No.102 今日からお世話になります!
No.102 今日からお世話になります!
「────では、お召し物をお脱ぎになって下さい」
「・・・・・・・・・えっ・・・?」
「湯浴みのお手伝いをさせて頂きます、メイドのフレアと申します」
ここまでの案内役の方では無いのだろうか?無事お風呂の場所に辿り着けたので、後は入るだけなのだが・・・お手伝い、とはどう言う事だろう。
「あ、メグミです。えっと?お手伝いとは、何でしょうか?」
「はい。ジルニード様より、メグミ様のご入浴を手伝う様、仰せつかっております」
「手伝い・・・あっ、お湯問題ですか??それなら、魔力を流して頂ければ自分で・・・」
「いえ、これ迄の長旅でお疲れが溜まっていらっしゃるでしょうから、ゆっくり出来る様にお世話をする様にと・・・ご心配には及びません。私は現在このお屋敷にて、奥様やリスティラ様の沐浴もお手伝いさせて頂いております。どうぞ、身を委ねて頂けますよう」
「え、あ、そう・・・なんですか・・・」
もしかして、メイドさんに洗って貰うのが一般的なのだろうか?
そもそも、お屋敷大きさ、執事、メイドと、まさに富裕層の定番が並んでいる時点で、この流れは至極当然と言えるのかも知れない。
本当なら断固拒否をしたい所なのだが、ヴィクターさんのご厚意、仕事を指示されたフレアさん、お風呂に入りたい私が、それぞれの思いを抱えた状態。
ここで導き出すべき、最適解は────・・・
「えっと、では・・・基本的に1人で出来ますので、背中をお願いできますでしょうか?」
「お背中だけで、宜しいのですか?頭の先から指先に至るまで、出来るように教育を受けておりますが・・・」
「いえいえいえ、背中だけで大丈夫です!あ!では、肩を少し揉んで頂けると嬉しいです!」
「承知致しました・・・」
消化不良と言う言葉が、頭の上に浮かぶフレアさんを何とか言いくるめて、どうにかこうにかお風呂を終える。
ちなみに湯上がりには、容赦なく全身を拭き上げられてしまった。
用意された寝間着に袖を通すと、今まで着たことの無い素材が肌を滑る。
まさか、これがシルク系素材・・・と言う物では?と感動していると「ジルニード様は先に部屋に向かうと伺っております。メグミ様、お部屋までご案内致します」と告げられ、フレアさんと共に2階の角部屋まで向かう。
装備や着ていた服をお持ちしますと言われたが、上着のフードにはウルが隠れている。
もし、フレアさんがウルに触れてしまったら大事だ。
上着以外の装備は全てマジックバッグに入れ、軽装具合をアピールして自分の手で抱え込んだ。
「こちらジルニード様の、ご私室にございます。私はここで失礼致します」
「あ、ありがとうございますっ。お休みなさい?」
「───!はい、メグミ様もごゆっくりお休み下さい」
入室を見届けるフレアさんに背を向け、ヴィクターさんの部屋の扉をノックすると、直ぐに返答がある。
「メグミです、失礼します」
中へと入りながら後ろを振り返ると、お辞儀をするフレアさんが見えたので、手を振り別れた。
「ゆっくり出来たか?」
「ヴィクターさん、フレアさんに何て言伝をするんですか・・・!冷や汗が止まりませんでしたよ・・・」
「ん?何の話だ?」
「お風呂で入浴のお手伝いの件です。このお家ではメイドさんのお仕事の一つだと思いますが、私は外部の人間なので・・・ああ言った恩恵には預かれません・・・と言うのもありますが、誰かと入るのはむしろ緊張してしまって・・・」
「そうなのか?母上や妹は、日頃の疲れが取れて、とても安らぐと言っていたが・・・すまない、そう言う物なのかと」
「いえ、慣れていらっしゃる方なら、最上級の待遇なんだと思いますが。私は、その・・・普通で大丈夫なので・・・でも、ヴィクターさんのご厚意には感謝します」
「いや、余計な気を回したな。今後は1人で利用出来る様にしよう」
その場の空気が何とも言いがたい物になった瞬間、部屋にノックが響く。
「入れ」
「失礼致します。ジルニード様、ご夕食をお持ちしました。メグミ様もご一緒で宜しかったでしょうか?」
「あぁ、ありがとう。一緒に取るつもりだったから、ここに。メグミ、遅い夕食だが席に着いて食べよう。荷物はそこのソファーに置くと良い」
「は、はいっ!頂きます!」
「マナーは、気にしなくて良い。好きに食べてくれ」
ウルを驚かせない様に、そっと上着ごとソファーに置いた後、ビトレーさんによってテーブルに並べられた夕食を2人で食べる。
今日はヴィクターさんもお酒は飲まれず、グラスに透明な水が減っては注がれを繰り返す。
お腹の空いていた私は、あっと言う間に皿の上を空にし、食後の紅茶を早々にサーブされてしまった。
「お味はいかがでしたでしょうか?」
「とても美味しかったです!有り難うございました」
