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銀色の少女と僻み男  作者: ぽん
七章 勘違いはしたくない
57/63

三人の帰路

 僕と倫さんは西山ちゃんが通っている中学校に到着した。

 正門は人目につくこともあり、人の出入りが少ない裏門の近くで待つ。西山ちゃんが正門から帰るようならそっちに行けばいい。

 時刻は現在、午後四時四十分。約束の時間まであと二十分ある。九月はまだ日が長く空は青い。

 倫さんが校舎を眺めながら言う。


「ここに陽くんも通ってたんだよね?」

「はい。歩いて二十分、いや十五分くらいかな」

「へー、じゃあここから割と近いんだー。陽くんのお家」

「近めですねー」


 たわいない話をしながら待ち時間を過ごす。

 ここに来る道のりで結構中学生とすれ違った。まだ学校に残っている人は少数派だろう。

 僕は校舎に背を向け、目についた住宅の塀を眺めながら倫さんに尋ねる。


「あのー、どうして今日は協力してくれたんですか?」


 シンプルな疑問である。地味に気になっていたのだ。


「えー、なんかー、私っていつも陽くんに助けられてばっかりだからさー。何かお返ししたいなって」


 最初の方は少し言い淀んだ感もあったが、どうやらそういう理由らしかった。

 しかし僕が倫さんを助けているかは疑問である。


「お返しはもう十分にもらってるので大丈夫ですよ」

「え? そう?」

「はい。あんまりこんなこと言いたくないんですけど、」

「待って。その入り方やだ」


 倫さんはしかめっ面で制止してきた。

 僕は至って真面目な顔で続ける。


「大丈夫です、悪いことは言いません。……でも正直こんなこと言っていいのかわからないんですけど、」

「ちょっとー! わざと言ってるじゃん!」

「いやいやまさか! ……まあ、できることなら言わないほうがお互いのためだと思うんですけど、」

「もうやだー! 聞きたくない!」


 僕の話の入り方が嫌すぎて倫さんは耳を塞いでしまった。露骨に可愛らしい反応するなこの人。抱きしめていいか?

 彼女のご所望通り結論から話す。


「倫さんと喋るのが楽しいから、会話してるだけでもうお返しになってるんですよ」


 その答えを聞いた倫さんは、戸惑ったような顔をした。


「……ふーん。そういうことね。え、なんでさっきあんな言いづらそうにしてたの?」

「いや、なんか話してくれるだけでいいってあまりにも“アレ”かなって」

「あー、まー、そーかもね。ちょっと“アレ”かもね」


「“ピュア”ですよね」

「“陰キャ”だよね」


「今ちょっと倫さんのこときらいかも」

「ごーめーん! でも自分でピュアって言う?」


 そうして会話を楽しんでいると、あっという間に約束の時間の五分前になった。連絡のためスマホでメッセージを打ち込む。


「もう、着いてるよ。裏門にいるけど、正門の方がいいならそっちに行くよ。っと」

「そういえばなんにも聞いてなかったけど、どんな子なのー?」


 僕も詳しくは知らないが、知っている限りのプロフィールは共有しておこう。


「えっとですね、名前は西山千歳ちゃん。中学一年生。黒髪ロング。性格は極めてクール。きれい系。友達想いの子。くらいですかね僕が知ってるのは」


 僕が説明している間、倫さんはひとつひとつ頷きながら聞いていた。


「クールな黒髪ロングっ子ね、りょーかい。ちなみに聞きたいんだけど私は何系?」

「え、ギャル系」

「ギャル!?」


 意外にも倫さんは驚いていた。ギャルという自覚がなかったのか、それともモロから教えられたギャルの定義に間違いがあったのか。モロ曰く、一軍女子は全員ギャルとのこと。ちょっと疑わしいか、この定義は。

