6.学園祭
「――わぁ! 相変わらず、すごい人数……! エトワル学園の学園祭は今年も大盛況ね!」
「おい、まだ馬車が止まってないんだから立ち上がろうとするなヴィヴィアナ。転んだらどうする」
「あっと、つい興奮しちゃって。ありがとうアレクシス」
「まったく毎年毎年よく同じテンションではしゃげるな。何歳児なんだよお前は」
「べーっ! アレクシスと同じ十三歳児になりましたぁ〜!」
「そういうところが子供だって言ってるんだ」
「ふーんだっ。おにいちゃんは『ヴィヴィはいつまでも子供でいていいよ』って言ってくれてるもーん!」
「リヒトのシスコン具合いは異常だからアイツを基準にするんじゃない」
ヴィヴィアナがフィンスター家の養女になって六年。
今日は義兄リヒトの通うエトワル学園の学園祭だ。
「アレクシスは今日絶対に見たいところある?」
「お前と同じでいい。どうせヴィヴィアナはリヒトが出るやつだろう?」
「もちろん!」
出会った当初はアレクシスのことを殿下と呼んでいたヴィヴィアナだったが、この六年の間にアレクシスとも打ち解け、今では普通の幼なじみのように接している。
今日も、二人で王家の馬車に乗りエトワル学園まで来ていた。
(最初はアレクシスに近づくことで私がタイ海老のヴィヴィアナみたいになっちゃったら……って警戒してたけど、おにいちゃんのおかげで私は大丈夫だって思えた)
本来のヴィヴィアナは、誰かに特別意地悪をするような女の子でも、誰かの不幸を願う女の子でもなかった。可愛いものや楽しいことが好きな、みんなと同じような女の子だった。
ゲームのヴィヴィアナの性格が捻じれに捻じれていたのは、実の親から捨てられたトラウマに飲み込まれてしまったせいだ。
けれど、この世界ではリヒトがヴィヴィアナの心の空白を埋めてくれた。
リヒトという心の支えがあるおかげで、自分はアレクシスと交流してもゲームのようにはならないと自信が持てたのだ。
(……それに、アレクシスには悪いけど、おにいちゃん以上にカッコいい男の人なんていないしっ)
アレクシスはリヒトのことをシスコンと呼ぶが、ヴィヴィアナもかなり重度のブラコンだ。
タイ海老のようにアレクシスに恋する自分なんて想像できないし、万が一彼に惚れても、闇堕ちするほど執着するなんてあり得ないと断言できる。
(そもそも、アレクシスも私のことをただの幼なじみとしか見てないしね!)
うんうんと一人で納得して頷くヴィヴィアナを、アレクシスが怪訝そうに眺める。
「……何を百面相してるんだお前は」
「へっ顔に出てた?! えっとね、私は恋愛に無縁だから、恋に夢中になって暴走することなんてないだろうなって考えてた! 私モテないから!」
「はぁ? いきなりどうしたって言うか、お前それはリヒトが鉄壁ガードで……」
「おにいちゃんが?」
「……いや、藪蛇で俺まで排除されたら嫌だから黙っておく」
「ふぅん???」
「はぁ〜〜お前が鈍いの、元々の性格に加えてリヒトが徹底的に囲い込んでるからだよな……。お前ほどの容姿と家柄で未だに求婚がゼロなんて、どう考えてもあり得ないだろ」
「へっ?! なんて? もっと大きい声で言ってくれないと、外が賑やかで聞こえないよ!」
「はぁ〜〜……まぁ今はいいや。ほら、着いたぞ」
「きゃ〜っ今年も楽しそう〜!」




