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【2話】義娘たちと会話を試みる


 今は朝食の時間だ。

 食堂へ行けばリーシャに会えるはず!

 

 そう思って食堂へ入ってみれば、思った通り。

 

 長い銀色の髪にブルーの瞳をしている11歳の美少女――リーシャはそこにいた。

 横長の食卓テーブルに座って朝食を食べている。

 

 その向かいにいるのは、肩の上で切り揃えられた金髪の美少女。

 リーシャの一つ年下の妹、ミアだ。

 

 そしてもう一人。

 リーシャの隣には、黒髪に赤い瞳をした二十代後半の男の人がいる。

 

 この人はリーシャとミアの父親で私の夫――ドルムント公爵家の当主、レオネル様。

 

 ここセレディム王国で大きな権力を持つドルムント公爵家の当主である彼は、仕事ができるのはもちろん、超一流の魔術師としても広く世に知られている。

 

 強力な氷属性魔法を使えることに加え、恐ろしいくらいに整った顔立ちをしていることから、『氷の貴公子』という二つ名まで付けられているほどだ。

 

 しかしその反面、人間的にはちょっと――いや、けっこうな問題がある。

 このお方、他人に対する興味がまったくないのだ。

 

 妻である私に興味がないのはもちろんのこと、娘たちにすらも無関心。

 これまで私がさんざんリーシャとミアをいじめている場面を見ているのに、一度も止めたことがない。いっつも見て見ぬふりをしている。

 

 父親としてどうなの? 、とは思うけど、今はともかくリーシャとミアの二人と仲良くなることが最優先。

 この問題はいったん後回しにしておこう。

 

「おはよう」


 テーブルへ近づいた私が挨拶をすると、三人は揃って目を見開いた。

 

 しかしそういう反応になるのも当然だ。

 私が朝の挨拶するのは、これが初めてなのだから。


 破滅の未来を変えるために私は、リーシャと仲良くなろうと決めた。

 そのためにもまずは、会話から入ろうと思っている。

 

 けれど、リーシャとだけ仲良くなっても不十分。

 実はマジララの隠しルートには、ミアが闇堕ちしてしまうというものがある。

 もちろんそのルートでも、私はミアに殺されちゃうんだけどね……たはは。

 

 早い話が、ミアにも闇堕ちの可能性がある。

 である以上、リーシャだけでなくミアとも仲良くなる必要があった。

 

「お、おはようございます……」


 リーシャが強張った顔で頭を下げると、まねっこするみたいにミアも頭を下げた。

 レオネル様も小声で「おはよう」と返す。

 

 ……変な空気になっちゃったけど、最初はこんなものよね。

 

 苦笑いを浮かべつつ私は、レオネル様の対面に座る。

 そうして始まったのは、無言の食事。

 

 聞こえるのは、カチャカチャという食器を動かす音のみ。

 いっさいの会話はない。

 

 異様な光景とも言えるが、ドルムント公爵家の食事は毎回こうだ。

 

 リーシャとミアは、私に怒られることを怖がって喋ろとしない。

 他人に無干渉無関心なレオネル様は、初めから会話をする気がまったく無い。

 

 結果として、誰も喋らないこの異様な光景が出来上がっているという訳だ。

 

 でもそれも、今日でおしまいよ。

 これからはバンバン会話が飛び交うような、楽しい食事の場に変えてみせるわ!


「今日は確か令嬢教育がお休みの日よね? あなたたちはこの後どうするの?」


 さっそく行動開始。

 義娘たちと会話しようと、手ごろな話題を提供してみる。

 

 しかし、

 

「……」

「……」

 

 二人はなにも答えない。

 緊張した表情で固まっている。

 

 あちゃー。

 いきなりは失敗だったか……。

 

 これまで私が二人に話しかけるときは決まって、怒るか罵倒するかのどちらか。

 雑談を振られたことのない彼女たちからすれば、こうなるのも当然だった。

 

 やっぱり謝罪から入るべきだったかな?

 でもそれはそれで、困惑させちゃうだけだろうし……。

 

「えっと……その……」


 リーシャはなんとか答えようとしているが、言葉に詰まっている。

 と、そのとき。

 

「うっ……うわあああん!!」


 私の隣から聞こえてきたのは、大きな泣き声。

 ミアが泣き出してしまった。

 

 私のせいだ。

 プレッシャーに感じちゃったんだわ。

 

「ごめん――」

「申し訳ございません!!」


 ミアに謝ろうとした私よりも早く、リーシャが勢いよく頭を下げる。

 それが向く先は、私だ。

 

「ミアには後でちゃんと言って聞かせます。ですから罰を与えるのは私一人にしてください!」

「……そんなことしないから大丈夫よ」


 たぶんここは、もっと言わなきゃいけないことがあるはず。

 けれどリーシャの勢いに圧倒されてしまった私は、一言そう言うだけで精いっぱいだった。

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