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銀色の少女と僻み男  作者: ぽん
七章 勘違いはしたくない
55/63

お風呂で会議

「ほー、陽が女に嘘をついたのか」


 月子が興味深そうに言うのには反応せず、僕は過去のことに思いを馳せていた。

 嘘ってなんだ? 確かに嘘をつくことはままあるが、クリティカルな嘘をついた記憶はあまりない。嘘がバレたときが怖いからだ。


「美咲ちゃんに僕はどんな嘘をついてた? あんまり覚えてないんだけど」


 そう問いかけると、千歳の眉間にしわができた、ような気がした。今は無表情だ。


「……お兄さんはたくさん嘘をついてましたが、確実に嘘だったのはネズミの駆除の方法です。お兄さんは忌避剤を使ったと言ってましたけど、違うんですよね?」


 それは明確に僕がついた嘘だった。過去に美咲ちゃんの家にネズミの悪霊がはびこっていたことがあり、それをトリカや春待たちに頼んで退治してもらった事があった。事が終わった後、美咲ちゃんに対する説明として忌避剤を使ったと僕が嘘をついたのだ。実際にはトリカの結界と魔力弾によって殲滅された。

 しかし疑問がある。なぜそれが嘘だと彼女はわかったのだろう。


「違わないよ。ネズミ駆除の方法としてなにもおかしいことはないと思うけど」


 一応否定してみると、千歳の眼光がやや鋭くなった。


「そうですね。でもあのときのお兄さん、声が少し上ずってました。今も視線が落ち着かない様子ですし、嘘をつきましたよね?」


 この自信満々な物言いから察するに、彼女は嘘を見破ることに長けているようだ。僕の挙動を根拠にしているあたり霊とか魔力関連の裏付けがあるわけではなさそうだが、僕の嘘をピンポイントで当てている。


「仮にそれが嘘だったとして、なにか問題あった?」


 嘘だとあんまり認めたくないので質問に質問で返すと、千歳は意外にも首を横に振った。


「問題はありません。けど気になったんです。美咲は私に悩みを打ち明けてくれなかったし、家族にも理解を得られていなかったようでした。なのにお兄さんは手段はどうあれそれを解決した。凄いことですよ」


