崩壊<カイル視点>
<カイル視点>
私がラピスに群がる黒い人型を切り捨てると、そこには胸に剣を刺されたラピスが倒れていた。
「おい。ラピス」
恐る恐るラピスの頬を叩くが、息をしていない。
(う・・嘘だ・・)
ラピスの目がもう何も見ていない。
私はラピスの胸に刺さる剣に手をかけ、ゆっくりと抜いた。
深く刺さっていたというのに、血が溢れる様なことはなかった。
(これは夢なんじゃないだろうか・・)
頭が痺れてぼうっとする。
向こうから黒い人型がわらわらとこちらに押し寄せてくる。
(邪魔だ・・)
私はぼうっとした意識ののまま立ち上がった。両手に勝手に闇魔法の瘴気の渦が発生していく。
それを制御しようというような意思は到底なく、瘴気の渦は好きなだけ増大していった。
群がっている黒い人型に瘴気の渦を投げると、いとも簡単に消滅した。
しかし、黒い塊の本体が相変わらずグニャグニャと蠢いているのが見える。
フェニックスを守る? もうそんな事はどうでもよくなり、私はラピスの側に崩れ落ちた。
輪廻の剣にエネルギーを貯めていたアリアがつぶっていた目を見開いた。
剣は太陽の様な光を発し、眩しく輝いていた。
アリアは黒い塊を見つめると、剣を持ち黒い塊に向かって走った。
先ほどカイルが闇魔法で黒い人型を消滅させたので、遮るものは何も無かった。
アリアは黒い塊に向かい合うと、手を高く上げ、輝く輪廻の剣を突き立てた。
黒い塊は声にならない声を上げると、八方に飛散し消え失せていった。
そして、何もいなくなった広間にただ静かな時間が訪れた。
エライザがよろよろとラピスのそばに寄ってきて、ラピスの頬に触れた。
エライザが泣きながらラピスの瞼をそっと閉じた。
(エライザ嬢が泣いている・・やっぱりラピスは死んだのか?)
私がぼうっとその光景を見ていると、後ろで鳥の鳴き声がした。
「ピェッ・・」
フェニックスの幼鳥の方に目をやると、ローガン先生が幼鳥の首をナイフで切り落としていた。
(え? ローガン先生何をしているのだ?)
ローガン先生は手を震わせながら幼鳥の首から溢れる血を手の平に受け止めている。
「ローガン先生・・」
アリアが何が起こっているのかよく分からない顔でローガン先生を見た。
「アリア・・すまない・・
私にはどうしても『復活の宝寿』が必要なのだ」
アリアの方を向いたローガン先生の手には、フェニックスの血が固まってできた赤い宝石が握られていた。
その時、火の神殿の広間に強い風が吹いたかと思うと、遠くの方から『ゴゴゴゴ・・』という地鳴りが響いてきた。
地面が揺れ、遠くで爆発的な音を立てた山から噴煙が上がった。
見ると、火の神殿の広間の端に生えていた草が急速に茶色に枯れていく。
目先にポトッポトッと二匹の鳥の死骸が落ちてきた。
空はどこから湧き出したか、分厚い紫色の雲に覆われ始め、所々に稲妻が光った。
(フェニックス復活の失敗による、世界の崩壊が起こるのか・・)
私は、どこか人ごとの様にその景色を眺めていた。
(ああ、ラピスはこれを防ぎたかったのか・・
やたらと魔獣退治に行きたがったり、剣の練習に励んだり、
邪神教の剣の入手に執念を燃やしたり・・)
「なんで私にもっとよく説明してくれなかったんだ・・」
私は力なく呟いた。




