No.61 問答無用の通達
No.61 問答無用の通達
点在する羽根を残す事無く集め、ヴィクターさんに完了を報告をすると「随分と集まったな・・・十分過ぎる結果だ」と評価を貰った。
後はギルドに戻って報告を行えば、晴れてD級にランクアップ出来ると言う訳だ。
E級の冒険者が早々に抜けてしまうと、依頼を受ける絶対数が変わり、困る人が出ていたりしないのだろうか?と言う疑問があったが、現地に着くまでにヴィクターさんに確認した所、D級に上がってもE級の依頼は報酬の減額ありきで受けられるらしい。
報酬が少なく中々消化されない依頼は、S級であるヴィクターさんが代わりに受けたりする事もあるそうで、S級はそう言ったギルドの脆弱さを補う役割も兼ねているとの事だった。
冒険者になって、E級の依頼を数件しか受けていない私が気に掛けるのも生意気な話ではあるが、その辺りのフォローもちゃんと整えられていて、本当に優良企業である。マイナスポイントは、誇張表現無しで命がけだと言う点のみ。
冷静に考えるとブラックの質が変わっただけなのだが、それ以外のメリットが私的に大き過ぎて、その辺りの感覚が前世も含め、疾うに麻痺していると言えるのかもしれない。
「シルビアに戻るぞ」
「はい!」
ギルドに帰り、依頼を完了させて念願のD級へ!
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足取り軽くシルビアに戻って、門の所でヴィクターさんと別れた。と言うのも、昨日カイルさんに渡し忘れた物があるらしく、寄ってからギルドに向かうから先に帰っていてくれと言われたからだ。
扉を潜ると、ギルドホール内の冒険者からの目線を若干感じたが、構わずカレンさんに駆け寄る。
「カレンさん戻りました!羽根、無事集まりました!」
「お疲れ様です、早速完了手続きを行いますね!」
羽根の入った麻袋をカウンターに乗せて中身を確認して貰う。
「い、いっぱい拾ったんですね・・・・・・!拾っ・・・・・・たんです、よね?」
袋からバサバサと出て来る羽根の量に、カレンさんの笑顔が陰る。
前回の事もあるから、疑われて当然だ。今日はちゃんと答えた方が良いと思い「思ったよりもスティールバードが沢山居て、見つかって攻撃をされたのですが、躱し続けていたらこんなに採れました」と説明する。
多少端折ったが、嘘は言っていない。
「うぅん・・・・・・そうなんですね、怪我が無くてなによりです。・・・取りあえず依頼分の30枚はこちらで受け取りますね」
「はい!お願いします!」
「30枚、確かに。それでは依頼完了とランク更新手続きを行いますので、身分証をこちらにお願いします」
前回の依頼完了は、依頼書に身分証を近付けるだけで終わったが、今回はグランさんの部屋で登録を行った板の様な物も使用するみたいだ。
カウンターに置かれた魔導板に、身分証を外して乗せる。
「ありがとうございます。少々お待ち下さい」
カレンさんが指輪を翳すと、板は青白く輝き何かの文字が円になり、クルクルと回り出す。
文字は読めないが、所々文字が変化している所を見ると、情報が書き換わっている様にも見える。
その謎の円が浮かび上がったまま、カレンさんは後ろの棚から私の腕輪と同型の身分証を取り出す。
違う所と言えば、濃い灰色をしていた金属部分が、明るい茶色であると言う点か。
その色違いの身分証を、板に乗っている私の身分証と入れ替え、カレンさんが再度指輪を翳すと眩しい光が一瞬放たれ、思わず目を閉じる。
「はい、これでD級に昇格です。おめでとうございます、こちらが新しい身分証になります」
カレンさんの声に目を開けると、そこには先程の茶色い金属で出来た真新しい腕輪。
「等級がD級に上がった為、金属部分が銅素材に変わりました。暫くは見慣れないかと思いますが、次のC級に上がる頃には違和感は無くなるかと思います」
キラキラと光る茶色は、その年に発行された十円玉の輝きを連想させる様で、ある意味、見慣れた色味で親近感を覚えた。
「遅くなった。無事、昇級出来たんだな」
「はい!見て下さい!キラキラですよ!」
タッチの差で現れたヴィクターさんに、新しい身分証を見せる。
冒険者の方々から見たら、誰もが経験した通過点に過ぎないと思うが、私としては実績や功績がこうして目に見えた事で、思わず大きめのリアクションでお披露目してしまった。
「あぁ、冒険者になって初めての昇級だな。おめでとう」
僅かな口元の緩みに、微笑んでくれたような気がして笑い返すと、軽く頭をクシャリと撫でられた。
予想していなかった反応に、目を見張る。
頭を撫でられるなんて、人生であっただろうか?