 嘘とは別のところでちょっと認識に齟齬がある。


「それね、僕が解決したってよりは僕の友達が解決した、の方が正しいかな。僕自身は大したことしてないんだよね。ん? これ前も言った気がするな」


 トリカとミカ、春待、辻村先輩、そして武蔵がほとんど解決したといっても過言ではない。

 僕の発言に千歳の表情は固まった。そして小さく息を吐いた。


「そう、だったんですか。単なる謙遜ではなく……」

「うん」


 僕の返事のあと、千歳は顎に手を当ててなにか思考していた。

 そして視線が僕に戻ってくる。


「……なら、そのお友達の方はどうやって解決したんですか?」

「え? それはだから、その友達が持ってる技術とかでネズミをやっつけたんだよ」

「具体的には?」

「えっと、網とか電気とか」


 結界と魔力弾を思い出しながら答える。

 なぜ最初からそう言わなかったんですか?と聞かれたらだいぶきついと考えていたが、千歳はそれ以上追及してこず、じっと見つめていた視線を弱々しく僕からそらした。


「……そうですか。お時間を取らせてしまってすみませんでした。私、帰ります」

「うん。気をつけてね」

「あと、やっぱり今後は西山と呼んでください」

「はい」


 千歳は、いや西山ちゃんはとぼとぼとした足取りで公園の脇に停まっている車に向かっていった。

 僕は離れていく傘を見届けながら月子に尋ねる。


「なんか失望された感ない? 名前で呼ぶなって格下げされたし」

「そうじゃな。期待外れといった顔をしておった」

「やっぱそうだよね?」


 二人で苦笑しつつ、公園の出口に差し掛かった西山ちゃんを眺めて話す。


「あれかなー、なんか悩み事があるのかな」

「おそらくそうじゃろな。なぜ聞いてあげなかったのじゃ?」


 聞くタイミングはいくらでもあったが。


「余計なお世話かなーって思っちゃったなー。僕に解決できることかもわからないし。でも聞くだけ聞けばよかったか」

「まだ間に合うぞ」


 公園から出た西山ちゃんに視線をやりながら月子は言った。


「間に合うけどさー、なんかここからダッシュで追いかけたら不審者みたいじゃない? それによく考えると僕がそこまでする義理もないし」


 僕の消極的な言葉に月子は顔をしかめた。

 そして低いトーンで苦言を呈される。


「陽よ。わしは情けない男は嫌いじゃ」

「おっけ、行ってくる!」

「ん」


 月子に背中を押され、僕は駆け出した。地面に溜まった水が跳ねるのも顔に雨粒が当たるのも気にせず一直線に走った。

 車まであと数メートルというところで西山ちゃんに追いつく。


「西山ちゃん! ちょっと待って!」


 寂しげな後ろ姿に大きめの声をかけた。

 びくっと傘が揺れ、彼女はこちらを振り返る。少し戸惑ったような顔だ。


「お兄さん? どうしたんですか?」

「はぁ、はぁ、あのさ、もしかして、悩み事があるの?」


 率直に尋ねると、彼女は目を見開いた。

 沈黙の時間が流れて、雨の音が響く。僕は黙って彼女の声を待つ。

 そして西山ちゃんは絞り出すようにして声を発した。


「……お兄さん。私のことも、助けてくれますか?」


 普段の僕であればいろんな予防線を引いた上で「できる限りのことはする」といった感じの消極的な協力の申し出をするのだが、さすがに今回はそういうシチュエーションではなかった。


「もちろん。僕だけで無理だったら友達も呼ぶし。敏腕の」


 結局友達を頼ってしまう僕だった。友達の力が絶大ゆえに。

 西山ちゃんは安堵したのか、わずかに表情が柔らいだ。そしてすぐに頭を下げた。


「……ありがとうございます。では、連絡先を交換しましょう」

「あ、うん」

「今日話そうにもこんな天気ですし、お兄さんがびしょ濡れですから」

「それはそうね」


 それからいそいそと連絡先を交換した。


「家に帰ったら詳細を送りますね。それでは失礼します」


 そう言って彼女は車に乗り込んでいった。

 西山ちゃんの保護者は僕のことをどういう目で見ていたんだろう。中学生女子を狙う悪質な高校生とでも思われたかもしれない。

 走り去っていく車を眺めていると、背後から足音。


「卑屈がすぎるのじゃ」


 月子が呆れた様子で言った。


「じゃあ僕のことを素敵な彼氏候補と思ってくれたかもしれない」

「おこがましいにも程があるのじゃ」

「くはっ」


 冷静なツッコミに思わず笑ってしまった。




  ◇◇◇




 家に帰ってくるなり、僕は風呂にお湯を張るためにボタンを押した。

 洗面所でルパンもびっくりの脱衣を披露し、そのまま風呂場へ。

 軽くシャワーで雨と汗を流し、風呂イスに座ってお湯がたまるのを待つ。


「ここが陽の家の風呂か」

「えっ!? なんでいるの!?」


 いつの間にか月子も風呂場に侵入してきていた。しかも全裸だった。

 僕は慌てて局部をタオルで隠し、視線を床にやる。


「おいおいまずいよこれは。一応ここ僕の聖域なんだけど?」

「ああ、便所と風呂場には入るなとか言っておったな。細かいことを言うな。わしと陽の仲じゃろ」


 そう言いながらまだ少ししかお湯が溜まっていない浴槽に月子が入る。


「僕と月子の仲って、そんな裸の付き合いができるレベルじゃないだろ……」

「なんじゃと!?」


 月子が心外だとでも言わんばかりの反応をするが、逆になんでそんな反応ができるの?


