【12話】リーシャの気持ち
翌朝。
四人での朝食の時間に、私は声を上げる。
「リーシャ、ミア。レオネル様から、あなたたちに大事なお話があるの」
リーシャとミアは揃って驚いた表情になる。
私が初めて雑談を振ったあの日と同じように、大きな緊張感を漂わせていた。
まさかレオネル様が自分たちに話しかけてくるとは思っていなかったのだろう。
レオネル様はその場にゆっくりと立ち上がった。
リーシャとミアを交互に見る。
「俺はこれまで、お前たちと関わろうとしてこなかった。本当にすまない。父親失格だ」
詰まるような声色でそう言ったレオネル様は、強く拳を握った。
そこには、たくさんの後悔の念がこめられているかのように思えた。
「近頃楽しそうに触れ合う三人を見て、俺もそこに加わりたいと思ったんだ。虫がいいのはわかっている。だが、頼む。俺にできることは、こうしてお願いすることだけだ」
二人に向けて、レオネル様は深く頭を下げる。
リーシャとミアは困惑している。
状況を呑み込めていない。
助け船を出した方がいいかも。
そんなことを考える私だったが。
ここで、ミアが動く。
席を立ったミアはレオネル様の隣まで移動。
握りしめられている拳を両手で包み込むと、にっこり笑った。
「ミアはいいよ! パパと仲良くしたいもん!」
「ありがとう」
頭を上げたレオネル様は優しく笑う。
緊迫感に溢れていた食堂の空気が、柔らかくなっていくのを感じる。
その一方で、リーシャは動かないでいる。
バツが悪そうにレオネル様から視線を逸らした。
「私は……少し考えさせてください」
「もちろんだ。拒否してもとやかく言うつもりはない。お前の自由だ。ゆっくり考えて答えを聞かせてほしい」
リーシャはまだ、心の整理ができていないようだ。
無理もない。
ずっと関わってこなかった相手にいきなりそう言われたって、すぐに対応する方が難しいに決まっている。
簡単には答えが出ないだろう。
******
「お母様。今、少しよろしいでしょうか?」
朝食を終えて私室にいた私のところへ、リーシャがやってきた。
思い悩んだ顔をしている。
「レオネル様のこと?」
心当たりは一つしかなかった。
いちいち聞かなくたってわかる。
リーシャは静かに頷いた。
「お父様と仲良くしたい気持ちは私にだってあります。でも……」
体を震わせたリーシャは奥歯を噛む。
「お父様は辛い目にあっている私やミアをたくさん見てきた。それなのに、なにもしてくれなかった。どうしても守ってくれないの? 、と恨んだこともあります」
辛い目、というのは、私にされてきた数々のいじめのことだろう。
私の名前を出さなかったのはきっと、リーシャなりの心遣いだ。
「だからミアみたく、すぐに気持ちを切り替えるとができないんです」
「そうなるのは当然よ。大事なのはその気持ちをレオネル様に伝えることよ。きちんと話し合えばきっと、答えが見えてくるはずだわ」
「私にできるでしょうか? 緊張してうまく話せる自信がありません……」
「大丈夫よ。話しやすいシチュエーションはこっちで用意するわ。私に任せてちょうだい」
不安気なリーシャに、私はパチンとウィンクを決めてみせた。
こういう展開になると思っていたので、既にアイデアは考えてある。




