真之介のフォロー
「明日、うちの亜美たちと忘年会することになったから」
もうすっかり聞き慣れた、春香からの突然の電話だ。
「は? 俺は地元の友達と遊ぶから無理だよ」
「え? 来ないの?」
「一カ月も前から決まってたし。話したはずだよ」
「カップルじゃないの、私だけになっちゃうんだけど」
「そうか。仕方ないな」
「……」
「亮太って、そういうところあるよね」
「どういうところ?」
返事はない。
そのまま電話が切れる。
亮太はスマホを握ったまま、小さくガッツポーズをした。
なぜか、少しだけ勝った気分だった。
◇
亮太は地元の居酒屋にいた。
集まったのは、高校時代の友人や、その友人たち。
春香の飲み会とは違い、誰に気を遣う必要もない。
店に入ると、高校時代の悪友、雅也が先に座っていた。
「亮太、久しぶり」
「うい、久しぶり」
二人は笑いながら、軽く拳をぶつける。
最初は、いつものような雑談だ。
仕事の愚痴。
学生時代の思い出話。
誰が結婚したとか、別れたとか。
そのうち、自然と亮太の話になる。
雅也が唐揚げをつまみながら聞いてきた。
「あの可愛い彼女、どうしたよ」
「玲奈なら、七カ月くらい前に別れたよ」
「マジか。もったいない」
「うん。なんか冷え切っちゃってね」
亮太は簡単に別れの経緯を説明する。
一目ぼれした亮太は、玲奈をすごく大事にしていた。
そして、全ての時間を玲奈のために使っていた。
いつの間にか、それが玲奈の重荷になっていたらしい。
「なるほどね」
雅也がおしぼりで手を拭く。
「で、今の彼女とはどうなの?」
亮太は首を横に振った。
「良いところが、お姉さん以外に見当たらない」
笑いが起きる。
「もう別れた方がいいんじゃないのか」
雅也が笑いながら言った。
「まあ、紹介してもらったから」
その時、仕事を終えた真之介が合流する。
「亮ちゃんに雅やん。久しぶり~」
いつも通り、高いテンションで現れた。
「遅いぞ、真之介」
真之介のジョッキが届き、もう一度乾杯をやり直す。
「春香ちゃんとは、うまくいってる?」
真之介がいきなり聞いてきた。
「いや、もう限界かもしれん」
「今日だって、こっちをすっぽかして来いって言われたよ」
「マジか……」
真之介は苦笑する。
「この前、春香ちゃんと電話で話したんだけどさ」
「お、なんか言ってた?」
亮太が少し身を乗り出す。
「いつも亮ちゃんを怒らせちゃうって、落ち込んでたよ」
「そうなの?」
「うん。大事にしてもらってるから、つい甘えすぎるんだってさ」
「……」
亮太は考える。
春香は、そんなふうに思っていたのか。
「もう少しだけ、様子を見てあげたら?」
真之介は穏やかな声で続ける。
「春香ちゃんも、少しずつ変わるかもしれないし」
亮太も、それ以上は何も言わなかった。
ただ、真之介の言葉だけが妙に耳に残る。




