No.81 何がどうしてこうなった?
No.81 何がどうしてこうなった?
コールソンさんの高出力の魔法を受けても、以前として微動だにしない防護壁。
「やはり魔法は相性が悪いのかもしれないな。となると、本当に力任せに壊すしかないか・・・」
「全魔力を込めたにも関わらず、申し訳ありません」
「ジルいけそうか?」
「どうだろうな・・・、全くの未知の相手だ。───まぁ、最終手段は・・・無い事もないが・・・」
そう言いながらヴィクターさんがチラリと私の方を見る。最終手段とはもしかして、私が全力で殴る・・・なんて事・・・。
いや、なるべくヴィクターさんの攻撃で決着して貰いたい。
もし仮に、万が一私の番が回って来た場合のプレッシャーを想像しただけで、頭が痛くなる。
国の安全の為に、必ずどうにかして欲しいと言うエルドール側の希望、レオニア王国としての面子、この場にいる全員の期待。
その全てを背負うなど、最近Dランクに上がったばかりの新人冒険者には荷が重すぎる。
「ヴィクターさん!頑張って下さい!!」
「やれるだけやってみるさ」
今出来る最大の念を込めて声援を送ると、私の焦りが伝わったのかヴィクターさんの口角が少し上がる。
「コールソン、肉体強化に魔力を回したい。魔力が回復次第、代わりに彼らに衝撃無効の魔法を掛けて貰いたい」
「承知しました、自身に魔力回復の治癒を施しましたので、すぐにでも!後は宜しくお願い致します」
立ち位置を入れ替えると、直ぐさまコールソンさんによって、目の前に魔方陣が浮かび薄い膜の様な物が張られる。
「最近出番が多いな、すまないがアレを破壊したい。付き合って貰うぞ。剣聖スキル"烈風の激成"」
ヴィクターさんが伸ばす手に、大きな剣が出現する。あれは、ドルガニルの訓練場で私の装備の試運転の時に幾度となく見た剣だ。
そこからは、凄まじかった。ヴィクターさんによって、ひたすら間を空ける事無く次々と剣戟が打ち込まれる。
私と模擬戦をした時とはまるで別物。踏む込む度、打ち込む度、衝撃が魔法の膜越しに私達に伝わって来る。
衝撃を吸収する防護膜を通してもこの衝撃、外はどれ程の物なのか想像も出来ない。
「これはどうだ?重積する首断ち」
剣戟と同等の反動を食らい跳ね返っていた刀身が、防護壁の表面に留まる。
その瞬間、ドゴンッと言う振動が地面を通して身体に響いた。それは1度では無い・・・2度3度と回数を重ねる毎に、強くなっている。
地面を介して伝わるその振動は、ヴィクターさんの剣が防護壁に対して、繰り返し攻撃を重ねている事で起きていた。
「相変わらず、ジルニード殿は凄まじいですな。剣聖の家系とは言え、これ程の戦闘能力を一個人が有すると言うのは・・・」
「歴代の中でも群を抜いて居ると言う話だから、やはり本心では父上も騎士団に在籍させて手放したく無いのだろうね。命令すれば良いのに、父上も人が良いから」
「それは、殿下も同じでは?」
「ふふ、そうだね。ジルは大切な友人だけど、本音を言えば僕の近衛騎士として仕えて欲しい・・・でも同時に、ジルの1番を知っているから、それを優先させてあげたいかな。ジル自身で過去に整理が付いたら、いつでも僕の右腕にと打診するつもりだ」
衝撃音が響く中、人同士の会話なんて聞こえるとは思えないのだが、アルシュさんとシュトルムさんの会話が何故か鮮明に聞こえた。
その衝撃音も11回目を最後に、止む。
破壊が出来たのだろうかと目を凝らしヴィクターさんの方を見たが、どうも違うみたいだ。
「どうやら、攻撃を加えるほど硬度が増している・・・これ以上は打ち込むだけ無意味だ。こちらの攻撃が重くなる程、反動が大きく帰って来る。破壊と言う方法は正解では無いのかもな」
「・・・つまり、ジルであっても破壊は不可能で、何か防護壁を解除する方法が別にある。ただし、それを探ろうにも魔法での解析が出来ないと言う事だろうか」
「魔法による解析は、我々エルフの扱う魔法でも効力を発揮出来ませんでした。困りましたね・・・」
破壊が不可能となれば、自分で言うのも何ではあるが私の得意分野である、脳筋力業戦法の出番は無くなったとみる。
想定外の事態に策を練り直すと、その場で緊急で会議が始まった。
生憎と良い知恵を持ち合わせていない私は、自由時間となってしまった。
完全に手が空いてしまった私は、近くでソレを見たくなりクレーターへと降りる。
変わらず雷を迸らせ、全てを拒絶し続ける。一体、防護壁は何を"護って"いるのか。
