No.55 発現したスキルはとても聞き覚えのある・・・
No.55 発現したスキルはとても聞き覚えのある・・・
「では現状をお伝えしておきますね。メグミ様のE級としての成果は【キュリア草採取】【増えすぎたスライムの駆除】【巨大スライムの駆除】の3件になりますね。C級案件の実績がありますので、あと一つ何かE級の依頼を完了されれば、D級に昇格可能です」
・・・あれ?C級はヴィクターさんが受けられた依頼のはずで、まぁ実際は私の訓練に利用しているので倒したのは私だが、表面上は────・・・
「ハンドラーだな・・・全く。恐らくだが、スライムの依頼はお前の実績として上げている」
「・・・え?良いんですか・・・違反になったりしませんか?」
「ソロでは無くパーティーとして完了した事になっていますね。この場合は、実績をどう言った割合で振るのかは、パーティー内での話し合い後に受付にお伝えして頂き、その様に登録します。それが適応されているかと」
つまりあの時の依頼で、どちらがスライムを倒したのかなんて、カレンさんにはお見通しだったのだ。言葉ではヴィクターさんの言い分を飲み込み、実際の完了手続きでは私の実績として上げられたと言う事。
「ハンドラーは受付業務に就いて長い。冒険者同士で実績の割り振りが理不尽に決まり、納得いかないままに報告する場合もある。そう言った時には冒険者のランクや装備の状況、疲弊や消耗具合を見定め、正しく分配を行う技量。・・・流石だな」
S級がC級の依頼を受けてしまうと、報酬は半分になり、実績としては上がらない。その宙に浮いて消滅してしまう実績をパーティで受注した事にして私に配分した。と言う流れの様だ。
「あの・・・それ、ポイント・・・実績とかの横領になりませんか?」
「ん?実際戦ったのが嬢ちゃんなら、なんら問題ねぇ。ギルがサポートしたんなら、ギルドマスターとして咎める点はないしな!」
「そう言うものなんですね・・・」
どうやらこのまま、私のポイントとして換算しても良いようだ。ありがとうございます、カレンさん。後でお礼を直接伝えに行こう。
「ドルガニル側がこちらに何か言って来ないかぎり、ワームの件はここだけの話にな。嬢ちゃんの昇級の件は今言った通りだ。それくらいか?・・・後は何かあるか?」
「あ、あります!」
勢い良く挙手しながら喰い気味に主張する。
短期間のうちに有り余る情報と出来事が起こり、今の今迄すっかり忘れていたが、これを忘れてはいけない、私にとって最重要事項!
「私の能力が何かしら解放されたかもしれません」
"ギルドに戻ったら、確認をしよう"と言う話になっていた事を思い出したのだ。
「本当か!エリス、魔導具を持って来い」
「はい直ぐに!」
グランさんが指示を出す前に、奥の部屋へ駆け出すエリスさん。
私も気になっていたが、それ以上にお2人は気になっていたのだろうか?あっと言う間に、冒険者登録を行った時と同様の魔導具が目の前のテーブルに置かれる。
「────で、では行きますね・・・」
四角い板に、再び掌を合わせる。起動音と同時に浮かぶステータス画面。
メグミ
基本ステータス
体力 850(+10000)
攻撃 720(+9800)
防御 780(+10000)
敏速 650(+9200)
魔力 0
技量 690(+8900)
精神 2000(+9500)
改めて見ても馬鹿げたステータスだと思う。
この旅を経ても基本ステータス部分に特に変化は無いし、相変わらず魔力はゼロ。
後、登録時には特に触れて居なかったが、どうして精神だけ初めから2000もあるのだろうか・・・?
