表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/22

エリナへの想い

翌日。


亮太はエリナへメッセージを送る。


『彼女と別れました。話したいことがあります。会ってもらえませんか』


すぐに既読がついた。


亮太はスマホを握ったまま、返信を待つ。


しかし、何時間経っても返事は来ない。


意を決して電話をかけてみる。


呼び出し音が続いたあと、通話は切れた。


「もしかして、嫌われたのかも……」


亮太の顔から血の気が引く。



三日後。


亮太はエリナのことが気になり、ほとんど仕事にならなかった。


――カヤちゃん達なら何か知ってるかも。


『エリナのことで相談があります。会ってください』


メッセージを送ると、すぐに『OK』のスタンプが返ってきた。


その日の夜。


待ち合わせたファミレスへ、カヤとマリがやって来る。


「久しぶり」


二人が軽く手を振った。


亮太は、これまでの経緯を説明する。


カヤとマリは顔を見合わせた。


「それで、エリナに送ったのがこれ?」


カヤがスマホの画面を見る。


マリは小さく首を横に振った。


「亮太くん。エリナね、振られてからものすごく落ち込んでたんだよ」


「うん……」


「まだ亮太くんのことは好きだと思う」


カヤが続ける。


「でも、いきなり彼女と別れたから会ってほしいって言われても、怖いんじゃないかな」


「怖い?」


「エリナ、半年前に彼氏が元カノと浮気して別れてるの」


「え……」


「だから、亮太くんを本当に信じていいのか分からないんだと思う」


マリが亮太のスマホを指さす。


「このメッセージだけ見ると、自分の都合しか書いてないように見えるし」


亮太は黙り込む。


「彼女と別れたんだから、今度は付き合ってくれるよねって思われたのか……」


前の彼女のことを思い出す。


あの時も、自分はこんなにしているのに、どうして応えてくれないんだと思っていた。


そして、うまくいかない理由を全部、相手のせいにした。


「どうすれば、エリナに信用してもらえるかな」


カヤとマリが腕を組む。


だが、すぐには答えが出ない。


しばらくして、亮太が顔を上げた。


「分かった」


スマホを手に取り、画面ロックを解除する。


続けて、指紋認証や顔認証も外していった。


カヤとマリは、不思議そうにその様子を見ている。


亮太はスマホを二人へ差し出した。


「これを、エリナに渡してほしい」


「え?」


「全部、この中に入ってる」


カヤが目を丸くする。


「マジで? スマホごと渡すの?」


「春香とのメッセージのやり取りを見てくれたら、全て分かると思う」


マリも驚いた顔でスマホを見る。


「本当にいいの?」


「いい」


亮太は頷く。


「三日後。前に待ち合わせた場所へ、スマホを返しに来てほしいって伝えて」


カヤとマリは、もう一度顔を見合わせた。


それから、静かに頷く。



三日後。


駅前の待ち合わせ場所に、亮太は立っていた。


何となくズボンのポケットを探る。


――あ、そうか。スマホないんだった。


時計を見る。


約束の時間を過ぎても、エリナは現れない。


さらに一時間が経ち、夜の九時になった。


――来ないか。


亮太が諦めかけた、その時。


横から人影が近づいてくる。


エリナだった。


「……ごめんね。遅くなって」


すでに泣きそうな顔をしている。


亮太は無理に笑った。


「ううん。来てくれてありがとう」


エリナはバッグからスマホを取り出し、亮太へ差し出す。


三日ぶりに、自分のスマホが戻ってきた。


二人の間に、長い沈黙が流れる。


「今日、車で来てるんだ」


亮太が先に口を開く。


「よかったら、家まで送るよ」


エリナは小さく頷いた。



エリナの家へ向けて車を走らせる。


もうナビを見なくても、道を覚えていた。


最初は軽い雑談を交わしていたが、亮太にはずっと聞きたいことがあった。


「スマホ……見た?」


エリナが頷く。


「ごめん。ほかに、どう伝えたら信用してもらえるか分からなくて」


エリナは少し笑った。


「カヤとマリから渡された時は、びっくりしたよ」


「だよね」


「でも……」


「でも?」


「嬉しかった」


亮太は思わずエリナを見る。


信号が青に変わり、すぐに正面へ向き直る。


「春香とは、ちゃんと別れた」


「見てもらえたなら、分かると思うけど」


エリナは静かに頷いた。


「亮太くん、大変だったんだね」


「うん。かなり」


亮太は大きく頷く。


「だからってわけじゃないけど、またエリナに会いたいと思って」


「うん」


少しの沈黙。


「どうして、私が告白した時に言ってくれなかったの?」


亮太は少し考える。


「もし、あの時。自分の想いを伝えてたら自分勝手だと思われる気がして」


「誰かを傷つけてまで、人を好きになってもいいのか分からなかった」


エリナは亮太の横顔を見つめる。


「今は、どう考えてるの?」


「今は……」


亮太はハザードランプを点け、公園の脇へ車を停めた。


エリナへ向き直る。


「どうやったらエリナを落とせるか、一生懸命考えてる」


エリナは思わず吹き出す。


「じゃあ、頑張って」


「応援してる」


笑顔でそう言った。


短い沈黙。


亮太は、ゆっくりとエリナへ手を伸ばす。


エリナは逃げない。


肩へ手を回すと、そっと目を閉じた。


二人の唇が重なる。


キスが終わる。


二人とも、恥ずかしそうに見つめ合った。


「じゃ、じゃあ送るね」


亮太は前を向き、車を発進させる。


しばらくして、エリナが口を開いた。


「そういえば、亮太くん」


「うん?」


「一つだけ確認しておきたいことがあるの」


「何?」


「志乃さんって人は、大丈夫なの?」


亮太は顔を強張らせ、エリナを見る。


「そ、そこは詳しく説明させて」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