【22話】落ち込むリーシャ
その日の夕食の席のミアは、すこぶる元気だった。
ミアが元気なのはいつものことだけど、今日は輪をかけてご機嫌だ。
理由はもちろん、これ。
「ねぇねぇ、ママ! ミアの魔法すごかったでしょ!!」
隣に座る私を、キラキラとした瞳で見上げる。
たくさん褒めて~、と大きく顔に書いてあった。
「ええ。びっくりしちゃったわ」
「ミア、これからもママのためにいっぱい頑張るね!」
「その調子よ」
そうして頭を撫でれば、ミアは大喜び。
ママ大好きー、と言いながら私にギューッと抱きついた。
あぁ、もう。
最高にかわいいんだから。ママも大好きよ。
でもこんなミアも、きっといつかはお嫁に行ってしまう日が来るのだろう。
子離れできる自信がない。今から不安だなぁ。
とまあ、私のことは置いておくとして。
今はそれよりも、リーシャのことが気がかりだった。
ミアがいつもより元気なのとは反対に、リーシャはいつもより元気がなかった。
魔法発動に失敗してからというもの、ずっと表情が暗い。出されている夕食にもほとんど手を付けていなかった。
「体調が悪いのか?」
見かねたレオネル様が声をかけるも、
「……大丈夫です」
リーシャは笑顔で答える。
けれどもそれは、作られた嘘の笑顔だ。
リーシャは無理をしている。
理由は聞かなくたって明白。
自分だけ魔法を発動できなかったことが悔しくて劣等感に苦しみ、ずっとそれを引きずっているのだろう。
ずっと『出来損ない』と言われてきた私には、リーシャの気持ちが痛いいくらいにわかる。
夕食後。私はリーシャの部屋を訪れた。
ベッドの縁に、二人で横並びになって座る。
「急にごめんね。どうしてもあなたのことが心配で」
「ありがとうございます。でも私は大丈夫――あれ……どうして」
また作り笑いをしようとしたリーシャの瞳から、涙がこぼれ落ちる。
無意識だったようで本人も驚いていた。
やっぱりだ。
リーシャは無理をしている。
「私じゃ頼りないかもしれない。なにもできないかもしれない。でも、お願い。あなたの本音を聞かせて」
じっと見つめると、リーシャは顔を俯かせた。
小さな両手でスカートの裾をギュッと掴む。大粒の涙がポタポタと頬を伝っていく。
「私だってお母様にいいところを見せたかった!! 褒めてほしかった!! でも、ぜんぜんうまくいかなくて……!」
痛ましい叫びが部屋に響く。
「このままじゃお母様をミアに取られちゃう! そんなの嫌だ!!」
そっか。
そんな風に思っていたのね。
気づいてあげられなくてごめん。
「大丈夫よ」
両手を広げた私は、リーシャを強く抱きしめる。
私はここにいる。
かわいくて大好きなこの子に、この思いをちゃんと伝えたかった。
「私はいつまでもあなたのそばにいるわ。ずっと一緒よ」
泣きじゃくる小さな背中をさする。
言葉はいらなかった。
いつしか泣き止んで眠りに落ちるまで、ただずっとそうし続けた。
「おやすみなさい」
ベッドに寝かしたリーシャのおでこにキスをして、私は部屋から出ていく。
これでもう大丈夫。
明日からはまた、いつものリーシャに戻っているはずだ。
――でもこのときまだ、私は知らなかった。
これからリーシャの身に、大変なことが起こることを。




