【10話】二度目の呼び出し
どうしてここに!?
という疑問が浮かぶけど、まずは飲み物が先だ。
カラカラで死んじゃう。
「ありがとうございます。いただきます」
お礼を言ってから容器を受け取った私は、中の水を勢いよく体内に流し込んでいく。
なにこれ……すごい!
疲労感がどんどん消えていくんだけど!
さすがは凄腕の魔術師。
『氷の貴公子』の力を、私はその体で実感した。
「今しがた、キミが娘たちと遊んでいる様子を見させてもらった」
「……お恥ずかしい限りで」
きっと体力が底を尽いて、へとへとになりながら走っているところを見られたのだろう。
恥ずかしすぎる。渇いた笑いしか出てこない。
けれどレオネル様は、なぜか微笑んでいた。
「以前キミが言った『娘たちと仲良くしたい』という言葉。どうやら本物だったらしいな」
え……この人、本当にレオネル様?
私の知っているレオネル様は、疲れて休憩している人に飲み物をくれたりする人ではない。こんな風に優しく笑わない。
まるで別人だ。
いったいなにがあったんだろ?
でもこれってたぶん、いいことよね。
「夕食の後、談話室に来てほしい。話がある」
「承知しました」
******
談話室に入った私は、ソファーに座る。
二人きりになるのは、やっぱりまだ緊張する。
でも、前回よりはずっとマシだ。
今回で二度目ということもあるかもしれないが、一番はレオネル様の雰囲気だろう。
前回と比べて、格段に柔らかくなっている。全然違う。
「そのだな……」
私の対面のソファーに座るレオネル様は、さっそく言葉に詰まってしまう。
言葉を選んでいるような感じだったが、少しして続きを話し始めた。
「キミは以前俺に、『娘たちと関わりたいときは協力する』と言ってくれたよな。……その言葉に甘えてもいいだろうか?」
「それはつまり、二人と仲良くなりたいということでしょうか?」
「まあ……そうなるな」
「やったわ!!」
望んでいた最高の展開になった。
嬉しさのあまり立ち上がった私は、ガッツポーズを決める。
……あ、やば。やらかした……。
レオネル様の前だということをすっかり忘れていた。
慌てて座り直す。
「はしたない真似をして申し訳ございませんでした!」
「別に俺は気にしていない」
気にしてないってことは、元々そういうことをやりそうなやつって思われてたの?
それはそれで地味にショックなんだけど……。
無性に落ち込みたくなるが、それをするのは私室に戻った後にしよう。
私にはまだ、聞いておきたいことがあるのだから。
「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
どうして急に二人と仲良くなりたいと思ったのか。
気になっているその部分を聞いておきたかった。
「近頃、思うんだ。毎日の食事や外で遊んでいるキミたち、があまりにも楽しそうだと。そして俺もその中に加わりたいと。……今更だがな」
レオネル様は自嘲を浮かべる。
これまで娘たちに無干渉だったことへの後悔を浮かべているのかもしれない。
「だが俺はこれまで、まともに娘たちと関わってこなかった。一人ではどうあがいても無理だ。ドルムント公爵家の当主として情けないことこの上ないが、キミの力を借りたい。……協力してくれるだろうか?」
「もちろんです!」
レオネル様の願いを叶えることは、きっとリーシャとミアのためにもなる。
断る理由なんて一つだってなかった。全力で協力する。