・・・まぁ、ここまでは良いとしよう。問題は前回見られなかった部分だ。
《固有スキル》■■■■■■
過去に積み重ねた行いがやがて自身の体を常に強化し続ける。
その体は盾となり矛となり自身を輝かせる。
ここも相変わらず、ぼやけていて読めない。気のせいだったか・・・と肩を落としそうになったのだが、この説明文の後に項目の追加があった。
「えっと、《開放スキル》【ファイトで一発】」
「何だ、それは・・・」
そうか、私はステータスが見えているけど、後ろの皆さんにはプライバシーの関係で何も見えないと言う事を忘れていた。
「えっと、基本ステータスや、固有スキルについては変化がありませんでしたが、開放スキルの部分が追加されていまして・・・それが"ファイトで一発"と書かれていまして・・・」
「・・・だから、それは何なんだ」
ファイトで一発・・・聞き覚えしかない単語だ。いや、台詞と言って良いかもしれない。
確かにあの時、無我夢中だった脳裏に浮かび、そして叫んだその言葉。
「えっと、説明部分を読みますね・・・。【ファイトで一発】それはかつて誰もが耳にした事のある言葉だろう。絶体絶命、崖っぷち、背水の陣。呼び方は幾重にもあるが、その状況から脱する唯一無二の言葉。この言葉を唱える時、己の体は限界を超え、その一瞬を持ってして現状を打破出来るだろう。出力1.5倍。使用回数1/1」
───何と言う事だろう。これは恐らくあれだ、リポビタインDだ。
15歳の受験戦争の時に初めてお世話になった栄養ドリンク。子供の頃からテレビで繰り返し流れていたCM。受験生の私は満を持して、通称リポインDにお世話になった。
いや、ようやく飲める年齢になったのだ、真っ先に試すのは必然だった。
脳に公式や単語、構文、必要な物全てを叩き込む為に連日続けた受験勉強。その横にはいつだってリポインDがいた。おかげで3月にはサクラサク。晴れて志望校へと進路を進めたのだ。
新社会人になっても、随分とお世話になった。
過去の積み重ね・・・過去に過剰に摂取した物、もしくは適量でも長期に渡っての累計蓄積が起因している。と言う事が一番濃厚な気がして来た。
それにしても、この説明文。やけに流暢な日本語節が炸裂しているが、私が分かり易いように翻訳して表示されているのだろうか?
確かに、この世界の言い回しで説明されても困るから、今後もこの仕様でお願いしたい所である。
「あー・・・つまり要約すると、お前が危機的状況に直面した際に、瞬間的にバフ込みのステータスを大幅に超えた力が出せる。と言う事か?」
「そう、みたいです・・・ね」
回数制限付きの瞬間的爆発力が期待出来るスキル。あの時あの瞬間私が一番必要とした力だ。
このスキルが発現したからこそ、状況を打破できた。まさに神の一手と言えるだろう。
偶然・・・にしてはタイミングが良過ぎるような気がしないでもない。
「ワームを倒せた一押しはそのスキル様々って訳か・・・なんにせよ運が良かったって事だな!」
「こんなに急に発現する物なんでしょうか?」
「人によるな、初めから備わって扱える奴も居れば、一生発現せずに終わる奴も居る。お前みたいに戦闘中に発現する事もある。運が良かったは強ち間違ってはいない」
「でもあれだな・・・回数制限があっちゃ、そうそう使う訳にもいかねぇか・・・」
回数制限について言及しながら急にがっかりした様子のグランさんに、どうしたのだろうと視線を向ける。
スキルの発動を喜んでくれていたのに、突然の感情の急降下。
「マスター、駄目ですよ」
「・・・ダメか?ちょっとくらい・・・」
「駄目です。人様のスキルで遊ぼうとしないで下さい」
エリスさんに止められても、めげる事無く私に何かを打診して来ている。
スキルで?遊ぶ?
「ギルマス、やめた方が良い。下手したら、地下ごとギルド会館が吹き飛ぶぞ?」
「んん?」
「それはマズいな・・・冒険者ギルドはともかくとして、商人ギルドから大目玉喰らっちまう・・・」
「商人ギルドどころか、本部から喰らいますよ」
今度は2人がかりでグランさんを説得し始める。
・・・駄目だ、私の察しが悪過ぎるのだろう、話が見えない。
「あの、何がどうして、ギルドが吹き飛ぶんですか?」
「・・・・・・・・・ギルマスが、地下でお前のスキルを試そうとしている。仮に試した場合どのくらいの規模の被害が出るか分からない。だから止めた。」
「え゛!!?」
今説明した流れでどうしてそうなるのか・・・明らかに破壊的なスキルの気配しかしていないと言うのに。
「すみません、メグミ様。マスターの悪い癖で、自分が受けたことの無い技や、攻撃をその身で享受する事を厭わない性格でして・・・」
「悪癖だな。そろそろやめた方が良い」
「ギルマスになっちまったら、現場に出る事なんて殆ど無いんだぞ!こう言う時にしか楽しみを見出せないのは知っているだろう!冒険者のサガと思ってくれ!」
「元冒険者、ですよ。駄目です」
ギルドマスターになったら、SS級の称号は残しているが、実質ギルドの治安や運営に纏わる様々な事が主になってしまい、楽しみと言ったら地下での自主練と、冒険者との手合わせが生きがいなんだ!
そう、強く主張するもエリスさんに首を横に振られてしまい、許可はおりなかった。
私も、手にしたばかりのスキルを人に打つのは流石に気が引ける。
グランさんは若干可哀想ではあるが、我慢して貰う。それしか無いのだ。
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