「てか一緒に風呂って相当レベル高い行為だよ? 現状僕がそれできるのって家族と野郎の友達くらいだし」

「なぜ野郎に限る必要がある? わしらも相当な仲良しじゃろ」


 出会ったばかりの頃のトリカもそうだったけど、なぜ彼女らはこんなにフレンドリーなんだろう。認識できる人間が少ないからか。


「そうだけど、やっぱり女子だからね……」

「まさかとは思うが、わしに恋慕の情が」

「ないないないない!! 一ミリもない!」

「そう袖にされると腹が立つの」


 低いトーンの声を出した月子が、浴槽から立ち上がったと思われる水音を発生させた。思わず目を閉じる。


「この腕は邪魔じゃな。よっこいしょと」

「おいおいおいなになになに」


 僕は自分の膝に両肘を置いた体勢で座っていたのだが、その腕を跳ね除けられる。そして空いた左太腿に重みが伝わってくる。どうやらそこに座ったらしい。タオル越しとはいえまずい。

 しかもこちらにしなだれかかってきて密着してきた。濡れた肌が合わさって体温と柔らかさが伝わってくる。あまりにもまずい。


「おー待ってマジでよくないマジでよくないマジでよくない」

「ほほほほほ! 陽よ、鼓動が早まっておるようじゃが大丈夫か? とぅんくか?」


 月子の指が妖艶に僕の胸をなぞる。


「いやもうこれトゥンクってレベルじゃねーわ! ドッギャンドッギャンだわ!」

「ほほほほ! 愉快愉快!」


 さすがにされるがままなのは耐えかねたので、そのまま月子をお姫様抱っこして浴槽の中に戻した。ついでに頭をチョップした。


「わぷっ! なんて強引なのじゃ……」

「強引なのはそっちだ」


 もし月子がもっと大人びた体型をしていたらやばかった。いろいろとやばかった。

 そうしてわちゃわちゃしていると、洗面所の扉が開く音がした。


「陽ー? なに騒いでるの?」


 母の声だ。

 風呂場のドア越しに返事をする。


「ごめんごめん! ゴキブリが出たからさぁ、大声出ちゃったわ!」

「大丈夫?」

「うん! 外に逃げてった!」

「ふぅん……」


 そう言って母は洗面所を出ていった。危なかった。

 僕が胸をなでおろしていると、月子がジト目でこちらを見ていた。


「よもやわしを害虫扱いするとはの」

「誰もそんなこと言ってないでしょ」


 元はと言えば月子が風呂場に入ってくるのが悪い。


「……あなたたち、とても楽しそうなことをしてるじゃない」


 風呂場の壁から銀髪の少女が透過して現れた。その顔は見るからに不機嫌だった。

 細かい装飾が施された黒いワンピースを着て真っ直ぐな銀髪を優雅に流しているこの少女は、自称魔法使いで名前をトリカと言う。肉体を指輪に封印されているので、今僕らが見ている姿は魔力によって投影されているものである。だから普通の人には視えないし声も聞こえない。


