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No.43 去り行く脅威


No.43 去り行く脅威






『ねぇこれ、のんでみたい!え?こどもはまだダメ?こののみ物、こんな高いところからおちそうな時に、だれかをたすけられるほどの力が出るんでしょ?私もだれかをたすける時はこうやってたすけるんだー!』


子供の私が誰かに話しかけている。あれはお母さんかな?そうか、あの頃はまだ元気で生きていたんだっけ・・・


久しぶりに会えたな────・・・







「───っは!!??・・・・・・ここは?」



気がつくと、見知らぬ天井が視界に入って来た。


「えっと、確か・・・ワーム退治作戦の最中で・・・・・・あれ?どうなったんだっけ??」



ヴィクターさんが倒したと思ったワームが、実はまだ倒されていなくて、私達に襲いかかって来たから、どうにかしたくて・・・それで・・・その後の記憶が断片的で、うんうん唸っていると、扉の開く音がした。



「あっ・・・!気がついたのね!!良かったわ!!」


「あ・・・ラナさん・・・」


「貴女、丸3日も目を覚さなかったのよ!良かった目覚めてくれてっ」



丸3日!それは随分と寝込んでしまっていた。



「あれ?あの、私ワーム討伐作戦に行っていましたよね??」


「あらっ何も覚えていないの!?ワーム駆除は無事に成功。1人も欠ける事なく此処に帰還したわ。意識の無い貴女以外は・・・」


「良かった、無事倒す事が出来たんですね・・・あ、そう言えば・・・私が勢いに任せて投げ飛ばしたんだった・・・・・・・・・あの、私体液まみれじゃ無かったですか?」


投げ飛ばした後、クローベアの時の様に全身で体液シャワーを浴びたのだが、今ベッドに横たわる身体にはそんな痕跡が微塵も無い。



「貴女がジルニードさんに、抱き抱えられて帰って来た時は本当に驚いたわ。全身が緑色に染まって、一瞬誰か分からない程で・・・慌ててお風呂に入れて全身を洗わせて頂いたのだけど・・・その緑色を流してみて更にびっくり。服はボロボロで、ハサミで切るしか脱がす方法も無くて、剥き出しの肌はもっとボロボロで・・・」


手なんて、爪が全部剥がれ落ちていたんだから。痛々しい表情のラナさんから、本当にひどい状態だった事が分かった。



「お手間をお掛けしてしまい、すみませんでした」


「え!?違うのよ、単に驚いたってだけで・・・むしろ貴女には感謝しかないの。主人から聞いたわ、身を挺して守って下さったんでしょう?」


「あ、えっと・・・私の意地を通しただけと言いますか・・・過去のトラウマ?心残り?にケリを付けたかったと言いますか・・・結果的には・・・うーん、助けた・・・と言われたら、そうかもしれないですが・・・」



何とも煮え切らない返事だ。だが、どういたしましてと返すには些か申し訳ない話で・・・。



「でも、貴女のおかげよ。ありがとう」


「・・・いえ・・・」


「お腹、空いてない?ご飯の用意があるの。もう少ししたら主人もジルニードさんも戻って来ると思うわ」


「あの、2人はどちらへ・・・?」


「あ、王様に呼ばれてお城へ行っているわ」


「え゛っ・・・!?」



どう言う事だろう、国にバレない様にワームを駆除する手筈だった。

見つからない様に夜に決行して、見事討ち取った。後はバレない様に鉱山を後にする予定で・・・それが何故・・・。


何か不手際があって、そこからバレたと言う事だろうか・・・?予定外の出来事に、軽く混乱する。国の意向を無視しての作戦は、国賊と見られてもおかしくは無い。もしかしたら、2人は永遠に帰って来ないなんて────・・・



「戻ったぞ」


そんな私の最悪のシナリオは、モーゼさんの帰宅の声に秒で払拭された。


「お帰りなさい。メグミさん、目が覚めているわよ」


「本当か?!」


「ええ、まだベッドの上だけれど。先に夕飯にしましょう?ジルニードさん、メグミさんに持って行って下さる?」


「あぁ」


隣の部屋から聞こえる3人の会話。良かった、2人とも元気な様だ。

少しして、夕食を乗せたトレーを手にしたヴィクターさんが部屋に入って来る。



「調子はどうだ?」


「お帰りなさい。調子は、普通・・・ですかね?正直、良く分からなくて」


サイドテーブルにトレーを置くと、ヴィクターさんはシーツの上に投げ出していた私の手を取る。


「ポーション、効いたみたいだな」


「え?」


「爪も生え揃っている。手が1番酷い有り様だったからな・・・次いで左肩。持っていた上級ポーションを全て振りかけた。お前の体力なら反動を受けないと思ってな・・・」


「ありがとうございます。すみません、貴重な物を使わせてしまって・・・」



通常のポーションに比べ、性能も圧倒的に良いが値段も跳ね上がる上級ポーションを、全て使わせてしまった。



「いや、謝るのは俺の方だ・・・まさか、ワームが2体居るとは・・・気が付かなかった俺の失態だ」


「・・・え??2体、ですか?ワームが??」



予想外の言葉に思わず聞き返す。



「そうだ、俺が最下層で倒した物とは別の個体が居た。お前が戦ったやつだ」


「てっきり、私と戦った?ワームはヴィクターさんから逃げて来たものだとばかり・・・」


確かに、下層へ続く坑道から出て来た筈。



「俺が倒したワームが、終盤に変わった声で鳴いた時があった。恐らくアレは、身を潜めていたもう一体に危険を知らせ、逃す為の物だったのだと思う。途中の横穴かどこかに隠れ、上の階層へと登ったは良いが、偶然集積場へ続く道を選んでしまった」


「なるほど、それで私達と出くわした訳ですね・・・」


そう考えると、納得だ・・・ワームも驚いただろう、侵入者から逃げた先にまた侵入者が居たのだから。



「事態に気付き、急いで集積場に向かったが・・・俺が手を出す前にお前がワームを倒した。まさか、上に投げ飛ばすとは・・・あり得ないスピードで投げ飛ばされていたぞ」


「え、そうなんですか??無我夢中で、放り投げたのは覚えているんですが、速度迄は覚えているいませんね・・・すみません、素材も取れないくらいにペシャンコにしてしまって・・・」


「気にするな、一度お前をここに運び込んだ後再度最下層に出向き、俺が倒した方の素材は回収出来たからな。ただ・・・」



区切るように言い淀むヴィクターさんの次の言葉を待つ。


「恐らく、ワームはツガイで居座っていたらしい。横穴の中に卵が産み付けられていた。恐らく1箇所だけでは無いと思い、まぁ・・・結果としてドルガニル側に説明し、調査隊を組ませて貰った」


「あ、ドルガニルにはバレた訳じゃ無くて・・・」


「モーゼ殿と俺で、上に掛け合った。初めは怪訝そうにされたが、脅威だったワームはもう居ないと分かり、調査隊の派遣に応じてくれた」


「調査の結果はどうでしたか?」


「あぁ、予想した通り数箇所で同様の産卵が見られた。ここ2日でその辺りを片付けて来た所だ」



駆除を目的とするならば、徹底的に。ワーム本体は当たり前として、卵も根こそぎ駆除しなければ意味が無い。

これで、ドルガニルの脅威は完全に去ったと言う事になる。


一件落着と言っても良いだろう。





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