4.月と太陽
内側から光を放っているようなサラサラの金髪。意志の強さを感じさせる、言ってしまえばちょっと生意気そうな空色の瞳。
リヒトが静謐な月夜のような美少年だとしたら、彼は別ベクトルの、力強い太陽のような魅力の少年だ。
ヴィヴィアナがよく知っている『彼』は十五歳から十八歳のときの姿だが、こちらを驚いた様子で見ている少年はどう見てもタイ海老のメインヒーロー兼、エトワル王国の王太子のアレクシス・エトワルだった。
「リヒトの表情筋がそんなに動いているところを初めて見たぞ。異常気象の前触れじゃないか?」
「俺とヴィヴィの大事なお茶会に乱入してきて、言いたいのはそんなことなのアレクシス? ヴィヴィ、このさくらんぼのタルトも美味しいよ。あーん」
リヒトが少年をアレクシスと呼んだということは、やはり彼は王太子なのだ。
王族が自分の家に来たというのに、リヒトは通常運転の平常心だ。と言うかなんなら塩対応でヴィヴィアナのほうばかりかまっている。
「おい、俺のほうをチラ見しただけで義妹を膝に乗せたまま菓子を食わせるのをやめろ。不敬だぞ」
「は? つい先日までオムツをしていたのにずいぶん生意気な口をきくようになったんだね。俺とヴィヴィを引き離そうとするなんて、王位継承権を剥奪してあげようか?」
「誰がつい先日までオムツだ! 俺はもうすぐ八歳だぞ。オムツなどとっくに卒業してるわ!」
不敬。王位継承権剥奪。聞こえてくる単語が不穏すぎて、ヴィヴィアナは慌ててリヒトの膝から飛び下りる。隙を突かれたリヒトが唇を尖らせ、そんな彼を見たアレクシスがまた驚きで瞳を見開く。
「お、お初にお目にかかりますアレクシス殿下、ヴィヴィアナと申します……! 無作法な姿をお見せしてしまい、失礼しました……っ!」
「ヴィヴィ、そんなに畏まらなくて大丈夫だよ。俺とアレクシスははとこ同士なんだ。さっきのも冗談だから気にしなくていい。……ヴィヴィがお兄ちゃんに王様になってほしいって言うなら頑張っちゃうけど」
「頑張らないで……! ち、違うんです殿下、今のは本気じゃないですから……!」
たとえ冗談でも反逆罪になりそうな言動はやめてほしい。
リヒトが誤解されないように慌ててフォローするヴィヴィアナだったが、アレクシスの興味は『リヒトの表情筋を動かす義妹』に移ったらしい。
品定めするようにヴィヴィアナを見ている。
「……まぁ、毛色の変わった猫みたいで面白いかもな。おい、ヴィヴィアナと言ったな」
「は、はい……!」
「今日は俺の誕生パーティーの招待状を持ってくるついでに『近頃フィンスター公爵家の人間が溺愛する養女』を見に来たんだ。気に入ったから、お前もパーティーに来ていいぞ」




