【14話】三度目の呼び出し
湖に行ってからというもの、リーシャとレオネル様の関係には変化が。
二人は会話をするようになった。
まだぎこちない部分はあるけど、これはいい感じの変化だ。
湖でなにがあったのかはわからないけど、きっとそれがこの変化をもたらしたんだと思う。
これから二人は、もっと仲良くなっていくに違いない。それを近くで見守るのが楽しみだ。
そんなある日。
私はレオネル様に呼び出された。
談話室のソファーに座る私は、もうほとんど緊張していない。
呼び出されるのはこれでもう三度目。ともなればすっかり慣れていた――のだけれど。
「ありがとう」
立ち上がっていきなりお礼を言われたら、さすがにびっくりする。
いえいえ、座ってください! 、と慌てて言うしかなかった。
対面のソファーに座り直したレオネル様は背筋をピンと伸ばすと、小さく頭を下げた。
「キミのおかげでリーシャときちんと向き合うことができた。感謝する」
「私はきっかけを作ったにすぎません。お礼を言われるようなことはしていませんよ」
「やはりな。キミならそう言うんじゃないかと思っていた」
レオネル様の口角がわずかに上がる。
普段クールな分、こういう時折見せる笑顔をチャーミングに感じてしまうのは、もはや仕方のないことだよね。
「今日呼んだのはお礼を言いたかったのと、実はもう一つある。近々王都で、王家主催の社交パーティーが開かれる。そのパーティーに俺と一緒に出席してほしいんだ」
「かしこまりました」
パーティーという場は昔から苦手だ。
たくさんの人と挨拶をするのは面倒だし、疲れる。正直なところ、参加したいとは一ミリも思わない。
けれど私は、ドルムント公爵夫人。
役目はしっかり果たさないと。
と、ここで急にレオネル様がもごもごし始めた。
初めてのパターンだ。
「そ、そこでだな……街へドレスを買いに行かないか? ……俺とキミの二人で」
うっそ!
こここここ、これってつまり、デートってことだよね!?
カーっと頬が熱くなる。
レオネル様のような美丈夫とデートをするのは嫌じゃないし、むしろその、ちょっと嬉しいまである。
けど、これはいきなりすぎだ。半ばパニックみたいになってしまう。
「あのっ! どうしてでしょうか!!」
キミのような素敵な女性と一緒に街を歩きたかったんだ、とか言われたらどうしよう!!
……いや、本当にどうするんだろう。もし言われたらなんて返せばいいのかな……。
そんなことを真剣に悩むのだが、
「その……ドルムント公爵夫人としてパーティーに出席する以上は、それ相応の格好をしてもらう必要がある。こういうことは自らの目で確認しないと気が済まない質なんだ。けっ、決してキミと出かけたかったからとか、そういうことではないぞ!!」
私の心配は杞憂に終わる。
今回の件はデートのお誘いでもなんでもなくて、レオネル様らしいごくごく真面目な理由だった。
そうよね。
私なんかをデートに誘うはずないもの……。
はぁ……なに勝手に浮かれてんだろ、私。
「承知しました。よろしくお願いします」
落ち込みたくなる気持ちを必死に押し殺して、無理矢理に笑顔を作る。
嘘の笑顔だと見破られていないといいのだけれど。