 一応軌道修正を試みる。


「かわいい系かきれい系かで言うと、きれい系ですかね」

「きれい系かー……」


 倫さんはなんとも言えないリアクションをしていた。自分ではかわいい系だと思ってるのかな? というかその質問ができる時点ですごいな。相当自分に自信がないと無理だ。

 微妙に気まずい時間を過ごしていると返信がくる。もう裏門に向かってますとのこと。


「もう来るみたいですよ」

「あ、じゃああの子かな。……え、顔良すぎない?」


 倫さんの声を聞いて校舎の方を見ると、こちらに向かって歩いてくる女子生徒が目に入る。

 長い黒髪をなびかせた少女は、僕らを認めると小走りにこちらに寄ってきた。


「お待たせしました、お兄さん。こちらの方は……」


 西山ちゃんは倫さんの方を一瞥しながら僕に聞いてきた。


「紹介するね。この人は一ノ瀬倫さんって言って僕の高校の先輩」

「はじめましてー、一ノ瀬倫ですー。よろしくねー」


 倫さんの自己紹介を受けて、西山ちゃんも挨拶をした。


「はじめまして、西山千歳です。あの、どういった経緯で一ノ瀬さんはこちらに……」


 至極当然の疑問を西山ちゃんは発した。

 僕が答えるより先に倫さんが説明を始める。


「いきなり来ちゃってごめんねー。なんか陽くんが千歳ちゃんの後ろについていくって言っててー、一人でそれやってると陽くんが不審者みたいだから、私が付き添うことにしたんだー」