「なんじゃトリカ。わしらの歓談を邪魔するでない」


 月子が意地悪そうな笑みを浮かべる。

 それを受けてトリカも挑発的な笑みを浮かべる。


「ゴキブリ扱いされてたみたいだけど?」

「陽の照れ隠しじゃ」

「どうだか」


 だからゴキブリ扱いしてないっての。


「で、私抜きの散歩は楽しかったのかしら?」


 トリカがつまらなそうに腕を組んで聞いてきた。


「それがねー、ちょっといろいろあったのよ」

「いろいろ?」


 散歩中にあった出来事を話すと、トリカは笑い出した。


「うふふっ! それは私も居合わせたかったわね。特にそのチトセの失望した顔を見たかったわぁ」

「トリカは性格が悪い」

「わしは悲しい気持ちになったがの。陽はやればできる子なのに」

「月子は性格が良い」

「うむ、今後は毎日一緒に風呂に入ろうな♪」

「それはちょっと」


 そんな会話をしていると、不意に音楽が流れ『お風呂が沸きました』という音声が流れた。


「よし、風呂できたから月子とトリカはどっか行ってくれ」

「なにを今更」


 月子が呆れたように言えば、トリカも追随する。


「私も部屋で一人で待ってるのは退屈だわ。会話には参加させなさい」

「……今日だけだからな」


 お湯に浸かる前からのぼせそうだったが、なんとか入浴することはできた。二人も妙なからかい方はしなくなったので、思いの外穏やかな時間を過ごせた。

 僕と月子が湯船に浸かっていると、宙に浮遊するトリカが疑問の声を上げる。


「チトセはどうしてアキラを頼ったのかしらね?」


 確かに言われてみると不思議だ。かなり薄い繋がりである。


「それは実績じゃろ。わしは知らんが、以前に千歳の友達を助けたのじゃろ?」

「うん。吉岡さんちに巣食ったネズミの悪霊を退治したことがあるね」


 そういう実績があるから僕にアプローチしてきた。なくはなさそうだが。

 トリカは首を傾げる。


「それだけで? アキラに助けを求める必然性に欠けるわ」

「必然性? くふっ、トリカも陽と同じような思考をしておるの」

「……アキラが私に似てるのよ」


 トリカは苦々しい顔で言った。え、嫌なの? というかこれ同じような思考なの?

 月子はにやにやと笑う。


「陽もさっきあの子を助ける義理もないって言っておったじゃろ。自分がやる必然性がないと」

「あー、確かに」

「そしてそれは陽の悪い癖じゃ。誰かを思いやるのに必然性を求めるでない」

「はい」


 確かに悪い癖かもしれない。余計なお世話と思われるのがめちゃくちゃ嫌だから、あんまり自分から突っ込んで行きたくないという気持ちはかなりある。そう思いながらそんな器の小さい自分に嫌悪感を持ってもいる。

