様々な属性がある。

 その中において光と闇は特別なもので、他の属性をはるかに上回る強大な力を持つとされている。

 

 しかし扱える人間は、ここ千年間でただの一人も報告されていない。

 光と闇の属性は存在しない架空のものではないか、という説もあるくらいだ。

 

(簡単には信じられない。……でも、もしディオニスの言うことが本当だとしたら、どうして私なんかに……)


「お前には素質がある。闇の力を扱うことのできる特別な人間だ」


(特別……? 私が?)


 ずっと出来損ないだったリーシャにとって、その言葉はあまりにも衝撃的だった。

 春風が吹いたような、ふわりとした感覚を覚えてしまう。


「さあ、すべてを破壊しようじゃないか」

「――!?」


(ダメ! しっかりしないと!)


 不穏な言葉をかけられたことで、リーシャは我に返ることができた。

 

 危ない。

 つい流されてしまうところだった。


「そんな怖い力なんかいらない! 私は今のままで十分幸せだもん!!」

「……そうか。まあいい。いずれはお前の方からこの力を欲するようになるだろうからな」

「そんなことしない! どっかいって!」


 うつ伏せで倒れ込んだリーシャは布団を頭から被り、固く瞳を閉じる。

 まるですべてを見透かしているかのようなディオニスの声を聞きたくなくて、両手で耳をギュッと塞いだ。

 

 

 

 翌朝。

 目を覚ましたリーシャは飛び起きると、急いで胸に手を当てる。

 

「痛く……ない」

 

 まったく痛くない。

 昨晩はあんなにも痛かったのに、今は嘘だったかのようになにも感じない。

 

「ディ、ディオニス? いるの?」

「……」

 

 おそるおそる声を上げてみるも、返ってくるのは部屋の静寂だけ。

 恐ろしいあの声は、もう聞こえてこなかった。

 

「夢……だったのかな?」


 昨日は色々あったから、体が疲れていたのかもしれない。

 あれは悪い夢だ。きっとそうに違いない。

 

 そう考えて、もう気にしないことにした。




 今日の令嬢教育も昨日に引き続き、魔法の実技演習だ。

 私とミアは並んで庭園に立っていた。近くには講師の先生もいる。

 

「まずは復習から始めましょう。やることは昨日と同じ。岩に魔法を撃ってください。では……そうですね。今日は順番を変えてみましょうか。リーシャさん。お願いします」

「……はい!」


 前に出たリーシャは、小さく顎を引いた。

 表情を引き締める。

 

(今日こそは……!)


 決意を秘めた瞳は、少し離れた場所にあるベンチへ向かう。

 そこにいるのは、バネッサだ。

 

「頑張れー!」

 

 大声で声援を送ってくれている。

 リーシャの大好きな人。

 

(もう失敗できない。今度こそ成功させて、お母様に褒めてもらうんだ!)


 大岩へ向けて両腕を伸ばす。

 魔法を発動しようとするが――出ない。

 

(なんで!? 出て、出て、出てってば!! お願いだから出てよ!!)

 

 何度も何度も何度も、試みる。

 だが、両手のひらから魔法が放たれることはなかった。

 

 まただ。

 今回もまた、リーシャは失敗してしまった。

 

「……まだ二度目です。めげずに一緒に頑張りましょう」


 講師から遠まわしのストップの声がかかる。

 悔しい顔でリーシャは後ろへ下がった。


 入れ替わるように、今度はミアが前に出る。

 

「えいっ!」

 

 当たり前のように氷のつららを放ち、当たり前のようにそれは大岩へ命中。

 まるで最初から成功するのが決まっているかのような完璧さだった。

 

 絶望的なほどの差を、今日もまたミアは見せつけてきた。

 

 ――ドロリ。

 黒いなにかが、心の内に溜まっていく。

 

「わーい! やったよママ!」


 大喜びでミアが走っていく。

 ベンチに座るバネッサに、おもいっきり抱きついた。

 

 その光景が、あまりにも遠い。

 掴もうと伸ばした腕が虚しく空を切る。

 

 二人はもう、リーシャの手の届かないところにいた。

 

「嫌だ……嫌だよお母様……。私を置いていかないで……」

「俺を受け入れろ。力がほしいんだろう?」


 押し殺すかのような呟きに呼応するように、頭に直接声が響く。

 それは悪夢だと切り捨てた昨晩の声――ディオニスだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