No.60 D級へ向けて依頼を完了させよう!
No.60 D級へ向けて依頼を完了させよう!
「こっこれ、本当にE級の依頼なんですかーーーー!!???」
現在私は、自身に向かって降り注ぐ鋭利な高速の羽を、ひたすら走って避け続けている。
想定外の出来事に、遠くで見守ってくれるヴィクターさんに、泣き言に近い声を上げる。
・ー・-・-・-・-・-・-・-・ー・-
翌日、私はギルドで昇級の為の依頼を斡旋して貰った。
カレンさんから提示された物は3つ。
【収集:畑の肥料に使用する為のファータイルブルのフン集め 500キロ 金貨3枚】
【収集:スティールバードの羽根集め 30枚 金貨3枚】
【清掃:城壁外部の汚れの掃除 500メートル 金貨3枚】
この中から1つ選ぶと言う訳なのだが、どれを選べば良いのか相変わらず分からない。
各種簡単な説明を受けた所、2番目の羽根集めが少々難易度が高めだそうだ。
他2つは今日中に終わらせる物では無く、2~3日の日数を要するらしい。
難易度高めを取るべきか、安全牌を取るべきか・・・悩んでいる中、ヴィクターさんがカレンさんに質問をする。
「このスティールバードの依頼だが、30枚以上集めた場合はこちらの取り分に出来るか?」
「えーと・・・はい、そうですね!依頼の発注金額がおよそ羽根30枚を想定されていますので、超過分は受注側の報酬とされて問題ございません」
「そうか、これにするぞ」
「えっ!?な、なぜでしょう?」
ヴィクターさんがこの依頼を選択する事に意見は無い。が、理由は聞いておきたい。
「スティールバードの羽根は、1枚辺り銀貨1枚と割が良い。報酬で金貨3枚は貰える上、羽根の余剰分は素材として取っておく事も、換金する事も可能だ。単純に効率が良い」
「なるほど・・・ちなみに難易度は私でも達成出来る物でしょうか?」
「問題ない」
───即答である。そこまで言い切られてしまうと、私としても"頑張らせて頂きます!”と返事をする他ない。
カレンさんに受注の手続きをして貰い、依頼をこなすべく出発した。
シルビアから2時間ほど北北西に歩いた森が依頼場所となっており、現地に着くまでの間、ヴィクターさんから依頼にあるスティールバード・・・おそらく魔物であろう存在の説明を受ける。
魔物としてのランクはC寄りのD級。D級の魔物の中では強い方で、今回収集となっている羽根は、スティールバードの誇る鋼鉄の翼の事らしい。
攻撃力の高い羽根を高速で飛ばし獲物を捕らえたり、身を守ったりする魔物で、撃ち出される羽根の速度は、対峙した冒険者の鉄の鎧装備に突き刺さる程の威力がある。
では、何故その様な危険な魔物の羽根集めがE級の依頼なのか?魔物との戦闘が絡む依頼はD級からと入会時に説明を受けている・・・にも関わらずだ、当然の疑問だ。
ヴィクターさん曰く、スティールバードとの戦闘はする必要が無く、要は羽根さえ集めてしまえば良いとの事だった。
例えば、毛繕いを行った際の抜け羽や、獲物を捕らえる際に使用し、その場に落ちている羽。そう言う、落とし物の羽も含まれる。
つまり、無理に戦って毟り取る必要は無いのだ。そう考えると、適切な難易度と言える。
鳥の生息地で、羽根集めをする。なんだか、私でも問題無く出来そうな気がしてきた。
無機物を探し当てるのは、キュリア草の時の方法を利用すれば難なくいけるはずだ。
「と、まぁここまでは30枚を丁度集める方法になるな」
「え?」
依頼は30枚で、超過分は私達の取り分・・・と言う話は受付で聞いていたので、纏まって数枚落ちていたらそれを拾って帰る。と言う話では無いのか?
