罰<ラピス視点>
<ラピス視点>
邪神教の神殿でカイルは私に闇魔法を放った後、私を抱えて皆がいる宿まで連れてきてくれたらしい。カイルから皆に私が初めからアリアの武器を入手するために芝居をしていたのだと説明して、皆を納得させてくれていた。
カイルの闇魔法で大ダメージを負った私はずっと寝ていたらしいが、皆の介抱のかいもあって一日後には起き上がれるようになっていた。
ベッドで目が覚めると、そばの椅子で本を読んでいたカイルが気づいてくれた。
「ラピス大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
カイルの闇魔法で死ぬのではないかと思ったが、もう体に痛いところは無かった。
「邪神教の神殿では申し訳ないことをした。
まさか闇魔法を暴発させるとは・・」
カイルが項垂れている。
「いいえ、私も申し訳ありませんでした。
初めに計画を伝えておくべきでした・・」
敵を騙すにはまず味方からなどと、馬鹿なことを考えたものだ。
若干気だるさの残る体で宿の木の階段を降りていくと、明るい一階の食堂の丸テーブルに皆が座って楽しそうに話をしていた。
「あ。ラピス様、起きれるようになったのですね」
アリアが明るい声をかけてくれた。
私はテーブルの近くまで行くと、皆に平謝りした。
「本当にすいません。先に皆さんに説明しておくべきでした」
「もう、びっくりいたしましたわ!」
エライザはそう言いつつもいつも通りの笑顔を向けてくれた。
ローガン先生も
「一言相談してくれれば・・」
と言いつつも、表情は穏やかだ。
ただカイルだけ、この日から私に笑いかけてくれることが無くなってしまった。
私たちは宿をとっていた町を出、馬で火の神殿に向かって北上していった。
北上を続けるとだんだん町が少なくなっていき、今日はテントで野営することとなった。
二つ張ったテントの外で、エライザに薪に火をつけてもらい鶏肉と山菜の鍋を作ってみた。
次元の指輪に、鍋も食器も新鮮な食材までも詰め放題なのはありがたい。
鍋を食べ終わった皆はほくほくと満足気な表情を浮かべている。
ふと見回すと、カイルの姿が見当たらない。
私は周囲の木陰を少し散策した。
あれからずっと、カイルは必要な会話はしてくれるが全く顔が笑っていない。
エライザや他の人と話す時はいつも通り朗らかな表情で話しているのに。
少し木の間に入っていくと、星空がよく見える崖でカイルが岩に腰掛けて何か考え事をしているようだった。
「ラピスか」
カイルがこちらに気づいて少し振り向くが、やはり冷たい表情であった。
「カイル・・あの・・」
私は何が聞きたいのか、どう聞いたらいいのか全く言葉が出てこなかった。
しばらくの沈黙のあと、カイルがボソッと言った。
「ラピスはいつも私を頼らないよな」
「それは・・」
確かに私はついつい一人でなんでも解決しようとする所がある・・
でもそれは、カイルの事を信頼してないとかそういうことではなくて・・
「あの剣がそんなに欲しかったのか?」
こちらを向いたカイルの顔は冷え冷えとした目をしていた。
冷たい目に硬直した私からカイルは目をそらし、テントの方へ何も言わず去って行った。
私は誰もいなくなった岩に座り込み、星を見上げた。
しばらくただただ美しい星空を見ていると、エライザが探しに来てくれた。
「ラピス様、なかなかお戻りにならないので心配しました」
エライザは私の様子を見ると、そっと隣に座った。
「ラピス様、最近少しお辛そうですね」
エライザは悲しそうな顔で言った。
「エライザ嬢・・
大丈夫です。ちゃんと火の神殿までは護衛を・・
あと数日で火の神殿に着くと思われますが・・」
エライザは私のとりとめもない話をただうなづいて聞いてくれた。
「・・私はカイルの信頼を失ってしまいました」
ふと言ってしまうと、私の目から涙がこぼれ落ちた。
次々と溢れる涙は止まらなくなり、私は話を続ける事ができなくなってしまった。
私がひとしきり泣き止むと、
「カイル殿下も狭量ですわね!」
と、エライザは少し怒った。
「いや、カイルが悪いのではなく・・」
私はそう言ったが、エライザの言葉にふと笑ってしまった。
エライザの優しさに救いを感じた。
「エライザ嬢、ありがとうございます」
私が笑うと、エライザも優しく笑ってくれた。
アリアとローガン先生はテントの側の小川で、夕食に使った鍋やら食器やらを洗っていた。
「ローガン先生、ラピス様の作って下さった煮込み料理、おいしかったですね」
「そうですね。こんな新鮮な食材の料理を長旅で食べれるとは思ってもいませんでした」
「ローガン先生、最近カイル殿下とラピス様の仲があまりよろしくないですね」
アリアが少し眉をハの字に傾けた。
「大丈夫ですよ、アリア。
二人とも自分の中で相手の存在が大きくなりすぎて、今少し苦しんでいるのです」
ローガン先生は優しい眼差しで言った。
それを聞いてアリアはほっと優しい笑顔を取り戻した。




