【17話】社交パーティーの会場へ
王都にあるホールへと向かう馬車に乗っているのは、私とレオネル様だ。
社交パーティー当日の今日、二人は会場へと向かっていた。
「今夜のパーティーは比較的大規模なものだ。隣国のエスタ王国からも、多くの貴族が招待されているとか。会場に入れば多くの人間がいることだろう。だが、特別にかしこまることはない。キミは聡明な女性だ。普段の通りの自然体でこなしてくれれば、それで構わない」
「ありがとうございます」
きっと社交辞令だろう。
でもレオネル様のような完璧な人に、『聡明な人間』と言ってもらえるのは嬉しい。たとえ嘘だとしてもね。
張りつめていた緊張が、少しほぐれたような気がする。
「それとだな……」
レオネル様は少し照れたような表情で天井を見上げたかと思えば、
「そのドレスとネックレス、ものすごく似合っている。今日のキミは最上級に美しい」
特大の爆弾をぶち込んできた。
今日の私のコーディネートは、青色のエンパイアドレスにエメラルドのネックレス。
先日レオネル様と街中へ出かけたあの日に買ってもらったものだ。
たぶんこれも社交辞令。
真に受けてはいけない。
そんなことはわかっている。
けれど頭でわかっていても、体は別。言うことを聞いてくれない。
頬は紅潮し、先ほどとは別種類の緊張感がせり上がってくる。
せっかく緊張がほぐれていい感じだったのに……くそぅ。
ここでもしレオネル様が、『今のは冗談だ。いちいち真に受けるな』とでも言ってくれたらまだ良かったのだけど、頼みの綱の本人は無言。
私と目を合わせるのが恥ずかしいのか、車窓とにらめっこしている。
いやいや、お願いだからなにか言ってよ……。
そこから始まるのは、沈黙。
私もレオネル様も落ち着かない様子のままだんまりで、ただただ馬車に揺られていく。
馬車が止まる。
私たちの前にそびえ立つは、王都で一番の特大ホール。
これからこの会場で、大規模な社交パーティーが開かれる。
先ほどまで落ち着きのなかったレオネル様の雰囲気が、キリッと引き締まる。いつもの頼もしい感じだ。
仕事モードに切り替わったのだろう。
切り替えのスピードがすさまじい。やっぱりこの人は超人だ。
「手を」
「はい」
一足先に馬車から降りたレオネル様の手を借りて、私も外に降りる。
ビュッと吹いた夜風が私の髪に絡み、通り抜けた。
かしこまらずに自然体で。かしこまらずに自然体で。かしこまらずに自然体で……。
先ほど言われた言葉を頭の中で繰り返し復唱しながら、私は会場へと向かっていく。