「あ、そういう意図だったんですか」


 事前に聞いていたものとは違った解答が出されたので思わず口を挟んでしまった。

 確かにそう言われてみると僕がストーカーになってるように見えるかもしれない。西山ちゃんが誤解を解いてくれるとは思うが、そもそも誤解されることが面倒だ。

 倫さんの言葉を僕が引き継ぐ。


「今倫さんが言ってくれた通り、西山ちゃんの後方に構えて視線を感じる原因を探ろうと思うんだけど、どう?」


 その提案に西山ちゃんは逡巡した様子を見せた。


「……いいと思うんですけど、今回は私と一緒に帰ってくれませんか」

「もちろんいいよ。ちなみに理由は?」

「お兄さんたちも視線を感じるかどうか試してほしいんです。私と同じ位置で」

「なるほど。それを先に確かめた方がいいか」

「はい。せっかく一ノ瀬さんに来てもらったのに申し訳ないですが……」


 気まずそうな顔の西山ちゃんに、倫さんは手を横に振った。


「全然気にしなくていいよー。私が勝手に来ただけだからね」

「お気遣いありがとうございます……では行きましょうか」


 西山ちゃんは倫さんに頭を下げると、前を向いて歩き出した。

 彼女を先頭にして、僕と倫さんは後ろで肩を並べて歩いている。今のところは視線も感じない。時々背後を確認してみるが、人影はない。

 さて、歩きながら詳しい話を聞こう。つやつやな黒髪が目を引く後頭部に声をかける。


「西山ちゃん、視線を感じるようになった原因とかに心当たりある?」

「……ありません。夏休みが明けてから視線を感じるようになりました」


 緊張が滲んだ西山ちゃんの声に空気が重くなる。

 僕は続けて質問する。


「夏休み中に何かあった?」

「何か……わからないです。例えば、怪しい人に声をかけられたとか、そういうことはなかったです」

「そっか」


 そういうことがあったら僕に相談せずに家族に相談しただろうしな。とはいえストーカーが存在したとして必ずしも接触しているとは限らない。

 僕が思考の海に潜っていると、倫さんが明るい声で西山ちゃんに聞いていた。


「ごめん、全然関係ないこと聞いていい? 千歳ちゃんはどうして陽くんをお兄さんって呼ぶの?」

「私の同級生のお兄さんだからです」

「あ、そうなんだー。陽くん妹か弟がいるんだー」


 倫さんに目を向けられたので、それに答える。


「弟がいますよ」

「へぇー。その弟くんと千歳ちゃんは仲良いの?」

「いいえ。特に話すこともありませんので」


 クールすぎる。最近遭遇した女子の発言の中で一番クールかもしれない。

 そういえば、僕の弟の京介はこの子に好意があった気がする。明らかに脈なしだ。

 ……まさか。いや、まさかな。

 後ろをちらっと振り返る。誰もいない。

 前に向き直ると、西山ちゃんが前を向いたまま聞いてきた。


「お二人はどういう関係なんですか?」


 その質問には倫さんが答えた。


「友達だよ? 逆にどう見えたー?」

「……同じ部活の人とか」

「あ、それくらいの距離感に見えたんだ」


 確かに僕と倫さんが接点を持つきっかけって同じ何かに所属していないと発生しなそうだもんな。部活やら委員会やらバイトやら。

 ここを掘り下げると霊の話も関わってくるので、別の話題を提供する。


「西山ちゃんってなにか部活やってる?」

「弓道部です」

「うわー似合うー!」


 倫さんが感嘆していた。確かに似合う。袴姿はそれはもう凛々しいことだろう。

 気になるのは部活が終わる時間だ。


「部活が終わるのって何時くらい?」

「六時です」

「おっけー。じゃあ明日はそれくらいの時間に行くね」


 僕がそう言うと、西山ちゃんは足を止めてこちらを振り返った。その表情はいつものすんとしたものだが、少し目が開かれているようにも感じた。


「……明日も来てくれるんですか?」

「え、うん。解決するまで行くつもりだけど、もちろん西山ちゃんの都合に合わせるよ。行かないほうがいいなら行かないし」

「いえ、ありがとうございます。そんなにしてくれると思わなくて……」


 僕の提案は意外だったようである。乗りかかった船だ。最後まで付き合おうじゃないか。

 一応、補足はする。


「でも倫さんは忙しいから基本僕だけね。そこは頼りなくなっちゃうけどね」

「いえ」


 西山ちゃんは短い言葉で否定してくれて、再び歩き出した。

 そして倫さんはあっけらかんと言う。


「えー? 別に私も付き合うけどー? 暇だし」

「倫さんにはここぞってときに来てほしいですね。それこそ僕が後ろから付いていくときとか」

「んー、おっけ。多分それ明日だよね」

「はは、そうかもですね」


 今日の結果次第ではあるが、確かにそういう流れになりそうな気がする。

 こうして話している間も視線を感じたりはしていない。倫さんもそうだろう。


「西山ちゃん、今のところはどう?」

「……特に何もないです。お兄さんたちと一緒だからかもしれないですね」


 いつもと違う状況というのは結果に大いに関わってきそう。多分下校時刻もいつもと違うだろうし。

 日が沈み始め西の空は夕焼け色になってきた。地面に落ちる僕らの影も伸びてきている。


「陽くんってさー、辛いの好き?」


 唐突に倫さんからそんな質問を投げかけられた。多分倫さんは沈黙の時間が苦手と見た。


「好きですよ」

「え? ごめん聞こえなかった」

「好きですよって」

「私も好きー。やっぱり“合ってる”ね?」

「早計って言葉はこういうときに使うんでしょうね」

「早計じゃなーいー」


 倫さんは不服そうに言った。

 “合ってる”とは倫さん特有の感覚のことである。人と話したときに“この人とは合うor合わない”かが感覚でわかるらしい。

 倫さん曰く、合う人は少ないのでそういう人とは友達になりたいとのこと。僕も合っているらしい。身に余る光栄ゆえに、ちょっと信じがたいなと思っている。

 僕と倫さんが会話をしていると、西山ちゃんがじとっとした目を向けてきた。


「お二人は仲良しなんですね」

「うん。結構仲は良い方だと思うよー」


 倫さんが朗らかに答えていた。その淀みなさが嬉しい。僕だったらしどろもどろになっていただろう。

 続けて西山ちゃんが尋ねる。

 