「それは何よりでございます。ジルニード様のお連れの方をお迎えするのは久しく、厨房が張り切っておりましたので。後ほどご感想を伝えて置きます」
「そうなんですね。────そう言えばこのお借りした寝間着ですが、とても肌触りが良いですね!何で編まれた生地ですか?」
「あぁ、それはラガルレットの糸で編まれた生地だな」
「え!!?」
"ラガルレットの糸"その聞き覚えしか無いワード。忘れもしないD級昇格後に受けた依頼で、散々弄ばれたあの魔物・・・もとい精霊。
糸は全て回収後にギルドへ買い取って貰った。確か防具の素材の他に、貴族にも人気のあると言う話だった。
「こ、これが・・・あの糸を使った服・・・」
滑らかで、サラサラと肌を撫でるその心地良さたるや、着用している私が一番実感している。
「そちらもお気に召して頂けたようで何よりです。ジルニード様からご帰還の便りを頂き、内容を確認した時は驚きましたが、成る程メグミ様の為でしたか」
「ビトレー」
「おや、失礼致しました。少々お喋りが過ぎた様で・・・ささ、ジルニード様も紅茶をどうぞ。私は食器を下げますので、後はお2人でごゆっくりとお休み下さい。ティーセットは明日の朝に取りに伺います」
「あぁ、遅くまですまなかった。明日はモルドーは通常か?」
「はい、朝より執務を行う予定となっております」
「ならお前は、いつもより3時間遅く起床し行動すると良い。湯殿に居たメイドにもそうする様に伝えてくれ。俺がこの時間まで世話をさせたと執事長に伝言を残しておく」
「勿体ないお言葉です。しかし有り難く頂戴致します。ではジルニード様、メグミ様、失礼致します」
皿を乗せたサービスワゴンを押し、最後のドアノブの閉まる音に至るまで、全ての所作が私達に配慮された静かな物だった。
「もしかして、入り口の所で名乗っていないにも関わらず、ビトレーさんが私の名前をご存じだったのは、先に詳細を手紙で送られていたと言う事ですか?」
「・・・・・・・・・まぁ、そうだな」
「この寝間着も、ラガルレットの一件があったからですか?」
「・・・・・・・・・聞こうとするな。全てを答え合わせされると、さすがに具合が悪い・・・・・・」
「あっ!!すみません・・・つい・・・」
質問の殆どを返してくれるヴィクターさんに、ついつい事細かく不要な部分まで尋ねてしまう。
「でも・・・ご実家に滞在する間、居心地が良くなるようにして下さったのですね。ありがとうございます」
「・・・その前向きな性格はお前の長所だが、思った事や感じた事を、そのまま言葉にし過ぎだ・・・・・・もっと、気付かなかった、もしくは気のせいだったと・・・素知らぬ振りを────・・・・・・いや、何でも無い。今後はこちらで上手くやる」
バツの悪そうに、後頭部を軽く触るヴィクターさん。普段余り見た事の無いその仕草に思わず目線が縫い止められ、話の内容が全く頭に入って来ず反応が遅れる。
「────え゛・・・今、何と言われましたか?すみません、ぼんやりしてまして」
「・・・はぁ・・・屋敷へ着く前に、俺が自分で言った事を思い出しただけだ。引き続き、目標に向かって進むように!以上だ。明日も街の散策予定を立てただろう?隣の部屋が準備されているから、もう休め」
「え!?」
疾うに飲み終わった紅茶、程よく食事が入り落ち着いた胃腸と、ほのかな微睡み。
寝る為の条件はいつの間にか整っていた。
加えて明日の予定を盾に、話を切り上げるには最適なタイミングで・・・
一切の喰い下がりを認められる事無く、ウルと共に部屋から退場させられてしまった。
「仕方ないね・・・ウル、私達も寝よっか」
隣の部屋はヴィクターさんの私室と違い、天蓋の付いた来客用のベッドに真新しいシーツ。
滞在に必要な家具と、うっすらと灯るルームライト。
灯りを便りに、ベッドへ近寄りウルを降ろす。
「もう出ても良いよ」
「キュルルル・・・」
声を掛けると、待ってましたとフードから伸び出るウル。
「お腹減ってない?さっきデザートの果物をこっそり残して置いたんだけど・・・」
長く背伸びをしたのを見届けてから果物を差し出して見るが、匂いを嗅いだ後、プイッと顔を逸らす。
「あー好みじゃ無いかぁ・・・明日、王都を軽く散策するから、その時に食べたい物見つけようね。今日は一先ず休もうかな」
シーツの間に体を滑り込ませ、ウルを腕に呼ぶ。
「そう言えば、久しぶりのベッドだね。長旅お疲れ様、ゆっくり眠ってね」
グルグルグルと鳴る心地よい喉の音を聴きながら、私も眠りの淵へ落ちていった。
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星を授けて下さり有難う御座います!
また、ブクマもして頂き嬉しいです₍₍ (ง *´ω`*)ว ⁾⁾
引き続き、メグミの異世界生活を描いて参りますので、どうぞ宜しくお願いします!




