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亮太くん助けて

亮太はすぐにエリナへ電話を入れる。


「もしもし、何かあったの?」


「亮太くん、こんな遅くにごめんね」


「ううん」


「あのね、マリが帰る途中で調子悪くなっちゃってさ。動けなくなったの」


「え、大丈夫なの?」


「たぶん貧血だと思うんだけど……近くで車を持ってるの、亮太くんしかいなくて」


「分かった。すぐ行くよ。待ってて」


亮太は家を飛び出した。


数十分後。


路上で、エリナに支えられて座り込んでいるマリを見つける。


顔色は悪いが、意識ははっきりしていた。


亮太は二人のそばに車を停め、マリを支えながら後部座席へ寝かせる。


車内に放置していた、春香にもらった明るい色のシャツを丸め、枕代わりにした。


エリナを助手席に乗せ、まずはマリの家へ向かう。


郊外まで一時間ほどかかったが、無事に送り届けることができた。


「じゃあ次は、エリナちゃんを送るね」


ナビに住所を入力し、再び車を走らせる。


「ごめんなさい。急にお願いしちゃって」


「いいよ。気にしないで」


「亮太くんは、家にいたの?」


「えーと。実は友達が誕生日会をしてくれて、帰ったところ」


「えっ、誕生日だったの? 知らなくてごめんね」


「いやいや。もう日付変わったし、気にしないで」


亮太が笑う。


エリナが時計を見ると、ちょうど午前零時を回ったところだった。


「二人は休日出勤?」


「うん。来週、大きなイベントがあるから、それまで忙しくて」


「そっか。みんな大変なんだな」


道路を走る車も、ほとんど見かけない。


会話を続けるうちに、エリナの返事が少しずつ遅くなっていく。


信号待ちで隣を見る。


助手席で小さく船をこいでいた。


――疲れてるんだな。


二十分ほどして、目的地へ到着する。


「エリナちゃん、着いたよ」


エリナがはっと目を覚ます。


「ごめんなさい。私、寝ちゃったみたい」


「謝らなくていいよ。仕事で疲れてたんでしょ」


そこでエリナは、自分にブランケットが掛けられていることに気づいた。


亮太を見ると、彼は少し気まずそうに目をそらす。


「ありがとう」


エリナは小さな声で言った。


彼女を見送り、亮太も自宅へ戻る。


家に着く頃には、深夜二時を回っていた。



数日後。


亮太と春香は、レストランへ向かって歩いている。


最近、春香は「ピュアキャラ」を名乗るようになっていた。


街中でCMソングを歌いだしたかと思えば、芸人のギャグを真似する。


そして口癖のように言う。


「私、中身まだJKなんだよね」


聞いていて悲しい気持ちになった。


だったら、せめて外見もJKであってほしい。


さすがに痛すぎて、少しだけ注意した。


「そのキャラ設定、いつまで続けるの?」


亮太が聞くと、春香は真顔で答える。


「それを温かく見守るのが大人なんだよ」


「それは見守るんじゃなくて、ネグレクトって言うんだよ」


レストランに入ると、春香は料理の写真を何枚も撮り始める。


撮り終えた瞬間、亮太の皿へフォークを刺した。


「いただき!」


そう言って、特大のエビフライを一本丸ごと持っていく。


春香は笑いながら食べ始めた。


亮太は何も言わず店員を呼び、同じものを注文し直す。


もう何のために春香といるのかすら分からなかった。



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