「じゃあお互いのことなんでも知ってる感じですか?」

「それがねー、全然知らない。だから味の好みを聞いたんだよねー」


 倫さんの言葉に僕はハッとさせられた。確かに僕は倫さんのことをあまり知らない気がする。

 とはいえそれは必然かもしれない。相対的に会話は多いが、絶対的に多いわけじゃないのだ。

 その倫さんの話を聞いた西山ちゃんがさらっと言う。


「意外と些細な嗜好の違いで喧嘩になったりしますよね」


 ややビターな物言いだ。大人びてるなぁ。


「喧嘩まではわからないけど派閥が分かれるのはあるよねー。二人は目玉焼きに何かける?」


 派閥が分かれるものの定番とも言える質問を倫さんが繰り出してきた。


「僕は醤油ですね」

「私も醤油です」

「私も醤油ー。みんな一緒だ」


 三人居て揃うのは結構珍しいような気がする。モロなんかはソースと言っていて、逆張りにも程があるとトシと二人でげらげら笑った記憶がある。

 倫さんが続けてお題を出す。


「じゃあ、朝はパンかご飯どっち派? 食べないとかいう答えを出した人はくすぐりの刑に処す」


 それはご褒美かもなーと思いつつすみやかに答える。


「パンですかねー」

「私はご飯です」

「あ、分かれた。私はパン。陽くんと一緒だ」


 えーなんか倫さんと一緒でうれし~、なんて思っていると、西山ちゃんがじろりと僕らのことを見ていた。もしかすると「私が深刻な悩みを抱えてるのに何を和気あいあい話しとるんじゃ」という怒りを覚えているのかもしれない。

 ちょっと緊張感に欠けていたか、と自省する。


「今度は私からもいいですか?」

「うん、聞きたい聞きたい」


 驚くべきことに今度は西山ちゃんがお題を提供するようである。怒ってるわけじゃないのかな。


「男女の友情って成立すると思いますか?」


 およそ西山ちゃんらしからぬお題で驚く。倫さんはにやりと笑っていた。


「するでしょー」

「する派ですかねー僕も」


 あまり深く考えずに主張した。

 このテーマ自体はネットやテレビでも話題に上がることは多いが、それを熱心に眺めたことはないし考えたこともない。なぜなら「女子と接点がないのにそんなの考えたところで(笑)」という思考が常にあったからだ。

 しかし今となっては倫さんをはじめ吉岡さんや辻村先輩等の接点ができた。改めて男女の友情について考えるのも良いかもしれない。

 楽しげな倫さんとは対照的に、西山ちゃんはいたってクールだった。


「そうなんですね。私は成立しないと思ってます」

「へぇ! なんでそう思うのー?」


 倫さんは興味津々の様子で西山ちゃんに聞いていた。

 西山ちゃんはいつもの無表情で答えた。


「友達になれる時点である程度相手のことを好きになる要素があるのかなと思うので」

「恋愛感情まで行っちゃうんだ?」

「経験がないので予想ですけど」

「え、男の子の友達いない感じー?」

「……なんか子供っぽくないですか。同級生の男子って」

「んふ! わかる、なんかはしゃいでるよねー。私、高校でもそう思ってるもん」


 瑞々しいガールズトークを聞きつつ、ちょっとの気まずさを感じて周囲に目をやる。

 同級生が子供っぽく思えるということは、比較対象がいるのだ。この二人は年上の落ち着いた男性を知っているのだろう。

 というか倫さんは今でも同級生が子供っぽく見えていると言うなら、後輩の僕なんかショタくらいに思ってるかもしれない。僕と倫さんっておねショタなのかもしれない。


“なにかおぞましいことを考えてるわね……”