何か含みのある声色に、ヴィクターさんの表情を伺うが・・・たまに見せる悪い表情を浮かべている。直ぐに分かった、これは30枚では終わらない。
「・・・・・・何か、別の方法を考えていたりします・・・?」
「───よく分かったな。拾うと言うやり方は非効率的だ。短時間で大量の羽根を手に入れる予定だ」
「短時間で・・・沢山・・・」
「あぁ、偶然落ちた羽根を探すより、効率が良い(・・・・・)やり方だ」
目を細めて緩く口角を持ち上げる、それは昨日の夕暮れに見た優しげな表情とは真反対の物で・・・
もしかすると、冒険者としてのスイッチがオン状態だと、割合こっちの表情を見かける事が多いのかも知れない・・・いや、それよりも"効率の良いやり方"と言うワードに不穏な空気を感じる。
そんな私の嫌な予感は、現着して直ぐに当たる事となる───・・・
・ー・-・-・-・-・-・-・-・ー・-
「こっこれ、本当にE級の依頼なんですかーーーー!!???」
冒頭の私に戻るのだが、あの後ヴィクターさんから指示された"効率の良いやり方"の正体は、至ってシンプルな物だった。
スティールバードの縄張りに堂々と侵入し、敢えて怒らせ攻撃態勢にした後、攻撃をひたすら回避し続ける。
その際、出来るだけ森を大きく走り回る事が重要だ。
ある程度したら離脱、スティールバード達が警戒を解き次第、周囲に散らばった羽根を回収。余剰分は私の報酬として貰っても良いそうだ。
・・・私が言うのも何ではあるが、非常に脳筋的な作戦である。魔法が使えたり遠距離武器の場合なら別の方法もあるらしい。
かく言うヴィクターさん自身もこの方法は取らないそうで、何ならもっと簡単に終わらせるやり方もあるらしいが・・・。
あくまでもこれは私の昇級依頼の為の、私向きの作戦だそうだ。そう、私は有り余る体力と強度が売りなのだ。
やってやりますよ!私めがけて、その羽根スカスカになるまで打って来い!限界まで毟り取るつもりで、広く大きく森を走り続けた。
「も、もう・・・良い頃かな・・・?」
散々走り回り、体力的にはまだ問題無さそうではあるのだが、私を追いかけ回していたスティールバードの方に変化が現れた。
縄張りを荒らされた事で、複数体のスティールバードが四方八方から鋭利な羽根を飛ばして来ていたのだが、気付けばもう私を追う影は1羽もいない。
1度確認の為にヴィクターさんの所まで戻る。
「すみません、ヴィクターさん・・・何だか、もう私追われていないみたいで・・・羽根集めに移った方が良いでしょうか?それとも、もう少し様子見で軽く走りましょうか?」
余りに静か過ぎる森の様子に、こちらの出方を伺って息を潜めている可能性があるのでは無いか?油断してノコノコ躍り出た所を、再度攻撃されるなんてパターン・・・・・・十分にあり得る。
逃げるだけで全く使っていなかった、気配察知スキルを今度は使いながら慎重に・・・
「・・・・・・・・・いや、もう走る必要は無い。恐らく、羽根を拾っている最中に見かけると思うが、地面に瀕死で転がっているはずだ・・・」
「へ・・・?瀕死ですか?私何も反撃していませんよ?」
「ここから見ていたが、単純にお前との体力差と後は、羽根を撃ち出す時に使用している魔力も底をついて、途中から墜落していた」
成る程、相手の体力切れを狙うのも作戦としては、アリだとここに来てようやく気が付いた。
今まで一発KOの場面が多かったから、いかに手加減を身につけるかを考えていたが、そもそも戦闘に置いて、一息に決める必要は無くて、戦闘を長引かせて相手の疲れを誘導する方が正解の様な気がして来た。
相手をありったけ消耗させてから、満身創痍の所を少しだけ叩く。そう言うやり方も頭に入れて置こう。
「瀕死の鳥はどうしましょう?」
「そのまま転がして置いても構わない。食べられない事も無いが、肉質が固いから不人気だ・・・大した値は付かない。放って置けば明日には魔力が回復して、普段の生活に戻る」
美味しく無い上に不人気のか・・・明日には復活するのなら、無益な殺生は本意では無い。ヴィクターさんの言うように、そのままにして置こう。
いつもの素材を入れる麻の袋に、森中に散乱した羽根を集めて入れて行く。大半は私が避ける際に利用した木の幹に刺さっている為、見つけるのは容易い。
地面に転がっているスティールバードを踏んでしまわない様に、時間をかけながら丁寧に集めた数は、実に159枚。納品は30枚なので5倍近くだ。
脳筋作戦による想像以上の結果だが、若干の後ろめたさは否めない。
地面に未だ転がり失神してる鳥達に、ごめんと合掌する。
明日には意識を取り戻した鳥達が、元気に大空を羽ばたく事を願って────。
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