幼少期には、もしかしたらあったのかも知れないが、もはや記憶を遡っても無いに等しい。
困惑していると、カレンさんとヴィクターさんは会話を始めてしまった。
「ジルニードさん、ギルマスから預かっている物がありまして」
「何だ?」
「今日、メグミちゃんが無事昇級を果たしたら、この通達を掲示するようにと」
「あぁ、一応聞いている。特例措置の件だろう?」
「内容を確認する様に言われましたので、目を通していますが・・・これって結構メグミちゃんが大変になりませんか?」
難しそうな顔をするカレンさん。ギルマスの判断で決定事項ではある為、自分が何と言おうが覆る事は無いが、私の置かれる状況が気がかりであると。
「多少の反感はあるだろうな。元々はそれを加味して一切の情報を出さない事にしていたかな」
「でしたら・・・」
「状況が変わった・・・俺の後ろに付いて歩く存在が冒険者の間で噂になっているようでな。ハンドラーも薄々気が付いているだろう?」
「───それは・・・!」
やはり、ヴィクターさんの後ろにくっ付いている私は、奇異と言うか相当に目立つようだ。
「こいつには上がる声を黙らせる程の実力がある。俺が・・・いや、ギルマスが保証している。今はまだ経験値が足りていないだけで、このまま1年もすればA級に上がる・・・そのくらいに有望だ」
「A級っ・・・!!?」
驚くカレンさん。隣で聞いていた私も、その発言に驚きのあまり声が出なかった。
1年でA級!?それは、さすがに盛り・・・いや、過大評価だと思う。いくらなんでも買いかぶり過ぎである。
「そう、ですか。ギルマスもそこ迄、認めておられるんですね・・・分かりました。お2人がそう言われるのでしたら、私もその意向を汲みます」
そう言って、カレンさんはカウンターから出て掲示板に向かう。
後ろを付いて行く最中、振り返りながら「メグミちゃん、無理し過ぎないで頑張ってね」
「困った事があったら必ず相談してね」と、何度も念押しされる。
ふーーっと長い息を吐いた後、カレンさんは掲示板にギルマスからの通達を貼る。依頼書が貼ってある場所と違い、より目立ち、誰もが見る一等地の様だ。
「では、行きますね」
「あぁ、頼む」
「?」
再度振り返り、私達に何かの確認をした後、掲示板に埋め込まれた魔法石にカレンさんが触れる。
「《緊急通達!!!》」
その瞬間、ギルドホールに響き渡る程の大きなアナウンスが流れた。
スピーカーの様な物は見当たらないので、そう言う魔導装置なのだろうか。
「《あー、西方都市シルビア、フォートレスギルドマスターの、グラン=ファルゼンだ。冒険者の諸君に通達する。今日この日を以てして、D級冒険者メグミをS級冒険者ジルニード=ヴィクターとの師従とする。これは特例措置とし、任期満了時に解消。以後同様の措置は設けない物とする。尚、疑問不満意見への回答をまとめて先にしておく。"全てはギルドの為、国民の為、延いては国へ帰属する"以上だ》」
アナウンスは終わり、ホールは静まりかえる。結構な人数がその場にいたのだが、私達含め誰もが唖然としていた。
ギルマスからの緊急通達、グランさん風に要約すると"ギルマス権限で私をヴィクターさんの弟子にしたけど、意味があってのやつだから、文句言うなよ"と言う有無を言わせない物だった。
「・・・あの、伝え方・・・これで合ってますか・・・?」
恐る恐る、2人に尋ねる。
「・・・まぁ、そうだな、冒険者にはこのくらいが良いのかもな」
「そう、ですよね、私も読んだ時に驚きましたが、何を言っても声は上がると思うので、このくらい・・・取り付く島も無いくらいが正解かもしれませんね・・・・・・かなり、強引ではありますが・・・」
「そんな物なのですか・・・?」
これを会社で社長がいきなり出して来たら、大顰蹙・・・従業員や労働組合からの強い反発は免れなさそうではあるが・・・
ギルドは冒険者とギルドとの契約関係で、自己責任が大前提とヴィクターさんにも教わっているから、組合なんて概念がそもそも無いのかも知れない。
当然だが、私の前世のブラック企業にもそう言った組合は無かった。
「それより、緊急通達自体私、始めて聞きました。前回発令されたのは、確か私が子供の頃のスタンピードの時以来────・・・」
「そうそう出されても困る物だからな・・・」
「あっ、ちなみにですがこの通達、1日数回数日かけて流れる仕様になっていますので、あの・・・何と言いますか・・・メグミちゃん、頑張って下さいね」
「・・・・・・そう言う物なのですね・・・」
周囲の突き刺さる様な視線やヒソヒソ声の洗礼を浴びながら、私は"そう言う物なんだ"と自分に言い聞かせる。
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