 脳裏でトリカのドン引きした声を聞いて冷静になっていると、交通量の多い通りに出た。

 僕は西山ちゃんの家を知らないのでどこに行くのかわからない。しかしこの通りに出るなら正門から行ったほうが早かったなと思う。

 それとなく聞いてみる。


「西山ちゃんの家って近いの?」

「家から学校まで歩いて二十五分くらいです」

「あー、ギリチャリ通できない感じの距離だ」

「そうなんです。ちなみに今日はいろんな道を通ってます。意図的に」

「あ、そうなのね」


 西山ちゃんもなにか検証をしているらしい。とりあえずまっすぐ家に向かっているわけではないことがわかった。

 コンビニや交番を通り過ぎ、ドラッグストアや牛丼屋などが目に入ってくる。このあたりの道ならあんまりストーカー行為もしづらいだろうと思う。

 そう思いながらチラリと後ろを見ると、一人の男が歩いていることに気づいた。警戒していることもあってドキッとする。体格から察するに大人ではなさそう。なんなら中学生くらいに見える。

 冷静に前に向き直ると、袖をちょんちょんと引かれた。

 隣に目を向けると、倫さんが目だけで背後に人間がいることをアピールしていた。彼女も気づいたようだ。こくりと頷いて見せる。

 もちろん現状ではただ後ろにいるだけの人である。それを疑ったらあまりにも失礼だ。

 しかし疑惑の人間が現れたことで途端に緊張感が増した。これまで和気あいあいと話していたから薄れていたが、西山ちゃんの悩みは深刻なものなのだ。

 僕は二人に聞こえる程度に抑えた音量で声をかける。


「これ事前に言っとくべきだったけど、万が一ストーカーが確定したときは西山ちゃんと倫さんは人通りの多いところにダッシュで逃げてほしい。ストーカーは僕だけで対処したい」


 僕だけというのは正確ではない。実際はトリカを頼る。前みたいに風で吹っ飛ばしてもらおう。

 僕の要求に倫さんは渋い顔をしていた。あまり見慣れない顔だった。


「それは危なくない? 警察を頼った方がいいと思うけど」

「もちろんそのつもりですよ。最初の行動の話をしてます」


 トリカが魔法を使うところをこの二人に見られたくないのだ。だから最速で逃げてほしいのだが、倫さんは更に聞いてくる。


「どう対処するつもり? それだけ教えて」

「相手の行動を止める手段があります」

「それはなに?」

「バスケで鍛えた僕の瞬発力と持久力です。まず体当たりして動きを止めます」

「それって手段?」


 倫さんはかなり訝しげな様子だ。多分頼りないと思っているのだろう。実際、僕単体は非常に頼りない。

 僕が自嘲して笑いそうになったところ、西山ちゃんが口を開いた。


「……私達がいない方が都合が良いんですね?」

「んー、そう!」

「わかりました。そのときは全力で逃げます」


 めちゃくちゃ物分りがよくて助かる。多分、「僕だけで対処したい」に嘘を感じたのだろう。どう解釈したかは気になるが、逆に追及されると面倒なので聞けない。

 西山ちゃんとは対照的に倫さんは未だに納得いっていない様子だった。物言いたげに僕の顔を見ている。

 とはいえそうストーカーが確定するなんてこともないような気がするのだ。包丁を持って襲いかかってきたとかならわかりやす過ぎるが、そんな事態にはなってほしくない。


「西山ちゃん、次の道を右に折れてみてくれる?」

「わかりました」


 西山ちゃんは僕らの方は見ずに返事をした。彼女はすでに背後に人がいることに気づいているのだろうか。こんな提案をした時点で感づいてはいそうだ。

 右に曲がってしばらく進んだ。そろそろ後ろを振り返りたいが、ここで露骨にチラチラやると逃げられる可能性がある。ギリギリまで引き付けて確定させたい。


“付いてきてるわよ”


 脳裏にトリカの声が響く。

 トリカが背後を見てくれるのは非常にありがたい。トリカなら絶対バレない。最初からお願いしてもよかったな。なぜか頭からすっぽりと抜け落ちていた。


“それとね、言いにくいんだけど”


 ちょっと待って、その入り方怖い。


“ふふ、リンの気持ちがわかってよかったじゃない。後ろにいるのキョウスケよ”


 ……嫌な予感は当たってしまうものなのか?

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