 沈黙していたトリカが口を開く。


「話を戻しましょうか。アキラじゃなくても、例えば家族にはすでに悩みを話しているのかしら」

「どうなんだろうね。そのあたりは連絡が来るまではわからないな」

「もう今頃来てたりして」

「そう言われると気になってきた。そろそろ出るか」



 風呂から出て僕の部屋へと場所を移した。

 月子は僕のジャージを着ている。浴衣は動きづらいとのこと。


「これは動きやすいのじゃ」

「まあ、着物とかに比べたらなぁ」

「下着がないからごわごわしておるし、わしには少し大きいが」


 月子が腕を伸ばすと袖が余っていた。それはそれで良いものがある。


「これが良いのか? 変わった価値観を持っておるの……」

「今の思考はあんまり触れなくていいかも」


 良い見方をできる反面、中学生くらいの体躯の金髪女子がジャージを着てると不良少女みたいに見える、という難点もある。あんまり相性よくないかも。

 その思考に月子がにやりと笑う。


「ほう? そう思うならわしに似合う服を献上してくれても構わんぞ?」

「機会があればね」


 現状はトリカだけでいっぱいいっぱいだが、ガーリーなパジャマを着てる姿は絶対可愛いだろうな。

 そんな想像を膨らませているとトリカに睨まれた。トリカのパジャマも一考しましょう。

 さて、西山ちゃんから連絡が来てるか確認しようか。

 僕がベッドにうつ伏せになってスマホを見ようとすると、すぐ隣に月子が寝っ転がってきた。トリカも上に浮遊している。


「お、着てる着てる」

「ほお、便利なものじゃの」


 月子はスマホを見て感心していた。

 そこに書かれている内容はわかりやすいものだった。


  西山です

  私の悩みなんですが、誰かに

  見られている気がするんです

  特に登下校中です。道の曲がり角で

  人影が見えたりして怖いです

  私の自意識過剰の可能性もあります

  何か解決できる方法があるでしょうか


「ストーカー……ってことか?」


 僕は文章を眺めながら呟いた。


「ふーむ、なんとも曖昧じゃな。実際に人間を見たわけでもなさそうじゃし」


 月子が難しそうな顔で言った。西山ちゃんのメッセージ通りの自意識過剰の可能性もある。

 トリカは淡々と予想する。


「案外、霊の仕業かもしれないわね」


 霊の仕業だったら消滅させてはいおしまい、で片付けていいのだろうか。

 僕の思考に月子が嘆息した。


「乱暴じゃのう。悪霊じゃなかったらもう少し考えても良いと思うのじゃ」

「そうだよね」


 これは一度西山ちゃんの登下校を見守る必要がありそうだ。

 とはいえ登校は僕も学校があるので無理だから、下校時ということになるだろう。

 ひとまず下校時に様子を見てみる旨を送ると、すぐにお礼と下校時間のメッセージが返ってきた。 


「お、この時間は部活の後ってことかな。これなら高校終わってから間に合うな」

「アキラがインキャで帰宅部なのが幸いしたわね」

「それ陰キャは関係ないよね」


 それにしても誰かに見られている気がする、か。

 以前にネットで、人の視線を感じるのは気の所為だ、といった記事を読んだことがある。しかし、こうして僕に頼んでくるほどに視線を感じるという。なぜだろう?

 僕の疑問にトリカが答えた。


「霊の視線なら別かもしれないわよ」

「えぇ? そうなの?」

「ええ。アキラはそのままスマホを見てて。私が視線を送るわ」


 うつ伏せになっている僕の真上にトリカは浮遊している。言われたとおりにスマホを見ていると、突如として首に何かを感じた。

 ぞわっとして宙を見上げると、トリカはにやりと笑った。


「え、首を見た?」

「正解。首を舐るように見たわ」

「……視線に魔力が乗ってたってこと?」

「まあ、そういうことね。霊ならそういうこともあるかもしれないわ」


 なるほど、と感心していると、月子が異を唱えた。


「じゃがあの子は妖力を認識しておらん。視線を感じるのはおかしな話じゃろ」

「確かに」


 じゃから、と月子は続ける。


「視線は後付けで、怪しい人影を見たことのほうがあの子にとっては重大な事件じゃと思うのじゃ」

「ほうほう、たしかにそっちの方がインパクトでかいよな」


 僕も霊が見えるようになった頃、同じような思いをした。霊が透過して家の中に入ってきたとき、いつ何時でも霊が入ってくるという事実に恐怖していたのだ。今では霊が入ってくることは稀だとわかったし、トリカや月子がいるから安心して生活をしている。

 今、西山ちゃんは不安な日々を送っているのかもしれない。公園で会ったときはあまりわからなかったが、気丈に振る舞っていたのだろうか。

 僕の思考にトリカが反応する。


「アキラを頼るってことはかなり不安なんじゃない?」

「それはどういう意味だー?」

「うふっ、もちろんアキラが頼りになるってことよ」

「藁にもすがる的な意味でなくー?」

「うふふふふふふっ」


 ストーカーが確定で存在しているなら家族や友達にも相談すると思うのだが、そこが微妙なラインだから繋がりが薄い僕を頼ったのだろうか。


「これあれだな。霊の仕業の方が都合が良いかもな」

「そうなの?」


 トリカが不思議そうな声を上げた。


「だってさ、人間のストーカーってめっちゃ厄介だし警察ですら微妙なんだよ。具体的な被害がないと動かないって話はよく聞くし」

「前にそんなことを言ってたわね」

「うん。だけどこれが霊に関することならトリカと月子がいくらでも干渉できるじゃん」


 隣で頬杖をついている月子を見ながら言うと、彼女も「まあそうじゃな」と同意した。


「陽の手助けをした場合、わしには一体どんな見返りがあるのじゃろ」

「あれ? 友達なら当たり前の精神を持っているのが月子なんじゃなかったっけ?」

「親しき仲にも礼儀あり、じゃろ」

「まあ、そうか。じゃあ、そうだなぁ……」

「なんじゃなんじゃ? 何をくれるんじゃ?」


 月子は僕のうつ伏せの腰に乗って、背中をぽかぽかと叩いてくる。


「じゃあ、次に僕が何か料理するときは月子のこと呼ぶよ。かき氷のときみたいに」

「ほう! もちろんあの口上で“喚んで”くれるのじゃな? かき氷のときのように」

「今回は月子の手を借りるほどじゃないかもな。トリカさえ居てくれたら多分大丈夫」

「これ! 拗ねるでない!」


 黒歴史を掘り起こされた僕は枕に顔を埋めて会話を打ち切った。

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