オーラを見ようとしたが、防護壁で厚く覆い隠され、中を視る事は出来ない。
「そう言えば、ここには伝承に出て来る雷竜の可能性を、追い求めて来たんだった。まぁ、蓋を開けたら謎の物体が待っていた訳だけど・・・」
後ろを振り返ると、会議は難航している様で、もう暫く観察していても大丈夫そうだった。
ヴィクターさんが重ねて攻撃をした事で、恐らく最初よりも強固になった防護壁。
────ほんの興味本位だった。力を込めて更に固くなってしまうといけないので、その辺りの配慮もした。した上で、指先で突いて見ても良いかな?と。
ガントレットも外し、素手で人差し指一本。軽く、本当に軽くチョンチョンと言った具合に。
右手の指が触れた瞬間、事態が一変した。どれ程の攻撃を受けようが決して揺るがなかった壁。
静電気のようなパチリと言う音が鳴り、その防護壁は私の手を取り込もうとした。
「ッ・・・!?」
慌てて、腕を引くが動かない。
マズい非常にマズい、そこそこの力を込めているのだが、引き抜く事が出来ない。
このままこの防護壁と綱引きを続け、万が一力負けした場合、最悪腕が引き千切られてしまうなんて・・・十分に考えられる。
いや、無理矢理引き抜いた結果、治療の際に傷口がボロボロ過ぎる余り、治癒が出来ません。となると非常に困る。
まだ、ヴィクターさんに上手に剣で切り離して貰った方が予後が良いかもしれない。
どうしたら良い?どうするのが最適解?そんな事を考えている内に、身体はどんどん取り込まれて行く。
「ヴィクターさーん・・・すみません。この状況から抜け出す方法ってご存じですか?」
情けない声で助けを求める。
名前を呼ばれ、私の危機的状況を見据えたヴィクターさん達は、唖然とこちらを見る。
意味が分からないと思う。散々労力を割いた防護壁に、肘まで埋まる弟子。
「何を、やっている・・・?」
「私にも何が何だか・・・素手で、触れ・・・あっ!指一本だけです!で、触れたらこの有様です」
「驚きました、我が国の衛兵を卒倒させる程威力のある防護壁に触れて、何とも無いのですか?」
「痛みとかは無いです、ただ吸い込まれる?力が凄くて抜けません・・・」
この情け無い姿を全員に観察される事に非常に居心地が悪い。いや、謎の物体に身体を飲まれ掛けて、居心地も何も無いが。
「───そもそも、何故触れられて居るのでしょう・・・?私達が触れよう物なら、即気絶ですよ?」
「あー・・・メグミは、防御力が人並み外れているから、その辺りでどうにかなっている・・・のか?」
「あっ・・・なるほど・・・!そうかもしれません!それで、この状況打開出来ますかね・・・?」
リミリアさんに、ドン引きされている気がするが仕方が無い・・・
現状を打開する一手を、ここに集う知識を、叡知を・・・延いては経験から何か導き出されると信じている。
「状況を整理します。我々の攻撃も解析も何もかも弾かれ、エルドール側のエルフが触れた際には、痛みが走り気絶。にも関わらず、メグミ殿は触れる所か、取り込まれ掛けている・・・」
「私達に触れられ無い理由、もしくは原因があると言う事・・・その違いは何でしょう?」
「拒絶される理由・・・何か、決定的な見落とし・・・情報が足りていないのでは無いでは・・・?」
コールソンさんを始めリミリアさんや、専門外であろうニコラスさんも共に推理をしてくれる。
「僕達に有って、メグミに無い物を考えた方が早いかもね。ジル、心当たりは?」
「心当たりと言われても、な。正直、弟子にして数ヶ月だが全てにおいて規格外なんだ。不明な事も多く・・・正直、俺が知りたいさ」
「面目ないです」
この世界に来て起きる事象が、どう言う理由で私に影響し、またこの世界に影響を齎すのか?それを知り得るには、期間が短すぎる。
自分の事にも関わらず、私自身が把握出来ていない。
万事休すか───・・・・・・肩へと到達する前にヴィクターさんの剣でやって貰うしか無い。
「あの・・・「そうだな・・・知り得る範囲で敢えて上げるなら"魔力が全く無いゼロ状態の人間"と言う────・・・・・・そうか、魔力か・・・!」
そうヴィクターさんが呟いた瞬間、私含めた全員の「え?!」と言う声が重なった。
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いつもより更新が遅くなり、すみません!(´;ω;`)




