【16話】アクセサリーショップ
ドレスショップを出た私たちは、アクセサリーショップへと向かった。
レオネル様の提案で、アクセサリーも買っていこうという話になったのだ。
ここでもレオネル様は同じスタンス。
「気に入ったものはあるか?」
と聞いてくる。
たぶんだけど、私が選んだものを却下するようなことはしないだろう。
なにを選んでも返ってくるのは、二つ返事のお褒めの言葉。
そうなるとまたもや、私の欲しいものだけを買ってもらう形になってしまう。
二連続でそれはさすがに申し訳ない――ので。
「今度はレオネル様が選んでくださいませんか?」
ルール変更を申し出てみる。
「先ほども言ったが、キミから選択の自由を奪うようなことはしない」
「私がそうしてほしいんです。レオネル様に決めてほしい、と私が選びました。これなら問題ありませんよね?」
筋は通っていますよね? 、みたいな強気な顔で迫ってみる。
少し強引かもしれないけど、私にだって譲れないものはあるのだ。
「……わかった」
諦めたかのように頷いたレオネル様。
眉間にしわを寄せながら店内を歩き始める。
これはなかなか。いや、しかし。
思い悩んでいるような呟きが、レオネル様の口からどんどん漏れていく。
私のために真剣に悩んでくれているのがよく伝わってくる。
それがちょっと嬉しかったり。
レオネル様の足が止まる。
ショーケースの前だ。
その中に飾られているのは、エメラルドのネックレスだった。
地金は装飾のない銀色で、非常にシンプル。
しかしそれが逆に、トップに飾られているエメラルドの美しさを一層に際立たせている。
「素敵……!」
一目見ただけで私はもう、惚れてしまう。
「気に入ってもらえたようでなによりだ。このエメラルドが、キミの美しい緑色の瞳にそっくりだったからな。見た瞬間に、ピンと来たんだ」
「――!?」
「ん? 急に顔を赤らめてどうした?」
「その……褒め方があまりにも直球だったのものですから……」
瞳が宝石みたいとか……なによそれ。
そんな風に言われたら、意識しちゃうに決まってるじゃん……。
「……す、すまない」
レオネル様が勢いよく顔を逸らす。
私たちは二人ともそのまま、しばらく動けずにいた。
気恥ずかしくて、くすぐったい。
******
夕焼けに染まる路地を、ドルムント公爵邸へと戻る馬車が駆けていく。
「今日はありがとうございました」
ドレスだけでなく、アクセサリーまで。
いっぱいの物を買ってもらった私は、対面の座席に座るレオネル様に頭を下げた。
「礼を言うのは俺の方だ」
しかし返ってきたのは、思わぬ返答。
私は瞳を大きく見開く。
「キミが別人のようになってからというもの、家の中が明るくなった。以前とは比べ物にならないほどにな。俺はもちろん、リーシャとミアも感謝している。本当にありがとう」
律儀で誠実な人ね。
そんな人柄に大きな好感を覚える。
と、
――ドクン!!
心臓が大きく跳ねた。
しかもずっと暴れ回って止まってくれない。体の外に飛び出ちゃうんじゃいかってくらいに大暴れしている。
なんなのこれ!?
止まってよ~!
「その……またここに来よう」
「は、はい!」
よくわからない出来事はいったん頭の隅へ追いやる。
ここで考えても答えは出そうにないもの。
「今度はリーシャとミアも連れて四人で!」
「いや、そういうことではなくてだな……。俺はキミと……」
最後まで言い終わらないままに、もごもごしてしまう。
え、どういうこと?
「…………いや、なんでもない。そうだな、四人で来ようか」
笑顔になるレオネル様だが、微妙にひきつっている。
ガッカリしているように見えるけど、なんでだろ?
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